×

【#みんなのギモン】なぜ相次ぐ?川遊びの死亡事故 「川底はアリ地獄」“見えない危険”から身を守る4つのポイント

2023年7月12日 8:00
【#みんなのギモン】なぜ相次ぐ?川遊びの死亡事故 「川底はアリ地獄」“見えない危険”から身を守る4つのポイント

7月3日、埼玉県長瀞町で19歳の大学生とみられる男性が川に流されました。また、大分県佐伯市の川では、友人と泳いでいた男子中学生が意識不明の状態で病院に搬送されましたが、その後、死亡が確認されました。この時期に多い川の事故。なぜ、事故は相次ぐのでしょうか?専門家は、川に潜む“見えない危険”が4つあると指摘してます。(報道局 調査報道班 及川光昭)

話を聞いたのは、水の事故を調査する水難学会の斎藤秀俊理事です。暑い日が続くこの時期、冷たい川があると“ある心理”が働いてしまうといいます。

水難学会 斎藤秀俊理事
「目の前に冷たい川があると、気持ちよくなりたいという心理から、“深さ”を忘れて飛び込んでしまうんですね。もし入ったら命を落とすかもしれないという危機感を忘れてしまうんです。川が『おいで』と呼んでいる。我々は“おいでおいで現象”と呼んでいます」

専門家の調査によると、これまで大きな水難事故のほとんどが“ 水に入った瞬間”だといいます。大切なのは、すぐに川に飛び込まず、まずは“深さを確認する”ことだといいます。

さらに…

「川の流れがプールのように穏やかで、ゆっくり流れるところほど、実は川は深くなっているので危険です。一見、プールのように見えるからと飛び込んだら、実際は足がつかなくて溺れることがあります」

■危険① “水の屈折”で川底が浅く見える

川に潜む危険。専門家は、大きく分けて4つのポイントがあるといいます。まず、1つ目は「水の屈折」だといいます。

水難学会 斎藤理事
「岩が多い川では、水が透き通っていて川底までよく見えるんですよ。一見、川底が大きく見えるため浅く見えますが、これは目の錯覚なんです。実際に岩の上から飛び込んだら、見た目よりも深くなっているので大変危険です」

透明度が高い川では、水の屈折によって実際の深さよりも浅く見えてしまうといいます。

■危険②砂利の斜面が崩れ、歩いても戻れない“アリ地獄”

2つ目は「地形」です。川底には、“見えない危険”が潜んでいるといいます。

水難学会 斎藤理事
「河原が岩か、砂利かによって危険なポイントが変わってきます。例えば、砂利の場合は“斜面”に注意が必要です。川底が砂利のところは斜面になっていて、だんだんと深くなっているんです。この斜面の砂利というのは、そもそも傾いたら崩れてしまうギリギリで止まっていて不安定な状態です。例えば、途中で深くなっていることに気づいて川岸に戻ろうとしても、砂利がどんどん崩れてしまうんです。一生懸命、足で蹴って、何とか戻ろうとしても、砂利が崩れるので戻れない。アリ地獄に入っちゃった感じです。アリ地獄そのものです」

足の力では斜面を歩くことが出来なくなり…たった一歩、川に流されただけで足の届かない深みにはまり、沈水してしまうといいます。

■危険③ “循環流”という見えないキケン

3つめの危険なポイントは「流れ」です。

水難学会 斎藤理事
「流れで一番怖いのは“循環流”です」

循環流とは、上流から下流へ流れる“本流”とは別に発生する、“逆流”のことです。本流と逆流がぶつかることで、海で発生する“離岸流”のように岸からどんどん流されてしまうといいます。

「循環流は、本流の流れから分岐し、逆流しながらまた本流に戻りぐるぐると循環するわけです。危険なのは循環流が川岸の方を通り、本流に戻るときです。 つまり、浅くて安全な川岸にいても、循環流によって、足の届かない深い本流へと流されて溺れてしまいます。どんどん深い方に流されて気がついたら、もう立てなくなって溺れてしまう。例えるなら“見えない落とし穴”。このケースの事故は多いです」

循環流によって、あっという間に流れが速くて深い本流へ引きずり込まれてしまう危険があると指摘します。

■危険④ 雨天後の川の増水に注意“洗掘現象”とは…

4つ目の危険は、雨による増水です。水かさが増すことで川に“ある現象”がおきるといいます。

水難学会 斎藤理事
「雨が降って、普段よりも水かさが増すと、上流から流れる水が岩の上を超えて下流へと流れます。その後、水が引いてくると、いつもは浅いはずの川底が、ものすごく深くなるんです。川底の深さが変わる現象。これを“洗掘現象”といいます。水が、岩の上から川底に向かって落ちるので、水の力で川底が掘られてしまうのです」

増水によって、川底が深くなる“洗掘現象”、上流から中流にかけての場所に多いといいます。

■では、流されてしまった場合の対策は?“浮いて待て”

では、川で流されてしまった場合、私たちはどうすればいいのでしょうか?

水難学会 斎藤理事
「流されたら背浮きで“浮いて待て”が大事です。身につけている服やサンダルは脱がないこと。その理由は、服は水に沈みますが、服の間には空気がたまっているので浮きやすくなります。また、履いているサンダルのクッション材も空気が入っていて有効です」

専門家は、力まず、肺の中にたくさん空気をためて浮くことが大事だといいます。
その一方で…

「肺の空気が抜けてしまうので、声を出して助けを求めてはいけません」

また、陸にいる人が出来ることについては…

「ペットボトルは浮き具になるので、投げて渡してあげること。一方、クーラーボックスはぶつかると危ないので、投げない方がいいです」

さらに…

「とにかく早く119番に電話をすることです。また、二次被害を出さないためにも、陸にいる人はむやみに川に飛び込まないこと。もし、子どもが流されても親は飛び込まず、迅速に消防に電話をして、救助を任せることが大事です」

水難学会は、「川で遊ぶなら膝下の水深まで」「救命胴衣は水の抵抗で外れやすいので、外れないようきつく固定すること」を呼びかけています。