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オバマ政権が臨界前核実験、広島で抗議の声

2010年10月14日 0:56
オバマ政権が臨界前核実験、広島で抗議の声

 「核なき世界」を掲げているアメリカ・オバマ政権で、初の臨界前核実験が先月15日にネバダ州の実験施設で行われていたことに対し、被爆地・広島の平和公園で13日、被爆者団体の広島県原水協などが抗議の座り込みを行った。

 座り込みには約50人が参加し、臨界前核実験を行ったアメリカのオバマ大統領に対し、「核大国の身勝手な行為」と非難した。広島県原水協・高橋信雄代表理事は「一番の問題は核抑止力論。ここを打ち破らないと核兵器のない世界の実現はできない」と述べた。

 臨界前核実験は06年以来4年ぶり、通算24回目となる。核兵器の安全性や有効性の調査などが目的で、核爆発を伴わないとはいえ、オバマ政権誕生後、初めての核実験となる。去年4月、オバマ大統領は「核兵器のない世界」の実現に向けた画期的とも言える演説で世界に期待を抱かせた。これが評価され、去年のノーベル平和賞を受賞した。今年4月には「核戦略体制の見直し」を発表。アメリカは、新たな核実験を行わないことや、核兵器の使用条件を限定することなどを明らかにしていた。

 「核のない世界」の実現に向け、アメリカに期待を寄せていた広島県の被爆者からは落胆の声が上がっている。広島県被団協・坪井直理事長は「一言で言えば裏切られた感じが強い。なぜ臨界前と言いながら核実験をしたのか、オバマ大統領に聞きたい」と話した。

 世界の核保有国は、アメリカやロシアなど5大国に加えてインド・パキスタンのほか、地下核実験を実施した北朝鮮などと、増加している。広島平和研究所・浅井基文所長は、アメリカの狙いについて、核抑止力による核政策の継続にあると分析した上で、「プラハ演説の中で、核兵器がある限りは有効な核兵器を維持するとはっきりと言っている。要するに私たちが勝手に裏切られたと思っているが、オバマ大統領にしてみれば『一貫してます』ということ。幻想で物事を考えるのはやめようという、警告だと受け止めるべき」と述べた。

 原爆資料館では、地球平和監視時計がリセットされた。表示は、28日と、臨界前核実験が行われた先月15日からの日数に変わった。

 また、「オバマジョリティー」という造語でオバマ大統領の「核なき世界」構想を支持してきた広島市・秋葉忠利市長は、「世界の多数派市民の期待や願いを踏みにじるもので、激しい憤りを覚える」との抗議文をアメリカ大使館に送った。