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【解説】藤井聡太五冠「名人」に挑戦へ 勝てば「最年少記録」更新…前人未踏“八冠独占”への期待高まる

2023年3月9日 21:56
【解説】藤井聡太五冠「名人」に挑戦へ 勝てば「最年少記録」更新…前人未踏“八冠独占”への期待高まる
藤井聡太五冠が、将棋界の8大タイトルの中でも別格とされる「名人」への挑戦権を獲得しました。史上最年少なるか、8大タイトル独占も見据えた藤井五冠のすごさをお伝えします。

◇6歳からの夢
◇400年超えの格式
◇前人未踏の境地 今年にも?

以上の3点を詳しくお伝えします。

■6歳のバースデーカードに書いた「夢」実現へ…「名人」への挑戦権獲得

9日午前0時ごろ、約12時間の対局を経て、藤井五冠が広瀬章人八段に勝利し、「名人」への挑戦権を獲得しました。勝利が決まった瞬間の藤井五冠は、真夜中の死闘を終え、ほっとした表情を浮かべているようにもみえました。

そして、9日午前1時に行われた会見では、名人戦への意気込みを語りました。

藤井聡太五冠(20)
「名人戦の舞台にふさわしい、いい内容の将棋が指せるようにがんばりたいと思っています」

そもそも「名人」とは何か。将棋界には全部で8つのタイトルがあります。

【将棋界8大タイトル】
◇竜王
◇名人
◇王位
◇王座
◇棋王
◇王将
◇叡王(えいおう)
◇棋聖

藤井五冠は現在、この8大タイトルのうち、「竜王」「王位」「王将」「叡王」「棋聖」の5つを制していて、しかも「竜王」以外は最年少で獲得しています。今回はこれに加えて、「名人」に挑戦する機会を手にしたということです。

8大タイトルの中でも、「竜王」と「名人」は別格といわれています。「竜王」は、勝者がもらえる賞金額が将棋界最高とされ、2021年、藤井五冠が獲得した時は4400万円でした。

一方、「名人」は、賞金額は公表されていませんが、最も歴史が古い、つまり伝統と格式では別格のタイトルです。

名人のタイトルは古く、江戸時代、1612年から続くものです。当時は幕府の後ろ盾を得ながら、決められた家の人しか名乗ることができない世襲制でしたが、1935年に実力制になり、現在のかたちになっています。

藤井五冠自身も特別な思いを寄せているようです。6歳のバースデーカードに、「おおきくなったらめいじんになりたい」と書いたそうです。将棋を始めたのが5歳ですから、1年後には名人を目指していたということになります。そして、9日未明の会見でも、「名人戦の舞台に立つところまで来たことを、当時の自分に教えてあげたい」と話していました。

また、史上最年少の14歳でプロ入りした2016年にも、「『名人』とは古くから続く格式あるタイトルなので、とりたいという気持ちはあります」と語っていました。8大タイトルの中でも、「名人」がいかに特別な存在かがうかがえます。

■「名人」最年少記録の更新なるか…チャンスは今年だけ

名人になるのもさることながら、挑戦権を獲得するだけでも大変です。

名人に挑戦するには、順位戦のリーグで一番下のC級2組からC級1組、B級2組と昇格していき、最上級のA級まで昇格。そして、そのA級でトップに立たなければなりません。この“A級に所属する棋士しかチャレンジできない”という条件は「名人」だけです。順位戦は1年を通して行われていますが、多くのプロ棋士は一番下のC級2組から参加するため、「名人」への挑戦権を獲得するのには、最短でも5年かかるといわれています。

藤井五冠は一番下のクラスから始めて、挑戦権を獲得するまで5年8か月かかりました。

これまでさまざまな最年少記録を塗り替えてきた藤井五冠ですが、今回、「名人」を獲得すれば、またもや記録を塗り替えることになります。「名人戦」がはじまるのは来月で、遅くても6月には勝敗が決まります。この時、藤井五冠は20歳10か月ほど。現在の名人獲得の最年少記録は、谷川浩司十七世名人の21歳2か月です。藤井五冠が勝てば、最年少記録を更新することになります。裏を返せば、今年勝たないと最年少記録とはなりません。

■対局相手は渡辺二冠…勝算は 「棋王戦」にも勝てば史上2人目の“七冠”も視野に

ただ、相手も相当手ごわいです。「名人戦」の対局相手は渡辺明二冠(38)。名人と棋王のタイトルを持っています。

タイトルをめぐる勝負は、各タイトルでだいたい1年ごとに行われますが、渡辺二冠は「名人」で3連覇中、「棋王」は10連覇中というかなりのつわものです。

勝算があるのか。これまでの藤井五冠と渡辺二冠の対局をみますと、渡辺二冠の3勝に対し、藤井五冠の方が15勝と多く勝っています。さらに現在、藤井五冠はまだ獲得していない「棋王」をかけて渡辺二冠と対局しています。5番勝負で先に3勝すれば勝ちですが、現在2勝し、王手をかけている状況です。

ほかのすでに持っているタイトルを防衛したまま、「棋王戦」に勝てば六冠となります。さらに「名人」を獲得すると、羽生九段以来の史上2人目の“七冠達成”となります。しかも、最年少記録での達成となります。

今年、2023年中に前人未踏の“八冠独占”を成し遂げるのか、期待は大いに高まっています。ただ、その可能性が出ていること自体、異常なことともいわれています。

   ◇

将棋界の歴史を次々と塗り替えてきた藤井五冠ですが、子どもの頃からの夢についに手が届くのか、来月の対局が注目されます。

(2023年3月9日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)

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