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“仮設”でも近所付き合いを…鎌田實氏提言

2016年9月29日 18:32
“仮設”でも近所付き合いを…鎌田實氏提言

 キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。29日のテーマは「地震で認知症に…」。諏訪中央病院・鎌田實名誉院長が解説する。

 鎌田さんは先日、今年4月に震度7を2回観測した熊本県益城町を訪れた。まもなく、地震発生から半年を迎えるが、被災地では地震による直接的な被害だけでなく、地震がきっかけとなって認知症を発症するなどの健康被害も出ている。

 鎌田さんが気になる話を聞いたのは、益城町にある赤井仮設団地でのこと。団地に住む森本キヌ子さん(86)は、4月の地震がきっかけで夫(96)が認知症になってしまったという。

 熊本地震後、県の認知症コールセンターには28日までに地震に関係する相談が97件寄せられ、そのうち約8割にあたる74件が「地震後、認知症が悪化した」という内容だったという。

 そこで鎌田さんは、益城町にある益城病院(精神科)へ話を聞きに行った。

 鎌田さん「今回の震災をもとにして(認知症を)発症したり、悪化したりという例は?」

 益城病院の看護師・東ゆかりさん(40)「こちらで被災されて、ライフラインが止まって長崎の佐世保の方に避難された。(その人は)環境の変化によって徘徊(はいかい)が始まって、場所が分からなくなって、警察の方にお世話になって…」

 益城病院では熊本地震の後、精神科の外来患者にストレスをかけないようにと、自宅で診療する、いわゆる「在宅診療」を専門に行うチームを立ち上げた。

 益城病院の在宅診療部部長代理・増田なみ子さん(60)「(患者が)ガタガタの所を歩いて診察に来られる。雨は降るし、泥がついた感じもあって、こういう状況で来させたらいけないと。在宅診療部を作って、在宅(の患者)を支えようと」

 鎌田さん「訪問看護で少しでも(患者は)安定しますか?」

 東さん「顔なじみのスタッフが行くと喜んでお話もされて、なんか落ち着きますっていう感じで。確実な服薬もできて、症状も落ち着いてきているところもあります」

 地震でストレスを受けているのは精神科の患者だけではない。被災したすべての人に心がけてほしいことがあると、益城病院の犬飼邦明理事長は語る。

 犬飼理事長「僕が言っているのは、まず日常性を取り戻しなさいと。被災前に自分がやった遊び、楽しみ、休養など、今はやっちゃいけないと思い込んでいる。『休養を楽しめる自分を取り戻しなさい』と。日常性を戻す中で、これからのことが見えてくるんじゃないか」


■“仮設”でも近所付き合いを

 地震からまもなく半年、被災者は本当に心身共に疲れている。それまで3世帯で暮らしていた家族もバラバラに避難し、環境が大きく変わってしまっている。

 できるだけ、仮設住宅でもみんなで協力して生きていける環境作りをしていかなければならない。そのためには、仮設住宅でも近所付き合いを大切にして、みんなで生きやすい、生活しやすい環境作りが大切なのではないかと思う。