ビッグモーター社長が会見 「工場長が指示してやったんじゃないか」経営陣の関与を否定 厳しい人事降格は「敗者復活」
ビッグモーターの保険金不正請求の調査報告書が公表されてから初めて、兼重社長が公の場に姿を見せました。会見では謝罪ともに経営トップとしては無責任にも聞こえる発言を繰り返しました。
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中古車販売大手「ビッグモーター」の兼重宏行社長は、不正請求問題の報道後、初めて公の場に姿を現しました。会見は、お詫びから始まりました。
ビッグモーター 兼重宏行社長
「当社板金部門が不正な請求を行っていたことが明らかになりました。当社を信頼いただいたお客様、損害保険会社様、お取引先様をはじめとするステークホルダーのみなさまに、多大なるご迷惑とご心配をおかけし、深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」
兼重社長は深々と頭を下げました。そして、26日付けで自身と息子の宏一副社長がそろって辞任することを発表しました。
ビッグモーター 兼重宏行社長
「不適切な保険金請求を行っていたお客様に対しては、損害保険会社様と連携しながら、速やかに再修理や返金も含め対応を進めます」
会見には、新社長となる和泉伸二専務が同席しました。時折、涙を見せながら次のように語りました。
ビッグモーター 和泉伸ニ専務
「お客様と長年かけて信頼関係を構築してくれた素晴らしい社員がいます。みなさまに私が本日お話ししたことを必ずやり抜くというお約束をして、私の決意とさせていただきます。この度は誠に申し訳ありませんでした」
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ビッグモーターは驚きの手口で、損害保険会社に保険金を不正に請求していました。
先週、公表された特別委員会の報告書では、修理に出された車を工具を使ってひっかいたり、ゴルフボールを靴下に入れて車体を叩き、ひょうで傷ついたように見せかけたり、修理範囲をわざと広げるなどしていたことが明らかになりました。
修理部門で行われていた不正。経営幹部が認識していたのか問われると、兼重社長は“調査報告書を見て初めて知った”として関与を否定しました。
ビッグモーター 兼重宏行社長
「単独で、ほかの経営陣は知らなかった、これは事実だと思います」
そして、ひとごとのように、不正への怒りをあらわにした場面もありました。
ビッグモーター 兼重宏行社長
「特別調査委員会の報告書を受けて本当、耳を疑った。こんなことまでやるのかと、がく然としましたね。その時初めて、現場に入ってよく見ておけばよかったなと。そのまた内容が、大事な大切なお客様の車をおあずかりして、これから修理する人間が傷を付けて、水増し請求する、あり得んです。本当に許しがたいです」
――経営陣の関与がないと言い切れる根拠は?
ビッグモーター 兼重宏行社長
「横の連携がない。それぞれ独立して活動してますので、営業部門とサービス部門、板金部門の連携というのは一切、コミュニケーション本当に取れてない」
――(不正は)やりたくてやったわけではなく、指示を受けて仕方なくやったのでは?
ビッグモーター 兼重宏行社長
「いや、それはないと思いますけど…目標数字上げてますから、周りの雰囲気でそういう手を染めたのか、わかりませんね。指示してやれと言われたことはない。周りが成績上がってて自分だけ落ち込んで、そういう中で自分で手を染めたという感じだと思いますね」
不正は組織的ではなかったか問われると…
ビッグモーター 兼重宏行社長
「組織的ということはないと思います。個々の工場長が、原因は工場長が指示してやったんじゃないか。そのあたりまだ、事実確認取れていませんけども。それでないと、こういうことは起きないと思っていますので」
「不合理な目標設定、それが目標じゃなくてノルマになって、元本部長が、ノルマを達成させるために強くプレッシャーをかけた、それが原因で今回の不正が起きたと考えられますので。組織的と思われても致し方ないですけども、決してそんなことはありません」
――工場長がそういう行為に走るのは、一定の経営陣から指示があったのではないか。経営陣の関与はなかったか。
ビッグモーター 兼重宏行社長
「全くないです。それだけ不合理なノルマを課してプレッシャーをかけても、全く(不正を)やってない人間もいるわけですから、それはないと思います」
――天地神明に誓って知らなかったと言える?
