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“わかりにくい”防災気象情報 名称・発表基準を統一へ見直し進む

2023年12月7日 0:25
“わかりにくい”防災気象情報 名称・発表基準を統一へ見直し進む

気象庁などが発表する大雨や洪水などの「防災気象情報」は情報の数の多さや名称がわかりにくいといった課題があり、有識者を交えて抜本的な見直しが進められています。

6日開かれた検討会ではこれまでの議論をふまえ、洪水など川に関する情報、土砂災害や高潮についての名称や、情報を出す基準を統一するなど改善の方向性が示されました。

現在、全国には2万を超える川があり、大雨による洪水で大きな被害がでるおそれがある、およそ2200の川を「洪水予報河川」と「水位周知河川」に指定しています。

■水位周知河川 発表主体・指標を統一へ

このうち、「水位周知河川」については、気象庁と国土交通省や都道府県などの河川管理者が、それぞれ危険情報を発表しています。しかし、気象庁は「市町村ごと」、国交省などは「川ごと」で発表しているほか、発表の指標も異なっています。

このため、検討会では、情報を「川ごと」の発表とし、指標も「水位」に統一するという見直し案が出されました。

さらに、川の上流域に降った雨で、下流の洪水危険度がどれほど高まるかを把握する指標「流域雨量指数」を活用して、新たに、今後の水位の見通しの情報を伝えることで、市町村が避難情報を出す判断をおこないやすくしたい考えです。

洪水予報河川と水位周知河川以外の川については、従来通り、気象台発表の「洪水警報・注意報」を活用していく一方で、現在、避難指示につながる警戒レベル4や5相当の情報がないことが課題となっているため、自治体などの意見をふまえながら、引き続き検討するとしています。

■土砂災害警戒情報 新基準追加で“空振り減少”目指す

土砂災害の情報は、現在、警戒レベル5段階のうち、レベル4「土砂災害警戒情報」、レベル3「大雨警報」、レベル2「大雨注意報」と、レベルによって名称が異なるうえ、情報の受け手に、土砂災害に関する情報だと伝わりにくいことが大きな課題となっています。この課題に対し、検討会ではすべての名称に「土砂」を入れて統一することとなりました。

さらに、発表基準には現状の土壌雨量指数に加えて、1時間雨量を追加することで、情報が発表されても災害が発生しない“空振り”を減少させたい考えです。

■高潮 各警戒レベルにつきひとつの情報をひも付け

高潮については、ばらばらとなっている名称と情報の発表主体を統一するほか、現在、警戒レベル4相当には「高潮特別警報」と「高潮警報」の2つの情報がひも付けられているため、レベルごとにひとつの情報にしていくとしています。また、情報の発表基準に潮位だけでなく、沿岸に打ち寄せる波も考慮していくということです。

■座長「既存の情報を利用しやすく」「慎重な検討が必要」

これらの見直し案について、検討会の委員からは、「水位の変化が激しい中、小河川で避難指示につながる情報をひも付けるには慎重な検討が必要」、「川ごとに情報発表することで本当に危険な場所がわかりにくくなるおそれがある」、「高潮は台風の進路によって予想が大きく異なるため過去の事例の検証が必要」など多くの意見が出されました。

検討会の座長を務める京都大学防災研究所の矢守克也教授は、既存の情報をより利用しやすくするために整理するとともに、災害時には複数の情報が同時に発表される状況もふまえて、慎重に検討していきたいとしています。

また、副座長を務める静岡大学防災総合センターの牛山素行教授は「個人や企業など利用者が活用しやすい基礎となる情報を出していくのが気象庁の役割だ」と話しています。

検討会は今後、変更される名称など具体的な議論を進めて年度内に骨子案をとりまとめる方針です。