いじめ過去最多、どう防ぐ?ユニークな試み
学校側がどのくらいいじめの実態を把握しているのか調査の結果がまとまった。昨年度、全国の小学校と中学校、高校が認知したいじめの数が、過去最多となったことが分かった。どうしたらいじめを食い止めることができるのか教育現場を取材した。
■遺族「私みたいな思いさせないで」
2年前に中学1年生だった息子を亡くした父親が27日、文部科学省に提言書を提出した。男子生徒は、同級生から悪口やからかわれるなどのいじめを繰り返し受け、自ら命を絶った。男子生徒の父親は「遊びでやられてたら、たまらないですよ。毎日やられるんですよ」「遺族として、これ以上いじめがおこらないように。私みたいな思いをさせないでくれと」と話す。
■「いじめ」なぜ過去最多に
なくならない「いじめ」。文科省は27日、いじめなどに関する昨年度の調査結果を公表した。それによると、昨年度のいじめの認知件数は約22万5000件。前年度より3万5000件以上増加した。小・中、高校などの認知件数の変化をみると、2012年度から大きく増えているのがわかる。
そのきっかけとなったのが、2011年に滋賀県・大津市で中学2年生(当時)の男子生徒がいじめを苦に自殺したことだ。学校側がいじめを知りながら自殺を防げなかったとし、責任を問われ、早期にいじめを把握しようという動きが広がっていった。
■子供たちが校内をパトロール
独自の方法でいじめに対する取り組みを行っている足立区の辰沼小学校を取材した。休み時間になると、1つの教室に集まる子供たち。おそろいのハチマキをして「いくぞー」というかけ声とともに始めたのはパトロールだ。隊長の「みんなでいじめをなくしましょう」という声に続いて、「いじめをしない、させない、許さない」という元気な子供たちの声が響く。
この小学校では、5年前から児童らが「T・K・R(辰沼キッズレスキュー)」というレスキュー隊を結成して、毎日、休み時間にパトロールを行っている。参加は自由だが、今では全校児童の半数以上が参加しているという。
仲野校長は「気軽に声をかけ合う環境が生まれれば、結果として、いじめにつながらないんじゃないかというのがT・K・Rの発想です」と話す。一方、参加する児童たちも「みんながいるから(いじめを)止めやすいとか、仲間がいるから(いじめをやめるよう)言えるっていう環境を自然と作れるんですよね」と話す。
■企業が提供する「通報」システム
こうした取り組みは学校だけではない。「アディッシュ株式会社」では、ウェブを使った通報サービスを提供しており、いじめを匿名で通報できる。サービスを利用できるのは、このシステムを導入した学校に通う子どもたちだ。パソコンやスマートフォンに、いじめた人の名前やいじめの内容を入力し送信する。
通報はすぐにこの企業に届き、企業の担当者が自殺の可能性を感じたり、被害者や加害者が、明確に書かれていたりする通報は、即座に学校に報告する。担当者によると、夜中や、夏休みなどの長期休みの時に「通報」が使われているケースが増えているという。
文科省は今後も報告を徹底させて、いじめを早期に認知し、事前に防止する対策を呼びかけていく方針だ。