ビッグモーター 兼重宏行社長
「天地神明に誓って知らなかったと言えます」
組織ぐるみではなく、指示はしていないとの見解を示しました。
ビッグモーター 兼重宏行社長
「今回なぜ、こんな事件が起きたのかというところを反省していく中で、やはり内部統制とかガバナンスが今の規模に全く合っていない。板金部門なんて内部統制なんか全くないという状態で」
「私の経営手法として、できるだけスピード感を持ってやろうと。できるだけフラットな組織で意思の疎通、意思決定がすぐできるように、担当責任者には『任せたよ』という形でやってきたのが、独断専行、報告書も上がってこないという形で。目標の設定、その数字が正しいことをやっていれば、これはいい形でいい結果が出ていたと思うんですよね。それが誰が見てもこれは不合理だろうと。それを現場に強いていたと、プレッシャーかけていたと、本当、現場の人間に申し訳ないという気持ちでいっぱいです」
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また、去年1月、工場の作業員が、当時の工場長から不適切な作業をさせられていると社長や副社長に内部告発があった問題で、実態調査がされなかったことについても追及されました。
ビッグモーター 兼重宏行社長
「過去にその人間から何度も工場長仲間との確執の報告があり、今回も『またか』と『仲良くやってくれ』ということで、部長をすぐ調査に行かせて内容確認したところ、『仲良くやることになりました』と報告を受けたので、それで解決したなと。それ以上のことはやっていなかった。本当、あの時やれば、こういうこともなかったと反省しております」
兼重社長は、経営者としては無責任にも聞こえる発言を繰り返しました。従業員に対する一方的な降格処分が頻発していたことについては…
ビッグモーター 兼重宏行社長
「当初から人事に関しましては『抜てき人事』です。この人ならできるだろうという抜てき人事です。そして仕事をやってもらって、ちょっとまだ十分な力がないねという場合はすぐ降格します。ただし、ちょっと一歩下がって全体を見てもらって、それなりに人間は成長するんですね。すぐ敗者復活、その繰り返しでこれを1つの社員教育の一環と思ってやってましたので、それがそのまま、今回の『頻繁に』言われてますけども、復活した人間も同じくらいおりますので、ちょっといきすぎだったのかもわかりませんけども、悪意を持ってやるということは一切ありません」
不正の責任については――
ビッグモーター 兼重宏行社長
「今回の不正請求の問題につきましては、私の管理不足でこういうことを招いてしまったというところは、私どもの責任と考えております。その中でも、社員もやっていいことと悪いことがありますからね。不正を働いた人間はやっぱりそれなりの償いはしてもらいたいと」
「ゴルフボールを靴下に入れて振り回して、ひょう被害の車の損傷範囲を広げて水増し請求する、本当に許せません。ゴルフボールで傷を付ける、ゴルフを愛する人に対する本当、冒とくですよ。事実関係を確認中ですが、わかり次第、刑事告訴を含む厳正な対処をしたいと考えております」
従業員がゴルフボールで客の車に傷を付けた行為などを許せないとして、刑事告訴も検討するとしましたが、会見の最後には刑事告訴について「考え直す」と撤回しました。
ビッグモーター 兼重宏行社長
「先ほど…刑事告発うんぬんをお話ししましたけども…ご質問を受けて、今考えてみると、その責任も私があるなということで、そのあたりは、厳正に対処させてもらいますけども、そこまで…する必要がないなと考えております。考え直しましたので、お伝えします」
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26日の午後は国土交通省がビッグモーターの取締役に対し、ヒアリング調査を行うとしています。また、金融庁も実態調査に乗り出す姿勢を示していて、問題の全容解明が求められます。