「安倍晋三回顧録」赤裸々に吐露…習近平国家主席は「強烈なリアリスト」 森友問題については…
2022年7月に死去した安倍晋三元首相が、通算8年8か月にわたる首相在任中を振り返った「安倍晋三回顧録」が8日、発売されました。アメリカのトランプ前大統領ら各国首脳との外交の裏側、森友問題を巡る“財務省への不信感”などが赤裸々に語られています。
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8日発売された「安倍晋三回顧録」は、安倍氏の通算8年8か月にわたる首相在任中に起こった出来事をインタビューで振り返ったものです。各国首脳と交わされた会話や、安倍氏の心情などが赤裸々に吐露されています。
■アメリカ・トランプ前大統領…「異例ずくめの大統領」
アメリカのトランプ前大統領については「つくづく異例ずくめの大統領でしたね」と振り返り、電話会談でオバマ元大統領と会話した時との違いを例に挙げました。
安倍氏の回顧録より
「オバマの場合、15分から30分程度と短めでした。しかし、トランプは違った。長ければ1時間半。何を話しているかと言えば、本題は前半の15分で、後半の7~8割がゴルフの話だったり、他国の首脳の批判だったりするわけです」
トランプ氏については、「イメージとは異なる面もある」といいます。
安倍氏の回顧録より
「トランプはいきなり軍事行使をするタイプだと警戒されていると思いますが、実は全く逆なんです。根がビジネスマンですから」
そのためトランプ氏が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記と会談を行う前に、安倍氏はあることを話したといいます。
安倍氏の回顧録より
「『武力行使のプレッシャーをかけられるのは米国だけだ』とトランプに言い続けました」
安倍氏は「トランプが軍事行動に消極的な人物だと金総書記が知ってしまったら、圧力が利かなくなってしまう。だから絶対に気づかせないようにしなければならなかった」と当時を振り返っています。
■ロシア・プーチン大統領…「2018年がチャンスだった」
安倍氏の回顧録より
「プーチンはクールな感じに見えるけれど、意外に気さくでブラックジョークもよく言います」
北方領土問題解決のため会談を重ねたロシアのプーチン大統領について、安倍氏は“2島返還”を交渉の基礎にしたことを明らかにした上で、ラブロフ外相のことにも触れながら「2018年が合意に向けたチャンスだった」と振り返っています。
安倍氏の回顧録より
「プーチンは『明日から外相間で交渉を始めてもいいくらいだ』と言い、横にいたラブロフの方を向きながら、『彼は何もやることがないから、ウイスキーばかり飲んでいる。飲むならウオッカだろう』と言って笑っていました。この時が安倍政権の中で、日露が最も近づいた時だったと思います」
しかしその後、外相や次官級の協議に入ると、交渉は暗礁に乗り上げてしまいました。
安倍氏の回顧録より
「そういう観点からすれば、尖閣諸島も絶対に奪われてはならないのです。いったん占領されたら、いくら交渉したって返還は難しくなりますから」
■中国・習近平国家主席…「強烈なリアリスト」
安倍氏は首脳外交で「相手の懐に入ることを心がけていた」ということですが、中国の習近平国家主席については次のように述べています。
安倍氏の回顧録より
「中国の指導者と打ち解けて話すのは、私には無理です」
ところが、首脳会談の場で聞かれたのは習主席の“本音”でした。
安倍氏の回顧録より
「(習主席は)ある時、『自分がもし米国に生まれていたら、米国の共産党には入らないだろう。民主党か共和党に入党する』と言ったのです」
「彼は思想信条ではなく、政治権力を掌握するために共産党に入ったということになります。彼は強烈なリアリストなのです」
安倍氏は「習主席が政敵を倒し、権力を脅かす存在がなくなったから発言できたのでは」と推測しています。
■森友問題…“財務省への不信感”あらわに
安倍氏は、国内のさまざまな政策や問題についても言及しました。森友学園への国有地売却問題については、“財務省への不信感”をあらわにしていました。
安倍氏の回顧録より
「私は密かに疑っているのですが、私の足を掬(すく)うための財務省の策略の可能性がゼロではない」
安倍氏は消費税率の引き上げ延期などを巡り、「財務省の抵抗はすさまじかった」と振り返っています。