最高裁「介護実態など総合的に考慮し判断」
認知症の人が徘徊(はいかい)中に起こした列車事故をめぐり、介護していた家族に賠償責任があるかどうかが争われた裁判で、最高裁は1日、「家族に賠償責任はない」との判決を言い渡した。
この裁判は2007年、愛知・大府市で認知症の男性(91)が、妻がうたた寝をした隙に自宅を出て徘徊し、JR東海の電車にはねられ死亡した事故をめぐり争われているもの。
JR側は、事故で電車が遅れ、振り替え輸送の費用などがかかったとして、男性の妻と長男に損害賠償を請求。2審の名古屋高裁は「認知症の夫を見守る監督責任があった」として、男性の妻(当時85)に約360万円の支払いを命じていた。
1日の判決で最高裁は妻について、「認知症の人と同居している配偶者だからといって、ただちに監督義務者になるわけではない」と指摘。また、男性の長男についても、「20年以上同居しておらず、監督義務者には当たらない」として、今回のケースでは「家族に賠償責任はない」との判決を言い渡した。
男性の長男「大変温かい判断をしていただき、心より感謝申し上げます。良い結果に父も喜んでいると思います」
一方で、最高裁は「監督義務者に当たるかは、同居の有無や介護の実態などを総合的に考慮して判断すべきだ」としていて、事案によっては介護する家族が賠償責任を負う可能性がある。