雑談→実証実験へ…向谷実氏考案ホームドア
12月18日、「軽量型ホームドア」という言葉を含んだツイートが大きく伸びました。
近年、ホームからの転落事故が増えているため、鉄道会社はホームドアの設置を進めていますが、ホームドアが設置されている駅は全国9500のうち665駅、わずか7%程度しかありません。
普及が進まない背景の一つに費用の問題があります。例えば、重くがっしりした従来型のホームドアの場合、設置には東京のJR山手線で1駅平均20億円程度の工事費がかかります。
ツイートが大きく伸びるキッカケとなったのは、音楽プロデューサーの向谷実さんが「軽量型ホームドア」を考案したというニュース。向谷さんは1970年代から活動している人気フュージョンバンド「カシオペア」の元メンバーのキーボード奏者です。
向谷さんは「音楽館」という会社を経営していて、音楽制作のほか、熱狂的な鉄道ファンであることから、駅の発車メロディーを数多く作曲していて、運転士を養成するためのシミュレーターの開発などを行っているんです。
「元カシオペアの向谷さんが軽量型ホームドアを考案した」というニュースがネットで話題となっているんです。ネット上では
「鉄道好きとはいえ、実際に考案するのはすごい」
「発車メロディーにしろ、本当にアイデアマン」
「どこまでいくの向谷さん!」
といった反応がありました。
■向谷さんに聞きました
向谷さんはなぜ、この軽量型ホームドアをつくろうと思ったのでしょうか。向谷さんに聞きました。向谷さんが軽量型ホームドアを考えたキッカケは昨年1月、向谷さんが出演するライブに来たJR九州の青柳俊彦社長と雑談したことだったそうです。
青柳社長から「ホームドアを設置したいが、コストがかかる」という話を聞きながら、何となく両手の指を交互させていた時、軽量型ホームドアのアイデアがひらめいたそうです。
向谷さんは昨年9月に軽量型ホームドアの特許を取得し、その2か月後には試作機をつくり、展示会で発表しました。従来型のホームドアより軽いため、ホームの補強工事や設置工事の負担も最小限に抑えることができるということで、展示会で好評だったそうです。
向谷さんは「駅での安全をどう担保するか」ということを常々考えているそうです。視覚障害者の方々にも意見を聞いたそうですが、視覚障害者の方からは「駅に来るのが怖い」という話も出たそうです。全ての人に「駅に行くことが楽しい」と思ってもらえるように、ホームドアの普及に努めていきたいと語っていました。
そして、この軽量型ホームドアは、電車の運転手にもメリットがあるんです。従来型のホームドアは板型になっているため、駅のホームが見えづらいのですが、軽量型ホームドアだとバータイプになっているため、ホームがよく見渡せて、気持ちに余裕を持って運転ができるそうなんです。
JR九州が12月20日、この軽量型ホームドアを設置して実証実験を行うことを発表したんです。設置されるのは、福岡市にある筑肥線の九大学研都市駅で、来年秋以降に実験が始まる予定だそうです。
JR九州との社長さんの雑談がキッカケで、JR九州の駅に軽量型ホームドアが設置されるというのは、向谷さんもうれしかったのではないでしょうか。(解説:デジタル編集チーム 小林整司編集長)