新しいタイプの大学?“人材”教育のミカタ
中央大学法科大学院・野村修也教授が解説する「会議のミカタ」13日のテーマは「新しいタイプの大学ができる」。
文部科学省で今月10日、職業において、高度で専門的な知識や技能を持った人材の養成を目的とした新しい高等教育機関の制度化に関する会議が開かれた。政府は、こうした新しいタイプの大学を2019年度にも創設したい考え。
いまの大学では、幅広い教養教育と専門的な研究が中心に行われていて、技能教育については明確な位置付けがない。このため、高度な専門知識や技能を持った人材を育てにくい。
大学によっては、企業に行って一定期間、職場体験をさせるインターンシップ制度を、単位認定を行う授業科目として取り入れているところもある。しかし、2014年度の調査によると、実際にこうした制度を利用した学生の割合は、大学で2.6%と非常に少ない数字となっている。
一方で、専門学校は、学校の特性上、技能教育を重点的に行っているが、専門的な技能習得に特化しているため、教養教育に関しては大学よりも少ない。また、大学とは異なり、卒業しても学位はもらえないといった問題がある。
■“高度な人材教育”注目のワケ
いま、なぜ高度な専門知識や技能を持った人材の教育が注目されているのか。新しい高等教育機関の創設は、日本再興戦略と言われる安倍内閣の成長戦略に位置付けられている。つまり、高度な専門知識や技能を兼ね備えた職業人こそが、いまの日本を救う成長のカギを握ると考えている。
この点について、会議の部会長を務める筑波大学・永田恭介学長は、次のように語っている。
「大企業は当然のことながら、中小企業も、実はいきなり国際社会につながっているんです。本当に世界に直結できるかというと、まだやっぱり知識も技術も技能も足りない」
■求められる人材は?
要するに、いま、日本に求められているのは、世界に通用する幅広い教養と、高度な技術や技能を併せ持った人材というわけだ。
具体的には、例えば、IT分野では新たなアイデアの提案なども行うプログラマー、観光分野ではサービス向上の先導役となる接客のプロ、農業分野では、農産物を生産するだけではなく、加工や販売も手がける生産者などが期待されている。
ただ、高校を卒業する段階で、これだけ具体的に進路を考えていくのは問題もあると言われているので、学生・生徒の立場に立ってよく考えなればいけないだろう。
■学位の考え方を変える
一方で、大学側の制度改革のカギとなるポイントはあるのか。それは「学位の考え方を変える」。
学位とは専門の学問分野で卓越した能力などに与えられる称号のことで、これまでは大学での専門教育を受けるということが学位の基礎だと考えられてきた。従って、大学では学位が与えられるが、職業教育を中心とする専門学校では学位が与えられなかったという問題があった。
しかし、新しい制度改革をすることによって、幅広い教養を教育する大学と専門的な技能を育てる専門学校の特徴が融合した新たな教育機関ができて、その卒業生が学位を取れれば世界で活躍するチャンスが広がる。
しかし、「教育の担い手が確保できるのか」「大学の役割である研究をないがしろにしていいのか」といった声が大学側に根強いのも事実なので、このあたりをしっかりと検討していく必要があるだろう。