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「蚊に注意!夏のジカ熱対策」のミカタ

2016年6月17日 19:05
「蚊に注意!夏のジカ熱対策」のミカタ

 中央大学法科大学院・野村修也教授が解説する「会議のミカタ」。17日のテーマは「蚊に注意!夏のジカ熱対策」


■人間の生命に危険を及ぼす生き物
 厚生労働省で10日、感染症の予防や治療などについて有識者が話し合う「第17回 厚生科学審議会感染症部会」が開かれた。

 この中で、蚊が媒介する「ジカウイルス感染症」、いわゆる「ジカ熱」について現状の報告があり、本格的な夏を前に対策を強化していくべきとの意見が出た。

 あるデータによると、人間の生命に危険を及ぼす生き物の1位は「蚊」。マラリアなど様々な感染症のウイルスを媒介し、年間72万5000人もの命を奪っている。(Copyright2010GatesNotes,LLC)

 蚊が増える時期を前に流行を防ごうと、政府は今月を「夏の蚊対策広報強化月間」として、自治体などにパンフレットを配布している。パンフレットには大きく「蚊」「ジカ熱」と書かれいて、注意喚起を図っている。

 日本国内でのジカ熱の感染例はないが、今年2月以降、中南米に渡航していた人など7例の感染が確認されている。実際、ジカ熱の流行地域は中南米の国々に集中している。

 しかし、実は東南アジアも流行地域になっていて、年間100万人以上の日本人が訪れるタイでも既に国内感染者が出ているほか、先月、ベトナムやフィリピンも新たに流行地域に加わった。外務省も渡航にあたり、感染症危険情報を出している。


■妊婦は注意を
 ジカ熱は2日から12日ほどの潜伏期間の後、発熱や頭痛などの症状が出ると言われているが、症状は意外に軽い。しかも、8割の人には症状が出ないとされている。

 しかし、やはり注意が必要なのは妊婦だ。WHO(=世界保健機関)は今年2月、「妊婦が感染した場合、胎児が頭部の小さい状態で生まれてくる『小頭症』などを発症する懸念がある」として、緊急事態を宣言した。

 感染症に詳しい医師は、感染した妊婦から生まれてくる赤ちゃんの1%がジカ熱に感染し、妊娠初期に感染すると赤ちゃんが小頭症を発症するリスクが高まると指摘している。

 例えばブラジルでは、2010年から2014年までは、小頭症と診断されたのは年間150例前後だった。しかし、去年10月から今月初めまでの間に、ジカ熱と関連のある小頭症と確定したものが1551例報告されるなど、急激に増えている。


■流行阻止は自己防衛から
 日本国内で感染した人はまだいないが、これから蚊が多い季節を迎えるので、個人で対策しておくに越したことはない。

 対策の一つは「蚊を発生させない」。蚊は、植木鉢の受け皿や水が入ったままの空き缶など小さな水たまりに産卵する。周りを点検し、そうした場所を減らしていくことが必要だ。

 「服装に注意する」ことも有効な対策だ。感染症流行地や蚊が多い場所では、長袖と長ズボンなどで肌の露出を少なくすること。蚊は色の濃いものに近づく傾向があるので、白など薄い色の服を選ぶことも有効だ。

 さらに、ジカ熱は蚊だけではなく、性行為によって人から人へ感染することも疑われている。

 国立感染症研究所は16日、新たな指針を発表、母子感染などのリスクを減らすため、流行地から帰国した男女はたとえ発症していなくても、最低8週間は性行為を控えることなどが必要だとしている。

 政府は先月から、感染を心配する妊婦からの電話相談の窓口を全国の自治体に設置している。不安なことがある場合は、各自治体に問い合わせてみるとよいだろう。