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液体ミルク、消費者も実現へ“後押し”を

2016年10月24日 19:47
液体ミルク、消費者も実現へ“後押し”を

 国内で販売されていない乳児用「液体ミルク」について、政府が今後、販売を認めるか検討に入る。液体ミルクは粉ミルクに比べて乳児に飲ませる手間が少なく、育児の負担軽減に向けて期待の声があがるが、課題も残されている。


■欧米では広く普及している「液体ミルク」

 日本では粉ミルクしか製造されていないが、アメリカ、イギリスなど欧米各国では液体ミルクは一般的だ。液体ミルクとは、紙パックからほ乳瓶に移しかえたり、付属の“乳首”をペットボトルにはめたりすれば、そのまま赤ちゃんに与えられる。粉ミルクと違って作る手間がない、というのは便利だ。

 現地価格で150~200円(200ミリリットル)と、粉ミルクの2~3倍高いので、海外でも粉ミルクが主流だが、5か月から1年ほど常温保存でき、無菌処理されていて、衛生面の心配もないと、広く利用されている。


■政府の検討がスタート

 なぜ日本には液体ミルクがないのだろうか。実は、日本には液体ミルクを想定した法令がない。乳製品に関する厚生労働省の省令には乳幼児用の食品について「粉乳」、つまり粉のミルクの規格しか定まっていない。よって、このままではメーカーも液体ミルクの製造に踏み切れないのだ。

 そこで、政府は先週、内閣府の会議で法整備もふくめた検討をはじめると明らかにした。


■「液体ミルク」があれば―

 実際、液体ミルクを求めるお母さんやお父さんたちの声は切実だ。例えば、夜中の授乳のとき、粉ミルクを作る間、赤ちゃんが泣きやまず途方にくれた人は多いだろう。また、外出のときは、赤ちゃんを抱えて、さらにお湯など荷物をたくさん持たなければならなくなる。

 液体ミルクを求める人たちへのアンケートでは「液体ミルクがあったら、精神的にも肉体的にももっと楽に育児ができた」という声がたくさん寄せられた。確かに、液体ミルクならお父さんも赤ちゃんに与えやすそうだ。

 ただ、それ以上に大事なのが「災害時」。災害時には、粉ミルクに必要な水やお湯を十分に使えず、ほ乳瓶を洗うこともなかなかできない。そういう理由から、東日本大震災や熊本地震のときは、海外から液体ミルクが届けられ、とても重宝したという。


■国内製造スタートまでの壁

 今後、国内製造は早くはじまるのだろうか。実は、そう簡単にはいかないのが現実だ。製造がはじまるまでには、まず、メーカーが安全性を調べて、厚労省にデータを提出し、厚労省がそれをもとに法整備をする。メーカーは、研究開発をすすめ商品ができたら赤ちゃんの口に入れるものなので、普通の牛乳などと違って厚生労働相に原材料などについて申請、承認を得なくてはならない。さらに生産設備を整える必要もある。

 それだけに、メーカーはこれまで各社、製造開始には後ろ向きで「今は研究していない」などとしていた。しかし、今回の政府の動きをうけて安全性データの準備をはじめたメーカーもあり、まずは第一歩を踏み出したといえそうだ。


■私たちが声をあげる必要性

 液体ミルクを求めて署名運動を行う主婦の末永恵理さんは「メーカー任せでなく、行政も各省庁が連携するなどして本気で進めるべきだ」と話している。実際、東京都の小池知事は、都で保育施設向け液体ミルクをまとめ買いし、メーカーの生産を後押しする意向を示している。

 今回のポイントは「赤ちゃんの“安心”のために」。先週、鳥取県で大きな地震があった。日本は地震大国なので、液体ミルクがすぐ手に入れば赤ちゃんもお父さんやお母さんも安心だろう。より品質が確かな液体ミルクを広めるためにも、私たちも今、声をあげて、国やメーカーを後押しすることも大切だ。