【解説】熱中症は「気象災害の1つ」…死者は毎年1000人超える勢い 「料理中」「掃除中」室内でも注意
東京都心でも初の猛暑日を観測するなど、10日は危険な暑さとなっています。命に関わるこの暑さに、どのような対策をすればいいのでしょうか。
●“災害級”死者1000人超も
●猛暑でリスク…点検を
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
10日の最高気温は東京・練馬で37.8℃、さいたまで38.0℃、山梨・大月で38.7℃などとなっており、各地で今年一番の暑さを記録しました。
関東を中心に危険な暑さとなり、東京・千葉・埼玉・茨城・愛知・徳島・宮崎・鹿児島・沖縄の9つの都県で熱中症警戒アラートが出されています。この暑さはしばらく続くということで、警戒が必要です。
年々、夏ごとに暑くなっている感もありますが、ここ数年は熱中症で亡くなる人の数が多くなっています。
厚生労働省がまとめたデータによると、熱中症による死者はこの5年間でみると、記録的な猛暑に見舞われた2018年の1581人をはじめ、2021年を除き1000人を上回っています。
毎年1000人以上が亡くなるという状況に、東京大学大学院の客員教授で防災の専門家である松尾一郎さんは、「熱中症も気象災害の1つではないか」と指摘しています。
東日本大震災などの激甚災害は別として、地震や水害、土砂災害など自然災害で年間1000人を超える死者が出る年は、実はそれほどありません。しかし、熱中症による死者は毎年、1000人を超える勢いなわけです。
松尾さんは「昔は、夏の暑さといえばお盆前後の2~3週間をしのげば何とかなったが、ここ数年は6月あたりからエアコンを使わないと乗り越えられないような暑さになっている」「自然が変わっているのだから、私たちの行動も変えないといけない」と話していました。
電気代も上がってきていて、節約したい気持ちも理解できますが、命を守るためには「エアコンを使いましょう」ということになります。また、松尾さんによると、室内の空気を循環させるだけでも良いということです。扇風機やサーキュレーターなどを「どんどん使ってほしい」と話していました。
10日は、気象庁も不要不急の外出を控えるよう呼びかけています。可能であれば、クーラーの効いた部屋で過ごし、こまめに水分補給ができるように手の届くところに常に飲み物を置いておくべきだということです。特に、高齢者は水分を取りにいくのも大変なので、置いておいたほうが良いわけです。
また、室内でも熱中症になる危険があり、とにかく避けなければいけないのは、「高温・多湿」です。日本気象協会によると、注意が必要なのは「料理中」と「掃除中」だということです。
料理中は熱が出ていますし、蒸気が噴き上がることもあります。できるだけ火を使わないレンジ調理に切り替えるような工夫をすることや、水分補給しながら料理するということが大切です。
「掃除中」に特に気をつけないといけないのが、「廊下」「トイレ」「浴室」「脱衣所」「洗面所」で、エアコンがついていない場所が多いです。
こういうところを掃除する時は、ついつい夢中になってしまいます。適度に休憩を挟み、換気や首元を冷やしながら作業をすることが大事だということです。
例えば拭き掃除をする時は、バケツに入れた水を運ぶのと同時に、飲料の水もペットボトルなどに入れて持って行くような工夫をすることなども必要になります。
また、熱中症対策に欠かせないエアコンですが、効きが悪くては話になりません。エアコン本体のほこりをとったり、フィルターを掃除したりする人は多いと思います。ただ、「エアコンの心臓」と言われる室外機はどうなのでしょうか。
空調メーカーのダイキンによると、エアコンの効きが弱いと思ったら、「室外機の周辺環境も見直してほしい」といいます。
室外機が設置されることが多いのは、ベランダです。外気温34℃の時には、室外機と壁のすき間の温度が45℃近くにまで上がることがあるそうです。このように室外機周辺の温度が高いと、運転効率が下がっていくということです。
また、室外機は部屋の熱を外に出していますので、そこをふさぐとまた熱風を取り込んでしまいます。荷物や植木鉢などを置いていないか、カバーをつけっぱなしにしていないかをチェックしてほしいです。
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10日夜も熱帯夜となるところが多い予想です。暑さは昼だけではありません。とにかくエアコンを適切に使って、枕元には飲料水を用意して寝床につきましょう。
(2023年7月10日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)