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死に至るケースも…床ずれ治療・予防法

2016年9月8日 18:35
死に至るケースも…床ずれ治療・予防法

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。8日のテーマは「褥瘡(じょくそう)=床ずれ」。諏訪中央病院・鎌田實名誉院長が解説する。

 シドニーパラリンピックで銅メダルを獲得した車いすバスケットボールの上村知佳選手が先週末、ある学会のシンポジウムに登場した。

 褥瘡、いわゆる「床ずれ」に関して治療や予防などの研究が発表される日本褥瘡学会学術集会だ。今月2日と3日に行われ、医療や介護の関係者など約1万3000人が集まった。

 車いすと床ずれの関係についてのシンポジウムで、上村選手は床ずれの怖さについて次のように話した。

 「ケガで入院している時に、同じバスケット選手が褥瘡で入院していました。早く退院して一緒にバスケットしようねと言っていて、 その1か月後に敗血症で亡くなったんですね。その夜のことは本当に忘れられません」

 床ずれというのは、一般的に“寝たきり”の状態で、体重で圧迫されている場所の血流が滞ることで、お尻などの皮膚の一部が赤みを帯びたり、ただれたりすることを言う。


■健康な人も、どこにでもできる可能性

 ただ、健康な人でも栄養状態や皮膚の状態が悪いと床ずれができる可能性がある。上村選手のようなアスリートでも車いすを利用している人は座っている時間が長くなり、お尻やかかとなどに圧力がかかって床ずれができることがある。

 床ずれはお尻だけでなく、後頭部、肩甲骨、かかとなど、寝た状態で骨が皮膚を圧迫しやすいところであれば、体中どこにでもできる可能性がある。

 また、状況によっては、わずか数時間で床ずれができることがある。肌が汗などによってふやけていたり、むくんでいたりして肌が弱っている場合、圧迫だけでなく摩擦などでも2、3時間で床ずれができるとも言われている。

 通常、私たちは眠っている間など、無意識のうちに寝返りをうつことで床ずれを防いでいる。寝ている時だけでなく、長い時間、同じ姿勢で椅子に座っている時などでも、姿勢を変えたり、お尻を浮かせたりして、自然と同じ部位を圧迫しないようにしている。


■床ずれから感染、死に至るケースも

 ただ、体勢を変えずにいると、体重で長い時間圧迫された皮膚の細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり、床ずれができる。ひどい場合には、筋肉や骨にまで達してしまう。さらに、その部分が細菌に感染し、全身に回ってしまうと敗血症となり、死に至るケースもある。


■予防法は?

 お尻など特に圧力がかかりやすい部分は、清潔にしておくように心がける。また、お風呂に入って温まって血行を良くすることも予防につながる。寝たきりの方は、デイケアセンターなどの入浴サービスを利用するのもいいと思う。

 自分で寝返りをうてない方は、家族の方などが寝返りをうたせるなどして体がずっと同じ体勢にならないようにしなければならない。だいたい2時間おきに体勢を変える必要がある。

 ただ、2時間ごと体勢を変えるというのは家族にとって大きな負担にもなる。そこで、床ずれ対策のマットも開発されている。

 学会会場の企業展示ブースにあった「床ずれ対策マット」を取材した。これは、マットレスに入っている空気を自動で少しずつ動かすことで体勢を変えられるというもの。

 介護保険を使ったレンタルが可能で、月800円ほどで借りることができるという。こうしたベッドなどを利用できると家族の負担も軽くなる。


■チェックを欠かさない

 「床ずれ」は悪化させてしまうと怖い病気なので、早期発見が何より大切だ。自分の体や介護している人の体に赤みがある場合、その部分が圧迫されない姿勢をとって、30分後、赤みがひいているかどうかを確認してみてほしい。

 赤みが残っていれば床ずれの可能性があるので、その場合は皮膚科で診察を受けることをオススメする。