ステッカーで家族のもとへ…認知症に備える
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。敬老の日の21日は「認知症に備える」をテーマに日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。
【認知症で行方不明 2年連続1万人超】
先週から巣鴨のとげぬき地蔵では、警視庁による特設の「身元不明相談所」が開設されている。これは毎年9月に行われているものだが、相談所では、行方不明になっている親族や、認知症などで行方のわからない高齢者についての相談に対応している。
警察庁によると、去年1年間で認知症が原因で行方不明になったとして全国の警察に届け出のあった人は1万783人と2年連続で1万人を超えた。このうち168人については、去年の年末までには行方が分からなかったという。
【QRコードも…自治体の取り組み】
こうした現状を受けて、多くの自治体では、認知症の高齢者で行方不明になった人を早く家族のもとへ帰す取り組みが進んでいる。
例えば、埼玉県ふじみ野市が今年7月から導入した「ひとり歩き高齢者早期発見ステッカー」。これは黄色いシールで、認知症で一人歩きするおそれのある高齢者について、必要な書類を市に提出すれば、無料で配布される。靴などに貼っておけば、高齢者を保護した際、この番号からすぐに身元の確認ができる仕組みになっている。
東大阪市でも今年2月から同様のシールを導入しているが、QRコードがついていて、このQRコードを読み取れば、身元確認できる仕組みになっているのが特徴だ。東大阪市によると、シールの導入で登録者も増え、早期の身元確認につながった事例もあるという。
いずれも、一人歩きをさせないのではなく、一人歩きをしても、早く家族のもとに戻れるような地域と連動した取り組みと言える。
【確度9割超…アプリで認知症チェック】
日本では、認知症とその予備群とされる人はおよそ800万人にのぼり、65歳以上の高齢者の4人に1人と推計されているが、認知症と診断されることに抵抗を感じて受診しない人が多いという。
そんな中、先月、認知症の疑いがあるかどうかを簡単にチェックできるアプリが登場した。東京・大田区の3つ医師会が関わって作ったもので、9割以上の正確さで判定できるという。
アプリは無料でダウンロードでき、家族などの身近な人が、対象者の年齢や性別を入力して、7つの質問に答えるだけでチェックができる。質問の一例を見てみよう。
(質問例1)まず、対象者が複数の仕事・作業を並行して行えるかどうかを問う質問。質問にはイラストがついていて、おじいさんが家の2階に上着をとりに行こうとする時、「おじいちゃーん、ご飯だよー」と声をかけられ、「わかった、すぐ行くよ」と答えると、2階に何をしに行くのか忘れてしまった。
(質問例2)お店のレジなどで、138円や432円など細かい請求におじいさんは1万円札や5千円札で支払いをして、家族は小銭が使えないのかなぁと心配する。
こういった質問に、「いつもある」「ある」「たまにある」「ない」から答えを選ぶ。
こうして7つの質問に答えると、認知症の疑いがあるか、ないかの判定が出て、疑いがある場合は、地域の医療機関などの紹介ページにつながる仕組みになっている。
親が認知症ではないかと不安に思っている利用者からは、定期的に何度もチェックできるので安心できたなどという声が届いているという。
このアプリは、「認知症に備えるアプリ」という名前なのだが、開発に関わった高瀬医師は、「認知症は早期発見で進行を遅らせることができるので、判定結果を見て終わりではなく、その結果を家族らと話し合って、早期の受診につなげてほしい」と話している。
【きょうのポイント】
きょうのポイントは「後悔しないために」。家族などの近しい人が認知症だと認めることは、辛く、なかなか難しいことだと思う。しかし、その現実と向き合い、徘徊(はいかい)など症状が重くなる前に受診するなどして、大切な家族を後悔のない対応で守りたいものだ。