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経済効果6兆円?「大阪万博」誘致に問題は

2016年10月3日 19:32
経済効果6兆円?「大阪万博」誘致に問題は

 先週、政府が2025年の国際博覧会(万博)を、大阪に誘致するために立候補にむけた調整を進めていることが分かった。大阪で万博が開かれるとすれば半世紀ぶりとなる。実現すれば経済効果は6兆円とも言われる一方で、「跡地」などの課題もある。


■「あの活気をもう一度」

 複数の国が参加して行われる万博は、一般の博覧会とは違って、国際博覧会条約という国際法に基づいて、パリにある国際事務局に届け出て、承認される必要がある。今回、誘致が認められれば、日本では6回目の万博開催となる。

 これまで、大阪府の松井知事が自ら東京に赴き関係閣僚に直接会って、「大阪に誘致を」と熱心に政府に働きかけてきた。こうした中、政府も前向きになり、先週の本会議の代表質問では安倍首相は「万博は開催地のみならず、我が国を訪れる観光客が増大し、地域経済活性化の起爆剤となる」と述べた。

 つまり、観光客を増やして経済を活性化させよう、というわけだ。しかも、大阪万博が実現すれば、「1964年の東京五輪→1970年大阪万博」の時と同じで、「2020年の東京五輪の→2025年大阪万博」という流れになるので、政府としては当時の高度経済成長期の活気をもう一度、という思いもあるようだ。


■実現すれば6兆円の経済効果

 確かに、大阪万博などをきっかけに日本が豊かになっていったイメージはある。芸術家・岡本太郎さんの「太陽の塔」で有名な大阪万博は、半年にわたって開かれ、あわせて6421万8770人が来場。世界77か国が参加した。アポロ12号が持ち帰った月の石や、当時最先端の技術の展示が人気で、入場制限する日もあるほど、連日にぎわった。その後も、1985年には茨城県つくば市で、通称「科学万博」が、2005年には愛知県で環境をテーマにした万博「愛・地球博」が開かれた。

 こうした万博による経済効果は、実際どれくらいあったのだろうか。1970年大阪万博のときは、年代などが違うため、一概に今とは比較できないが約4兆9500億円。2005年の愛知万博のときは、約2兆8000億円。そして、今回の大阪万博は、開催前の関連イベントや万博をきっかけに、研究開発が進むことなども含め、全国に波及する経済効果は約6兆円にのぼると見込んでいる。


■跡地にはカジノリゾート構想も

 では、何か問題はないのだろうか。万博を開催するには100ヘクタール以上の用地を確保することが通例のため、それだけの広い土地を万博後にどう活用するのかは、考えなくてはいけない。

 こうした跡地問題について、大阪府は、カジノを含む統合型リゾートの誘致を同時に行うことで万博の跡地を活用しようとしているが、これについては与党からも慎重意見があり実現するかはまだ不透明だ。また、“東京オリンピックのように会場建設や運営にかかる費用がふくらむのではないか”と地元では金銭面でも懸念の声が上がっている。


■「憲法改正」を見据えた思惑も?

 それでも今万博を開催しようという声が高まってきたのは、どうしてなのだろうか。実は、政府としては、今大阪が求める万博誘致を後押しすることで、大阪を基盤とする日本維新の会との連携が深まり、この先「憲法改正」を見据えた時に有利にコトが進むのでは、という、万博とは全く別の思惑もあるようだ。大きなイベントだけに、政治的な思惑も絡んでいる。

 今回のポイントは。「二匹目のドジョウではなく」。東京オリンピック・パラリンピックのあとも経済が落ち込まないよう、大阪万博とセットにというのは、過去に学んだ知恵かもしれない。でも、そのアイデアにおぼれたり、ましてや政局とからめたそろばん勘定が先に立っては、冷静な判断はできなくなるだろう。

 安易に“二匹目のドジョウ”を狙うのではなく、未来にどのような文化を築いていくのか、費用対効果も慎重に見極めて行く必要がある。