ウクライナ避難民が紙芝居で描く被爆地・ヒロシマ 母国に迫る「核の脅威」と重ねあわせ…世界へ発信する「平和への思い」
ウクライナから日本に逃れた避難民の女性が、原爆が投下された広島をテーマに、紙芝居の制作を続けています。母国と重ね合わせた「核の脅威」、そしてG7サミットへの思いを取材しました。
◇
大きく広がった、きのこ雲。焼け野原となった街では、黒く焼け焦げた人々が倒れています。原爆投下直後の広島の様子です。
描いたのはウクライナ人の芸術家・ユリヤさんです。ユリヤさんは、ウクライナ北部の街の出身で、ロシアによる攻撃で街は大きく破壊され、去年6月にふるさとを離れ日本に避難しました。
ユリヤさん
「私にとって一番怖いことは、いまだに核兵器が存在している」
ロシアが続ける核兵器による威嚇。広島で起きたことが、このあとウクライナでも起こるかもしれない。祖国に迫る「核兵器の恐怖」を1人の芸術家として発信できないだろうか。
ユリヤさんは広島を訪れました。現地で出会ったのは、8歳で被爆をした語り部の小倉桂子さん(85)。
小倉さん
「核兵器が使われたら大変なんです、今じゃない。次の世代、その次まで影響うけるでしょ」
小倉さんは、爆心地からおよそ2キロの自宅近くで被爆しました。
小倉さん
「思い出すことそのものが傷なんですよね」「核兵器とともに生きていくことはどんなに大変か。核兵器があることを想像しただけでも怖くてたまらない」
ユリヤさんは、「核兵器の恐怖」を紙芝居で表現することにしました。題名は、「ケイちゃんの消えない雲」。主人公のケイちゃんは小倉さんをモデルにしており、8歳の少女が目にした広島の悲惨な光景を描いています。
そして、原爆を生き延びたケイちゃんが年を重ねながら、世界の人々に核の恐怖を訴え続けます。
ユリヤさん
「(小倉さんは)被爆の話をしていらっしゃるとき、何度も何度もこの悲劇を思い出し、何回もこの悲劇を乗り越えていますから、本当に勇敢で強い女性だと」
ユリヤさんは、何十年経っても、戦争の記憶が消えないケイちゃんの心を絵で表現したいと話していて、ことしの8月6日、原爆の日の完成を目指しています。
紙芝居は、日本語やロシア語を含む9か国語に翻訳し、インターネットで世界に発信することにしています。
核兵器の脅威がつなげたユリヤさんと被爆地・広島。ユリヤさんは、来週の広島サミットでの議論にも期待しています。
ユリヤさん
「いま起きている戦争はウクライナの問題だけではなく、 これは世界中の問題だと思います」「(世界が)広島と長崎の経験を忘れないよう、紙芝居を心より一心に作ることにしています」
核兵器の脅威にさらされるふるさとを思い、ユリヤさんは芸術で平和を訴え続けます。