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【解説】「裏金事件」実態解明できる? 安倍派“金庫番”初公判の影響は… 

2024年5月10日 22:16
【解説】「裏金事件」実態解明できる? 安倍派“金庫番”初公判の影響は… 

自民党の派閥のパーティー券をめぐる事件で、政治資金規正法違反の罪で在宅起訴された安倍派の会計責任者の初公判が10日午後開かれました。一連の事件での初めての裁判です。

この裁判を、自民党議員たちは、どうみているのでしょうか。次の「3つのポイント」について、日本テレビ政治部・自民党担当の川上泰記者が解説します。

1.「松本被告の裁判」どう見てる?
2.「裏金事件」結局、誰が指示?
3.「政治資金規正法」改正は?

■「松本被告の裁判」どう見てる? 自民党内「見守るしかない」、「これで決着図る」?

鈴江奈々キャスター
「まず1つ目ですが、この(松本被告の)裁判について、自民党議員たちを取材していて、どんな声が聞かれるでしょうか?」

日本テレビ政治部・自民党担当 川上泰記者
「自民党内では『見守るしかない』という声を多く聞きます。

裏金事件を受けて、自民党は岸田総理大臣自らも安倍派幹部らを事情聴取するなどして、国会議員39人をすでに処分しました。特に、安倍派幹部の塩谷氏や世耕氏には『離党勧告』処分、そして、下村氏・西村氏・高木氏は『党員資格停止』処分となっています。

ある自民党幹部は『厳しい処分を下し、これで決着を図る』と述べるなど、事件の対応で“一定のケリ”をつけた、という認識です。

ただ、その後に、この松本被告の初公判が行われたわけで、自民党内からは『政治家の関与などについて、新たに変なことを言い出さないか心配だ』という声が出ています。

野党側も冷静な見方が多いなかで、ある立憲民主党幹部は『何か新たな証言がでれば、国会で追及しなくてはいけない』と話しています」

■「裏金事件」結局、誰が指示? 実態解明は進まず 野党側は…

鈴江キャスター
「続いて2つ目、『「裏金事件」結局、誰が指示?』。

10日に始まった裁判で、その不正の実態がどこまで明らかになるかも焦点ですが、国会では今後、実態解明につながる動きはあるんでしょうか?」

日本テレビ政治部・自民党担当 川上泰記者
「自民党の内部調査や政治倫理審査会などが行われましたが、安倍派の“キックバック”が『いつ』『誰が』始めたのか、一度中止されたキックバックがどのように再開されたのか、この点の実態解明は進んでいません。

そうしたなか、国会では今週、新たな動きがありました。野党側が8日、まだ『政治倫理審査会』に出席していない安倍派と二階派の議員44人について、審査の申し立てを行いました。立憲民主党の安住国対委員長は『裏金事件は終わってない。政倫審で実態解明を行いたい』と強調しています。

ただ、この『政倫審』というのは強制力はないため、申し立てを受けた議員が、出席する意向を示す必要があります。国会で今後、実態解明が進むかは不透明と言えます」

鈴江キャスター
「そういったことを聞きますと、多くの国民は、本当にあきらめような気持ちになってしまうと思います」

■「政治資金規正法」改正は? 与党側は改正案に大筋合意も…中身は先送り?

鈴江キャスター
「3つ目のポイント、『「政治資金規正法」改正は?』。

実態解明が進むかは不透明ななかで、気になるのは、再発防止に向けた今後の動きです。政治資金規正法改正をめぐる動きは、どうなっているのでしょうか?」

日本テレビ政治部・自民党担当 川上泰記者
「自民党と公明党は9日、『政治資金規正法』の改正に向けて、与党案をようやく大筋で合意しました。ただ、中身は詰まっていない状態なんです。

例えば、パーティー券購入者の公開基準について、現在の『20万円超』から引き下げることは合意しているのですが、具体的な金額は先送りされています。

また、政党から議員個人に支出される『政策活動費』については、『支払いを受けた者が使い道を報告し、党が収支報告書に記載する』としています。どこまで公開するかは、継続協議となっているんです。

そうしたなか、10日の国会で、野党側はさっそく厳しく批判しています」

立憲民主党 小沼巧議員
「公開基準引き下げや、支払い方法の制限という考え方は、対症療法であって、原因療法とは別物である。やはり、踏み込み度合いが中途半端ではないか。政治資金パーティーや企業団体献金を禁止することが、本質的な解決策たり得るのではないでしょうか」

日本維新の会 高木かおり議員
「政策活動費の闇を正すべきと考えます。大きな項目だけ公開して『おしまい』といった中途半端な提案であれば、全く受入れられないのはもちろんのことです」

鈴江キャスター
「野党側の声を聞いても、考え方の相違というのは明らかですが、今後、与野党の協議がスタートするなかで、まとまる見通しというのはあるんでしょうか?」

日本テレビ政治部・自民党担当 川上泰記者
「見通しは立っていない、という状況です。

野党側は、政策活動費の廃止などを主張しているほか、企業・団体献金の禁止などを求めていて、与野党の隔たりは大きいといえます。

岸田総理は、今の国会での法改正を目指すとしていますが、実現に向けては調整は難航が予想され、厳しい政権運営が続きます」