奥能登豪雨も温暖化の影響か? 2024年の気象災害、温暖化がない世界ではどの程度だったか
過去最も暑い1年になった2024年。産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える世界目標を上回るとの見通しも。国内でも8月の台風10号、9月の奥能登豪雨では大きな被害となった。仮に温暖化がなかった場合、災害の規模はどの程度だったのだろうか。
■+1.5度の“臨界点”が近づく…観測史上最も暑い年に
産業革命前からの、地球の気温上昇を1.5度に抑える──
「パリ協定」で200か国近くが合意した目標だが、EUの研究機関によると、今年の平均気温は、これを初めて上回る見通しだ。一時的な自然要因もあり、協定が破られたことにはならないが限界は近い。たかが「1.5度」の差。しかし、この数字を超えると影響が連鎖し、後戻りのできない“臨界点”とされる。
こうしたなか、2024年の日本の平均気温は、この120年あまりで過去最高を更新する見通しとなった。異常な高温ともいわれた昨年の記録をさらに大きく上回り、平均差はプラス1.64度となった。(12月25日に発表された速報値)
今年日本を襲った気象災害にも温暖化の影響が及んだとされる。実際のところ、その“度合い”はどの程度だったのか。
■能登の豪雨は雨量15%増加
9月21日、大地震からの復興途上にあった石川県能登地方で、線状降水帯が発生。輪島市などで1時間の降水量が観測史上1位を更新する記録的な大雨となり、川の氾濫で多くの人が犠牲となった。
気象研究所は、この奥能登豪雨も温暖化による影響で激しいものになった可能性があると発表した。シミュレーションでは、豪雨災害が発生した時の、9時間の総雨量を、現実に近い形で再現した。
さらに、仮に温暖化がなかった場合も再現。日本周辺の気温・水温について、温暖化前から上昇した分を差し引いて再現した。
今年の日本近海は「海面熱波」ともいわれる高温となった。日本近海の年平均海面水温の平年差は1908年の統計開始以降で過去最高に。海面の温度が高ければ高いほど大気中に多くの水蒸気が供給される。それは山地の多い能登地方の地形と相まって、積乱雲を次々と発生させた。結果、奥能登豪雨では、温暖化がなかった場合と比較して15パーセントほども雨量が増加していたことが分かった。
同様の手法で、7月下旬に山形県などで大雨特別警報が出された豪雨についてもシミュレーションを行ったところ、雨量が20パーセント以上も増加していたという。
■より強烈な台風が生まれやすくなる?
さらに、高い海水温が生み出す、暖かく湿った空気は、台風の勢力をより激しくするという。
ことし8月に、九州南部を襲った台風10号。数十年に1度という危険なレベルの強さで台風の接近が予想される際に出される「台風特別警報」も発表された。
イギリスの「インペリアル・カレッジ・ロンドン」の研究チームのシミュレーションによると、温暖化など気候変動の影響がないと仮定したケースでは、台風10号のような現象がおこる確率は10年間でおよそ4.5回だった。これが、気候変動によっておよそ5.7回に増え、2割以上高まった可能性があるとしている。
また、台風の最大風速も、7.5パーセント強くなった可能性があるとした。
■“温暖化”か“自然要因”か
一方で、人為的な温暖化と、一時的な自然要因を分けるのは難しい。
異常気象分析検討会で会長を務める、東京大学の中村尚教授によると、日本の南岸を流れる暖かい海流=黒潮からの流れが、顕著に北へ蛇行したことも、今年の海面水温が高かった要因だという。これは、温暖化が顕在化する前から、気温や水温を変動させてきた要因でもある。
一方、温暖化の影響がある程度含まれていることも間違いなく、2つの要因が重なることで、昨今の異常気象が起きているとする。
中村教授は「影響は短期間で収まるものではなく、2025年以降もしばらくは平年よりも気温や水温が高くなる確率が高い。そうなれば、今年と同様な状況となる可能性が少なくない」と話す。
■2025年も災害に注意
「1.5度」の限界が近づく世界。
2025年も気象災害は避けて通れないかもしれない。ハザードマップの確認など、いかに日頃から"命を守る準備”をしているかが重要だ。