ピットブルで大ケガ…犬の「かみつき事故」どう防ぐ? 条例ある自治体も… 年間4000人以上が被害【#みんなのギモン】
コロナの外出自粛をきっかけにペットブームが続いています。一方で、トラブルもあとを絶ちません。中でも深刻なのが「飼い犬が他人にかみつく事故」です。環境省の調査では、2021年度は年間4000人以上が被害にあっています。
日本テレビの情報提供サイトに、ショッキングな内容ですが、次のような投稿をいただきました。
「愛犬と一緒に散歩をしていたら、走ってきたピットブルに愛犬がかまれて死んでしまいました。許せません」
この方とメールでやりとりしましたが、家族の一員を失い言葉少なに「その場所に花を添えたい」と記されていました。この投稿には「ピットブル」という犬種について書かれていますが…
●ピットブルとはどんな犬?
●事故のリスク どう回避
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
ピットブルとは、どういう犬なのでしょうか。
上の写真はピットブルのひとつ「アメリカン・ピット・ブル・テリア」です。屈強な体に、顔つきも印象的です。もともとアメリカで闘犬として誕生しました。特徴のひとつが、アゴから首にかけてが太く発達していて、ほかの犬種よりもかみつく力が圧倒的に強いんです。イギリスなどはピット・ブル・テリアを飼うこと自体禁止しています。危険な行動に出る可能性があるということです。
これまでピットブルの事故は、ニュースにもなってきました。今年6月、香川県観音寺市で男性が家で飼っていたピットブル2頭が路上に逃げ出し、近所に住む女性が手や足をかまれて入院する大ケガをしました。
2020年5月には、千葉県銚子市で飼われていたピットブルが逃げ出し、近所の女性がかまれて全治40日の大ケガをしました。そして女性が抱いていたペットの犬もかまれて死にました。
ピットブルがなぜニュースになるのか。それは、大ケガをするからです。
■パンク町田さんに聞く…ピットブルは攻撃的な犬なのか?
ピットブルは、そんなに攻撃的な犬なのでしょうか。日本社会福祉愛犬協会の顧問で動物研究家のパンク町田さんを訪ねました。連れ出していただいたのは、オスのアメリカン・ピット・ブル・テリア。カメラを見るや、尻込みするような様子もありました。
日本社会福祉愛犬協会顧問 パンク町田さん
「おとなしいですよ」
――表情が柔らかいですね。触ったら怒るかな。
パンク町田さん
「怒らないよ。怖がって逃げることはあっても、怒ることは100%ない」
そこで「こんにちは」と声をかけ、そっとなでました。おだやかで愛らしい表情をしています。
――ピットブルの魅力は?
パンク町田さん
「かわいいところ。フォルムもかわいいじゃないですか。人の良さそうな顔で」
次に町田さんが、別の1頭を連れてきました。息も荒く、さきほどの1頭とは全然違う様子です。
パンク町田さん
「同じピットブルでも、血統によってこんなに性格が違う。服が汚れても構わなければ、なでてください」
――大丈夫ですか?
パンク町田さん
「陽気なだけで、凶暴なわけではない」
「おまけ君」という名前の元気なピット・ブル・テリアでした。
――やっぱり慣れないと怖いです。
パンク町田さん
「でもこれ(息が荒く元気な様子)を、もしプードルがやっていたらかわいいと言うでしょ。ピット・ブル・テリアがやっているから怖いと。でもやっていることはプードルと一緒なんですよ。ピット・ブル・テリアといっても、血統が違うと全然違うんで、知識のある人から購入して、知識のある人にトレーニングを教われば、何も危険はない」
取材した時は「危険性を感じる」ことはありませんでした。それでも事故は起きています。そもそも、誰もが飼える犬なのでしょうか。
そこで、ピットブルを飼うことに規制があるのかどうか、調べてみました。すると日本では「飼ってはいけない犬種」はありませんでした。しかし札幌市、水戸市、茨城県、佐賀県は、条例でルールを定めています。
上は茨城県のポスターです。かみついた場合に重大な事故になる可能性がある犬を「特定犬」としています。秋田犬や土佐犬、ドーベルマン、ピットブルなど8つの犬種です。これ以外にも個別に危険だと判断される犬も対象です。対象になると、完全に囲まれた頑丈な「おり」で飼うこと、散歩に連れ出しても他人に近づけないことを義務づけています。
こうした自治体の担当者に聞くと「危険な犬種だというレッテルを貼るつもりはない」「実際に重大事故が起きたのを受けての措置」と話していました。
このような条例があると安心ですが、一部の自治体にとどまっています。犬に対する好みも人それぞれです。だからこそ、飼い主の自覚が大事です。
では、事故のリスクをどう回避できるのか、専門家に聞きました。
獣医師の奥田順之さん(人と動物の共生センター代表)
「全世界的にピットブルは、ほかの犬種に比べて事故が多いのは事実。急変して攻撃するリスクは高く、大型犬のため被害も大きくなる。しかし、全てのピットブルが必ず攻撃するわけではなく、個体差は大きい。飼い主がどう管理するかにも安全性は大きく左右される」
獣医師の井本史夫院長(井本動物病院)
「ピットブルはいつ何時、攻撃的になるかわからず、危険ではないという保証はありません。いったん攻撃的になると興奮の度合いによっては制御するのが困難になる。トレーニングして飼い主がしっかりコントロールできなければ、飼うべきではない」
では飼い主は、犬をどう育てていくのが適切なのでしょうか。東京・江戸川区のTCA東京ECO動物海洋専門学校で、トレーナーとして生徒たちに教えている安齋裕己さんに話を聞きました。
TCA東京ECO動物海洋専門学校 安齋裕己トレーナー
「どんな時でも呼んで戻ってくることができれば、攻撃的な時でも我慢する気持ちがでてくるはず。力ずくで止めるんじゃなくて、犬の意思で我慢しなくちゃいけない、呼ばれたら戻ってこなくちゃいけないとか、遊びたいけどハウス入らなくちゃいけないとか、そういうことを教えることによって、かなりコントロールできる」
そして、かみつき事故を防ぐためには、飼い主ではない方も注意が必要です。
パンク町田さん「どんな犬種であっても、人の犬を勝手に触ってはだめ」だと話しています。その犬の性格や性質もわからないのに「かわいいから」といきなり触るのは危険です。そして「飼い主に『触っていいですか』と、きちんと断ってから触るべき」だと話していました。
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人と犬がともに暮らす生活は、長い歴史があります。犬の行動をしっかり理解するべく努力することが、管理する側の人間に求められています。
(2023年10月27日午後4時20分ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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