対策は「とにかく川の水を飲まない」……きれいに見える川にも“感染症リスク” 熊本で69人が体調不良【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「川遊び後に69人体調不良…なぜ?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●なぜ集団で体調不良?
●遊ぶときの注意点
猪子華・日本テレビ社会部記者
「8月も下旬となりましたが、まだまだ暑いですよね。川などで水遊びをされる方も多いと思います。熊本県で川遊びの後に体調不良を訴え、受診した人が69人に上りました」
「13日、熊本・天草市にある轟の滝や周辺の川で遊んでいた高校生7人がおう吐や下痢の症状を訴え、医療機関を受診しました。この他にも同じ場所で遊んでいた複数の人が同様の症状を訴え、医療機関を受診し、その数は21日午前9時の時点で69人となりました」
「熊本県は看板を立てるなどして、轟の滝周辺での遊泳や水遊びを控えるよう呼びかけています」
猪子記者
「経緯を整理します。13日、高校生7人が川遊びをしました。その3日後、7人全員におう吐・下痢の症状があり受診。これ以降、同様の症状で受診する人が続々と出てきて、診察を行った医療機関は『川の水が原因の感染症も疑われる』としています」
「これを受け、熊本県は18日に遊泳などを控えるよう呼びかける看板を設置。19日に轟の滝付近からとった水の水質検査を実施。現在は水質検査中で、原因の特定を急いでいるという段階です。結果は今週中に出る見込みです」
鈴江奈々アナウンサー
「映像を見る限り、とてもきれいな水に見えました。水が原因ということがあるんだ、と驚きました。今まさに水質検査を行っているということで、こういった滝や遊び場では、水質検査は定期的にされているものではないんですか?」
猪子記者
「熊本県によると、定期的な水質検査は海水浴場などではしていますが、滝などは対象外だということです。川の水が原因の感染症について、何が考えられるのか専門家に聞きました」
「国際医療福祉大学の松本哲哉教授は、『クリプトスポリジウム症とレプトスピラ症の可能性は検討した方がいい』と話しています。これまで川での感染事例も報告されているものです」
森圭介アナウンサー
「2つとも初めて聞きました」
猪子記者
「なじみがないものですよね。厚生労働省によると、クリプトスポリジウム症とは、寄生虫による感染症です。潜伏期間は3日~10日。症状は下痢・腹痛・吐き気・けん怠感などで、軽度の発熱を伴う場合もあるそうです」
「通常、数日から数週間で自然におさまりますが、免疫機能が低下している人の場合は重症化することがあるので、注意が必要だということです」
「松本教授は、下痢やおう吐の症状が天草の滝で遊んでいた高校生7人にあったことから、クリプトスポリジウム症がより可能性が高いのではないかと指摘しています」
「この寄生虫がいるヒトや動物の排せつ物や、排せつ物に汚染された食品や水などを食べたり飲んだりすることで感染します」
「衛生設備などが整っていない地域での食事や水泳で感染リスクが高まりますし、寄生虫のいる湖などで泳いでいる間に水を飲むことでも感染するということです」
「松本教授も、川の上流で感染している動物が排せつし、それが下流にまで流れてきて、その水を飲んでしまうと感染すると話していました」
森アナウンサー
「分かりやすく濁っていれば気をつけることもできますが、寄生虫由来と言われてしまうと気をつけようがなかなかないですよね」
猪子記者
「もう1つ疑われるのが、レプトスピラ症です。沖縄県によると、らせん状の細菌『レプトスピラ菌』を原因とした感染症です。この菌に感染した動物の排せつ物に汚染された水や土に触れることで感染します」
「ネズミやイノシシなどの野生動物が菌を持っていると考えられていますが、ウシ・ブタなどの家畜や、イヌなどのペットも感染源となります」
河出奈都美アナウンサー
「クリプトスポリジウム症(の原因)は、汚染された食品や水などということでしたが、レプトスピラ症に感染する場合はどんなシチュエーションが考えられるのでしょうか?」
猪子記者
「川や池・滝などで泳いだり、トレッキングや釣りといったレジャーや、農作業・ガーデニングでの感染もあり得るそうです」
鈴江アナウンサー
「結構身近ですね」
猪子記者
「潜伏期間は3日~14日。症状は頭痛・発熱・筋肉痛・下痢・おう吐などで、松本教授は『インフルエンザに近いような症状が出る』と表現していました。国立感染症研究所によると、重症化すると黄だんが出たり、腎障害を起こしたりすることもあります」
猪子記者
「沖縄県では去年、レプトスピラ症の集団感染が発生しています。県によると10代の男性5人が西表島の川で泳ぐなどした後に発熱や頭痛を訴えて入院。このうち4人が、レプトスピラ症と診断されました」
「また、一昨年には詳しい感染経路は分かっていませんが、八重山保健所管内に住む70代の男性が、レプトスピラ症で亡くなった事例も報告されています」
刈川くるみキャスター
「死に至る可能性もあるということですよね。川だけでなく土も汚染されている可能性があるとなると、身近ですし、自分で見分けるのは難しいなと思います。私たちにできる対策は何かあるのでしょうか?」
猪子記者
「松本教授によると、クリプトスポリジウム症はとにかく川の水、汚い水を飲まないように気をつけるしかないということです」
森アナウンサー
「川の水を手ですくって飲むというシチュエーションはあまりないと思いますが、川で泳いだり遊んだりしていて、ちょっと口に入ってしまうことはありますよね。となると、なかなか防ぐのは難しいと思いますが…」
猪子記者
「とにかく口に入らないように気をつけるということです。子どもらにも『口に入っても飲み込まないでね』と声をかけるなど、意識していきたいですよね」
鈴江アナウンサー
「事前に言っておくのも大事ですね」
猪子記者
「一方、レプトスピラ症は水や土にいる菌が目・鼻・口の粘膜などから侵入します。また、傷があるとより入りやすいということです。そのため水を飲み込まないだけでなく、川遊び中にケガをしないように注意も必要です」
「沖縄県は、川遊びをするときはヘルメット・グローブ・長袖のラッシュガード・マリンブーツなどを着用し、肌の露出を最小限にして菌が入りやすい傷を少しでも作らないよう、呼びかけています」
「そして、感染対策として川から上がったらなるべく早くシャワーを浴びるなどし、全身をきれいにした方がいいということです」
■川で遊ぶときと遊んだ後の対策を
鈴江アナウンサー
「夏休みに、ちょうど滝で水遊びをしてきました。海と違ってベトベトしないので、その後そのままにしてしまっていました」
「シャワーを浴びる施設なども周りにないかもしれませんが、プロテクターをするなど、より準備をして川遊びをしに行った方が良さそうですね」
森アナウンサー
「体調に変化があったら、すぐ受診ですね」
猪子記者
「たとえきれいに見える川でも、感染症のリスクはあるといいます。遊ぶとき、遊んだ後の対策をしっかり行うように気をつけていきたいですね」
(2024年8月21日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)