「ほめられて出世」はもう古い? 若者の6割「人前でほめないで」に衝撃も……上司との“ギャップ”の理由【#みんなのギモン】
効果的なほめ方やNG例も専門家に聞きました。
そこで今回の#みんなのギモンでは、「『人前でほめないで』若者6割?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●こっそりほめて そのワケは?
●よかれと思って なぜすれ違い?
「若者の6割は『人前でほめられたくない』と考えている、という調査結果が発表されました」
鈴江奈々アナウンサー
「子育ても、後輩たちと接する上でも、ほめて伸ばす派だったので、そう言われると、いけないことをしていたのかなという気になってきました」
小野解説委員
「ビジネス本でも、『ほめて育てろ』という啓発本が多く出ているくらいじゃないですか。上司になる人の頭の中は、部下をほめることでいっぱいですよ。『それがダメなんでしょうか?』『なんで?』となってしまいますよね」
「注目の調査結果を見てみます。マーケティング機関が今年1月、400人以上の15~24歳の若い人に『どうほめられたいですか?』と意識調査をしました(SHIBUYA 109 lab.×金間ゼミ共同調査)」
「『大勢の前でほめられたい』と答えた人が37.3%だったのに対し、『個別でほめられたい』と考える人は62.7%と、大きく上回りました」
鈴江アナウンサー
「ほめられるのが嫌なわけではなくて、大勢の前でほめられるのはちょっと、ということなんですね」
刈川くるみキャスター
「苦手だなと思う方はいるだろうなと思っていたところ、こんなにパーセンテージが多いとは思いませんでした。今の若い方がそういう傾向にあるということですか? 私は、大勢の前でほめていただいてもうれしいです」
小野解説委員
「実際皆さんどう思っているか、23日に都内で聞いてみました」
大学生(21)
「自分の肯定感が少し上がるかなというのと、自分が今まで頑張ってきたことが認められるかなと思うので、(人前で)ほめられるのがうれしいです」
会社員(22)
「人前ではほめられたくないです。いろんな人がいるところでほめられると、ちょっと気まずいので。人の目とか気になるので。ほめてくれるなら、個別でほめてもらいたい。謙遜しちゃうし、もっとすごい人いっぱいいると思っちゃう」
大学生(20代)
「あまり注目を浴びたくない。できれば陰で、『こういうところがよかったよ』と言われた方がうれしいかな」
小野解説委員
「謙遜してしまうとか、注目を浴びてしまうという答えがありました」
山崎誠アナウンサー
「確かにほめられることは嫌じゃないけれど、ほめられた時の難しさのようなものはあるかもしれません」
杉原凜アナウンサー
「私も、いつでもどこでもほめていただいていいんですが…。確かに温度感は大切かもしれないですね。大げさだと困ってしまったり」
鈴江アナウンサー
「どう受け止めていいか分からなかったり…」
小野解説委員
「皆さんいろいろ思うところがある通り、ほめられることには複雑な気持ちがあります」
「調査では『大勢の前ではちょっと負担かな。目立つし、うれしさよりも恥ずかしさが勝ってしまう』『うれしいけど、そこまで大したことじゃないのに…』といった声がありました」
小野解説委員
「複雑な気持ちは、同じ調査の数字に表れています。約8割の人は、人にほめられるのは好きと答えています。一方で、好きと答えた人の46.3%は、どこかほめられるのは苦手だという気持ちも同時に持っているそうです。ちょっと矛盾しているようにも思いますよね」
山崎アナウンサー
「ほめられるのは好き、でもほめられるのが苦手…。難しいですね」
小野解説委員
「若者のモチベーションに詳しい金沢大学の金間大介教授が、この複雑な気持ちを分析しています。1つ目は、期待されるのが怖い。今の若者は、安定志向の親の世代の影響もあり、失敗を避けたい、自己肯定感が低く、必要以上に謙遜してしまう人も多いそうです」
「みんなの前でほめられたら、多くの人に期待されてしまうのではないか、うまくいかなかった時に失望されてしまうのではないかと怖くなってしまうそうです」
「2つ目は、必要以上に頑張りたくない。ほめられると、今後も努力をしなければいけないプレッシャーになるということです」
