警視庁災害対策ツイッター開始から10年 1日1回つぶやきフォロワー異例の90万人超
およそ90万人。警視庁警備部災害対策課のツイッターのフォロワー数だ。官公庁の1つの課が運営するフォロワー数としては異例の多さを誇るこのツイッター。1月11日で運用開始から10年を迎えた。
「自然災害の発生は防げないが、被害は減らせる」
防災について考えるきっかけを作りたいと、日々、発信を続ける、その裏側を警視庁の“つぶやき”担当者に直接聞いてみた。
■きっかけは「東日本大震災後のデマ」
「被災地で強盗や性犯罪が多発している」
「あと数時間で死の灰が降る」
「食べものに毒物が混入している」
これらは全て2011年の東日本大震災後に流れたデマ。未曽有の被害となった大震災で、震災後にはこのほかにも被災者の不安をさらにあおるような書き込みやチェーンメールが広い範囲に拡散し、避難所を巡回していた警察官に「噂は本当か」「不安でたまらない」といった声が多く寄せられたという。
当時、警察も不安をあおるデマを否定し、正しい情報を発信するため、ホームページなどで呼びかけたものの、どんどん拡散するデマを打ち消すには、より即時性や発信力のある情報発信のツールが必要だと実感。そこで震災から1年10か月後、今後もいつ起こるか分からない災害に備えて、より即時性があり、発信力のある情報発信のツールを得ようと始めたのが、ツイッターだった。
■これまで一番バズったツイート「10円玉で袋を開ける方法」
警視庁警備部災害対策課のツイッターで発信する、災害時に役立つつぶやきは多くの人に注目されている。中でもこれまで話題になった「水でカップ焼きそばを作ってみた」は「いいね」と「リツイート」合わせて約9万2000。「ペットボトルで簡単ランタンを作る方法」は約10万5000。
そして、これまで最もバズったのは「10円玉2枚で袋を簡単に開ける方法」を紹介したこのツイート。
10円硬貨2枚を使って袋を挟み、スライドさせることで避難所ではさみがないときも、簡単に袋を開けられるという豆知識をつぶやいたもので、約10万リツイートと約15万いいねを獲得した。
■つぶやいているのは誰?6年間つぶやき続けている警部を直撃
村田尚徳警部
「ここまでフォロワー数が増えるとは思っていませんでした」
6年前、20万人に満たなかったフォロワー数を現在の90万人にまで押し上げた1人が、警視庁警備部災害対策課でツイッターの管理を担当する村田尚徳警部。
6年前に担当になるまで、ツイッターを使ったことがなかったという村田警部。しかし、フォロワー数をもっと増やせれば、強力な情報発信ツールになると考え、プライベートでもインストールし、バズったツイートを調べたりと研究を重ねてきた。
そして、これまで不定期だった更新の頻度を1日1回に変更。現在は警備部の災害対策課内でシフトを作り、20代から定年直前の60代までの課員30~40人が持ち回りで運用。
年代も違えば性別も趣味もばらばらのメンバー。
村田警部
「家族構成、住んでいる場所、小さいお子さんがいるかどうか、ペットを飼っているかどうかなど災害対策は1人1人違う。自分に境遇が似ている人もツイートを担当していると思うので、そういうところから、『あ、そうだな』と(防災について)考えてもらえれば有り難い」
メンバーの多様性が「タオルを使って“抱っこひも”をつくる方法」や「趣味の釣りで実践した、ラップを巻いて携帯電話を水やほこりから守る方法」など様々な視点からのツイートにつながっているという。
■「温かな激励のリプライが使命感に」
村田警部にこれまでで一番印象に残ったツイートについて聞いてみると、災害対策課が大規模な災害で現場での活動や状況をツイートした際にリプライされる“応援のメッセージ”だと答えた。
村田警部
「西日本豪雨の時には、被災地の広島に『これから行ってきます』というような内容を投稿。それに対するリプライで『被災地が私の故郷です。私は行くことはできないですが、故郷をよろしくお願いします』とか。おととし熱海の土砂災害に出動した時には『警視庁という文字が書かれた隊員の姿を見ると、非常に安心する。現地の人もそう思っていると思う』とリプライを頂いた」
リプライは救助部隊をはじめ、課のメンバーも読んでいるということで、村田警部は「温かな激励のリプライが使命感、やる気につながる」と話す。
■災害が無いときにもツイートを「被害を減らすきっかけに」
10年前、災害が発生したときのために始まったツイッターだが、災害がないときにも防災に役立つ情報をつぶやき続けるのには理由がある。
村田警部
「災害に対応するのはもちろん、一番重要な任務だと思う。しかし、普段なにもないときには災害の被害を減らしていくのも重要な任務なので、災害が起きる前に、普段こういう準備を始めてください、などと注意喚起になればと思っている」
そして今後のつぶやきについてはこう語ってくれた。
村田警部
「自然災害はとてもとても人間の力では防ぐことは出来ないが、大きな被害を小さくするのは1人1人で出来ることなので、ツイートが被害を減らすきっかけになればと思っている。ツイッターをやめることはないと思うので、これからもよろしくお願いします」