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【#みんなのギモン】「ゴミは持ち去っても罪に問われないの?」調査してみると…

2023年6月22日 18:00
【#みんなのギモン】「ゴミは持ち去っても罪に問われないの?」調査してみると…
一般の可燃ゴミ持ち去りの瞬間とされる写真(視聴者提供)

「自分が捨てたゴミが持ち去られました。警察に相談しても注意しかしてもらえず不安を感じています」

日本テレビの情報提供窓口に寄せられた投稿です。空き缶や古紙などの「資源ゴミ」の持ち去りはたびたび問題になりますが、一般の「可燃ゴミ」の場合は持ち去っても罪には問われないのでしょうか?調べてみると意外な事実がわかりました。(報道局 調査報道班 吉田理一郎)

■「自分のゴミが持ち去られるなんて…恐怖で心臓がバクバク」

3年前、自身が捨てた「可燃ゴミ」が持ち去られるのを目撃したという女性。女性が指定の集積所にゴミを置いた直後、見ず知らずの男性が車で乗り付けて、素早くゴミを持ち去ったといいます。

「自分のゴミが持ち去られるなんて思ってもいなかったので、見た時は恐怖で心臓がバクバクしました。」

女性によると、当時、自宅周辺で女性専用の公衆トイレから生理用ナプキンを盗む男がいるという話や、近隣の小中学校では、何者かが保護者だと言って、生徒を外に呼びだそうとする事案が起きているといった話を耳にしていたこともあり、10代の子どもがいた女性は、捨てたゴミから家族構成を知られるのではないかと不安を感じたといいます。

女性から相談を受けた警察が男性に注意したことで、男性はその後、姿を見せなくなりましたが、今年5月頃から、再びゴミ集積所周辺を徘徊する不審な人物を目撃するようになったといいます。

「3年前のことがあったので不安を感じて、燃えるゴミの収集日に集積所の様子をうかがっていました。すると、3年前と同じ背格好の男性がまたゴミを持ち去って行く のを見たんです。」

ゴミの持ち去りは、泣き寝入りするしかないのでしょうか?

「ネットで調べると、条例があるところとないところがあるみたい なんです。条例がないところはやられるがままという状態になってしまうの で、条例を作るということで統一してもらいたい。条例があるのとないのとでは安心感が違います。」

■資源ゴミ持ち去り禁ずる条例制定は全体の約2割…可燃ゴミはさらに少なく

可燃ゴミや資源ゴミなど、家庭から排出されるゴミの処理に関しては、各市区町村が定めることになっています。ゴミの持ち去りについても、禁止したり、罰則を設けたりする場合は、それぞれが条例等で定めることになります。

環境省が全国1741市区町村を対象に行った、「資源ゴミ」の持ち去りに関する調査によると、2022年9月末時点で、資源ゴミの持ち去りに対応する条例等を制定しているのは、全体の23.6%の411市区町村。うち罰則規定を設けているのは233市区町村だけです。

調査結果によると、条例を制定していない理由は様々で、「制定に必要なノウハウや人員が不足している」や、「被害の実態把握ができていない」「持ち去り行為者の特定が困難」などの課題をあげる自治体がある一方、持ち去り行為が多発している状況になく、持ち去りが確認された場合でも直接指導などで対応できている、とする自治体もあります。

これが「可燃ゴミ」になると、持ち去り禁止の対象とする条例を制定している市区町村はさらに少なく、85と全体のわずか4.9%にとどまっています。調査からは、条例で持ち去りを禁止している自治体が少ないことがわかります。条例がなければ、ゴミを持ち去られても取り締まることはできないのでしょうか。

■専門家の見解は?

「回収のために集積所に置かれたゴミは、行政に処分を委ねているのであって、第三者に持ち去られたり、中身を勝手に見られることまでは、承諾はしていないと考えられます。」

甲本晃啓弁護士(甲本・佐藤法律会計事務所)は、条例でゴミの持ち去りを禁止し罰則が定められている場合は、警察の取り締まりが可能になることなどから、一定の抑止力が期待できるといいます。また、刑法の観点からも、勝手にゴミを持ち去る行為は窃盗罪に問われる可能性があると指摘します。

管理支配が及んでいると考えられる場所と、そうではない場所とでは、物に対する法的な保護の扱いが異なるといった裁判例があるといいます。

甲本弁護士によると、過去にあった自転車の持ち去りに関する裁判例では、駐輪場といった管理されている場所に置かれている自転車と、路上に放置されている自転車とでは、物に対する法的保護の度合いが異なるとされており、駐輪場に置かれている自転車は所有者の管理支配が及んでいると考えられることから、これを勝手に持ち去ると、窃盗罪で処罰されうることが示唆されています。

「ゴミの場合、路上に捨てれば所有権がないとみなされ、その物自体に経済的価値もないと判断されることがありますが、 生活ゴミにはプライバシーが含まれ、全く価値がないとは言えま せん。まして、管理されている集積所に置かれたゴミは、路上に落ちて いるゴミと同列に論じることはできず、置いた人の意思に反して持ち出せば、裁判例と同じように、窃盗罪に問われるといった法解釈論も成り立ちうるのではないか」

見られたくないものは細断して捨てるなど自衛することも重要で すが、一方でそうもいかないゴミがあるのも事実です。

甲本弁護士は、個人の出したゴミからその個人に興味関心が移り、ストーカー行為につながることも想定されるので、条例でゴミの持ち去りを取り締まれるようにすることが望ましいといいます。

条例がなくても、ゴミの持ち去りを目撃した場合は自治体や警察に通報することが重要です。