金メダリスト支える “車いす”の秘密【キキコミ】
◇ ◇ ◇
パリパラリンピック車いすテニス男子シングルス史上最年少の18歳で金メダルを獲得した小田凱人選手。激闘を制した瞬間、車輪を外して赤土に「ダイブ」した場面、印象に残りました。今回のパラリンピックで日本は14個の金メダルラッシュとなりましたが…
小田凱人選手、そして、車いすテニス女子ダブルスの田中愛美選手。車いすラグビーの池崎大輔選手。こちら3人の金メダリストが使用している「車いす」。実は「同じメーカー」が開発したものなんです。(※池崎選手は日常用)
金メダリストを支える車いすの「秘密」を生みの親である橋本裕司さんに聞きました。
〇櫻井
「契約する3選手全員が金メダル。おめでとうございます!」
〇橋本裕司さん
「こんなうれしい日が来るなんて思ってもみなかったので本当に感無量です」
静岡県浜松市にある橋本エンジニアリングは1968年創業。
競技用車いすの開発を始めたのは、いまから7年前のことだったそうです。
〇櫻井
「橋本エンジニアリングの競技用の車いすはどういった特徴があるんでしょうか?」
〇橋本裕司さん
「マグネシウムに着目してマグネシウムを使った軽い車いすを作ろうと思ったんですね。マグネシウムというのは非常に強い材料なので軽いだけではなく非常に剛性の高いボディーを作ることができます」
想像よりも軽く…男性や力のある人が持てば片手で持てるのでは(番組ディレクター)
〇櫻井
「ほかの企業も真似するんじゃないかと思いますけど難しい技術?」
〇橋本裕司さん
「強い材料なので曲げたりすることが非常に難しいんですね。力ずくで曲げてしまうとバキンと割れてしまう。割れないようにきれいなカーブで成形する。これが非常に難しいですね」
一般的な「アルミ製」の車いすは重いもので約20キロあり、車いすテニスの競技用ですと約15キロだといいますが、小田選手の「マグネシウム製」車いすは11キロ。この4キロの差は競技の世界では大きいといいます。
丈夫で、軽く作れるのがマグネシウムの特徴ですが、「曲げたり、つなげたり」する加工が非常に難しいということで、元々「金属加工」のメーカーである橋本エンジニアリングと静岡・浜松地区の「町工場」が結集して開発したのが「マグネシウム製車いす」の技術なんです。
この丈夫で軽い車いすと小田選手との出会いは、小田選手が12歳の時でした。
〇橋本裕司さん
「すごいジュニアの男の子がいるからという話をいただいて。勝ちにこだわる思いが映像からひしひしと伝わってくる。この子にかけてみようかなと。彼に『うちの車いすに乗ってくれませんか』と声をかけさせていただきました」
〇櫻井
「6年前の時点でこのような未来は思い描いていましたか?」
〇橋本裕司さん
「思ってもみませんでしたので私の気持ちが追いつかないです。(出会ったころはメディアなどで)『障害がある子どもたちのヒーローになりたい』と言っていましたね。今は違うみたい。『障害がある子も健常者の子もすべての子どもたちのヒーローになりたい』という目標に変わっていますね」
小田選手、金メダル獲得から一夜明けた会見ではこうおっしゃっています。
「僕はほとんどの試合が年上の選手。でも、子どもが大人に勝つって面白いと思うし、(見ている)子どもたちも“俺もいけるんじゃないか”って思ってくれるかもしれない。 気持ちがあれば絶対、夢がかなうと思う」
(9月9日放送『news zero』より)