「3つ目は、SNSで満たされている。SNSでつながっている輪の中で、『いいね』を送り合っています。それによって承認欲求は満たされていて、それ以上にはほめられたいとは思っていない、という心もあるようです」
刈川キャスター
「結構時代が反映されているんですね。私も社会人4年目になって後輩が増えてきましたが、ほめる時はみんなの前の方がうれしいだろうと意識してしまっていた部分があります。苦手な方もいるというのは、アップデートしなくてはいけない感覚なんだなと思いました」
小野解説委員
「そんな若者の心を、上司はどう考えればいいか。ほめる側の上司は今回の調査結果をどう見るか、23日に都内で聞いてみました」
会社員(40)
「ちょっと衝撃ですね。簡単なことでもほめます。みんなが仕事している場所で『すげえじゃん』『よくやってくれた』と、すぐ言っちゃいますね。今後気をつけようと思います」
大学教員(60)
「ほめられても『みんなの前で言わないでよ』みたいな雰囲気があるので。個人的に、みんなの前でほめたりはしません。(学生が)書いたものを名前をあげずに(匿名で)『こういう記述があってすごくよかった』というほめ方をします」
鈴江アナウンサー
「匿名の方が聞く側も安心できる、いいほめ方だなと学びました。ただやっぱり、衝撃を受けている上司の方もいらっしゃいましたが、ギャップが生まれているんですね」
小野解説委員
「ほめる側とほめられる側のすれ違いが、なぜ起きるのか。金間教授に聞きました」
「今ベテランで部署の中核にいるような人は、ほめられて元気が出て出世してきた人が多い。『社長賞いただきました』というように。自分がそうだったから、みんなの前でほめると士気が上がるのではないかと思いがち。そこにギャップがあるということです」
山崎アナウンサー
「これが当たり前、これが普通、というのは世代が変わっていくことで変わっていきます。個人によっても変わっていきます。アップデートしていく必要性があるなと思います。こういうほめ方が好まれる、というのもあるのでしょうか?」
小野解説委員
「どうほめたらいいのか、金間教授に聞きました。まず、ラフにほめる『ラフぼめ』です。『今日作ってくれた資料サンキュー』『あの会議の発言良かったよ』など、会議が終わった後に一言だけポンと、わざわざほめている感じを出さずにさりげなく言うものです」
「次に『最中ぼめ』。結果が出た後ではなく、頑張っている最中に『頑張ってるね』とほめるものです。そして『引用ぼめ』。そういえば隣の部署の部長が、頑張っているねと君のことをほめていたよ、と引用する形で伝えるものです」
「直属の上司が部下をほめると、部下は『何か裏があるんじゃないか』と考えがちだそうです。間接的にほめると、お世辞感が払拭できます」
鈴江アナウンサー
「客観的な事実として受け取れますよね」
小野解説委員
「こういうものはテクニックが必要ですが、毎回使ったら『いつもの手か』とばれるので、たまにやるのがいいそうです」
鈴江アナウンサー
「いずれにしても、見ていてくれるというのがベースにあるので、どのほめ方をされてもうれしいだろうなと思いました。一方で、これはやめておいた方がいいというケースもあるんですか?」
小野解説委員
「金間教授によると、『誰々さんと違ってあなたは頑張っているね』『あの人と比べて…』と比較するのはダメです。『まだ20代なのに…』『さすが何々大学出身!』もダメです。ご機嫌取りや見返りを求めるのも、裏があると思われてしまい、ダメだそうです」
鈴江アナウンサー
「ダメなパターン、良いパターンを学んでみて、本音で思っているかどうかは大事にしたいと思いました」
「コミュニケーションで周りからの見られ方を気にしている若い世代の方もいらっしゃると思いますが、どう見られるかよりも、まず自分がどう感じているかもぜひ大事にしてもらいたいなと思いました」
小野解説委員
「ほめられるのは好き、だけど人前ではほめられたくない。その心を調べたら、とてもデリケートで奥が深かったです」
(2024年8月23日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)