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全国対象の新たな“観光需要喚起策”…県民割 GoToトラベルとの違いは?

2022年6月17日 20:11
全国対象の新たな“観光需要喚起策”…県民割 GoToトラベルとの違いは?

政府は、17日、全国を対象とした新たな観光需要喚起策「全国旅行支援」を発表した。斉藤鉄夫国土交通大臣は「従来のいわゆる県民割を全国に拡大するものではない」と強調したが、県民割、GoToトラベルとの違いは何なのか。紆余曲折の舞台裏を取材した。

■新たな観光需要喚起策は「全く新しい制度で名前がない」

岸田首相が会見で「感染状況の改善が確認できれば、7月前半より地域観光をより一層強力に支援するため、地域観光事業支援について、全国を対象とした観光需要喚起策を実施する」と打ち出してから2日。新たな観光需要喚起策が、17日、明らかになった。

官邸関係者の1人は、発表の数時間前になっても「全く新しい制度で、まだ名前がない。県民割のバージョンアップではない」と話していた。そして、実際に大臣が発表した新たな支援策には、正式な名前がなく、ギリギリの調整が行われたことがうかがえた。

新たな支援策の旅行代金の割引率は40%。公共交通機関を使う旅行商品の場合、1泊あたり上限8000円、それ以外は上限5000円を補助。また、土産物店などで利用できるクーポンは、平日を3000円、休日を1000円として、旅行客の分散をはかる。

対象となる旅行先は全国で、感染状況を踏まえて、実施を希望しない都道府県があれば、その都道府県を目的地とする旅行を対象から除外することができる。

期間は7月前半から8月末まで、お盆期間などは除外する方針だが、観光庁の担当者は「7月上旬のできるだけ早く始めたい」と話す。

一方、これまでの県民割は旅行代金の割引率が50%。1泊につき最大5000円、クーポンで2000円の補助が受けられ、現在は、関東や近畿など6つのブロック内での旅行に適用されている。旅行先の対象は都道府県ごとに判断でき、出発地と旅行先のそれぞれの合意が必要だ。この県民割は7月14日の宿泊分までとなる。

そして、GoToトラベルは、旅行代金の割引率が35%、上限1万4000円まで、旅行代金の15%のクーポンを補助。全国を対象としつつ、対象の除外は国が判断していた。

松野官房長官は17日の会見で、「名称については『全国旅行支援』を考えているものと聞いている。全国的な観光需要を喚起するとともに、旅行者により遠方への旅行を促進する、休日から平日への需要分散させるなどの効果を見込んでいて、地域観光をより一層強力に支援していきたい」と強調した。

ただ、当初から、この新たな観光需要喚起策「全国旅行支援」で話が進められていたわけではなく、紆余曲折を経た結果の産物だったようだ。

■「GoTo再開で支持率低下」警戒…政府内に慎重論

新型コロナウイルスの感染状況の改善で、観光需要喚起策を所管する国土交通省内では「7月1日からのGoToトラベル再開」という案も検討された。しかし、GoToトラベル再開のハードルは想像以上に高かった。

特に慎重な姿勢を見せていたのが岸田首相であることも影響した。首相側近の木原副長官が「GoToトラベルを再開して感染が再拡大したら、参議院選挙に影響する」と警戒感を示すと、岸田首相が同調するような場面もあったという。

ある官邸関係者は「おととしのGoToトラベルによって感染が拡大したと一定程度の人が感じている」と話し、別の国交省幹部も「自民党を支持する高齢者の中には『ほかの地域から観光客に入ってきてほしくない』と思う人がそれなりに多くいる。そうすると、GoToトラベルを再開すること自体が、支持率低下につながると考えているようだ」と説明する。

官邸内では、参議院選挙を前に、賛否の分かれる政策を打ち出すことに慎重な意見が目立ったことも影響した。

ただ、岸田首相も慎重一辺倒というわけではなかった。首相の心中について、ある政府関係者は「感染が広がったら『無責任』と言われるのに、県民割の対象を全国に拡大して大丈夫なのかと考える一方で、経済をまわすためにも、観光支援策を夏休みのタイミングで打ち出したいと思っている」と分析する。

さらに、県民割を全国に拡大することにも課題があった。そもそも、いまの県民割は地域ブロック内でしか利用できず、東京都民にとっては東京の旅行でしか割引されない。つまり、最大の人口を抱える東京都民が地方に流れ、お金を落とす仕組みになっていないのだ。県民割を全国に拡大したとしても、旅行先を指定する権限があるのは自治体であるため、例えば東京都が都内旅行しか認めなければ、現状と変わらないことになってしまう。

ある政権幹部は「観光振興を考える上で、首都圏の人たちが大きな割合を占めているのがポイントだ」と指摘した。首都圏から地方に旅行してもらわなければ意味がなく、旅行先を決める権限を出発地の自治体ではなく、旅行先の自治体が持つ「新たな仕組み」が必要だったのだ。

岸田首相の国会会期末の会見が15日に控えるなか、観光振興策を打ち出すかどうかも含め、ギリギリの調整は続いた。会見当日でも、ある国交省幹部は「岸田首相は全国拡大は打ち出すものの、時期まで明言しないのではないか」と話していた。最終的な文言調整は、会見の数時間前まで行われ、全国を対象とした観光需要喚起策を「7月前半に拡大」と発表することで落ち着いた。

今後は6月の感染状況などを見て、政府は「全国旅行支援」の最終的な開始時期や詳細を決定するが、利用者にとってはわかりやすく、観光地にとっては賑わいが復活する“使いやすい制度”になることが望まれる。