鎌田實氏が紹介“愛”描く注目映画3本
2月は名作映画が立て続けに公開される。様々な「愛のカタチ」を描いた3本を、諏訪中央病院・鎌田實名誉院長が紹介する。
■“愛”と夢と音楽と…
1本目は、アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、主演女優賞など13部門14の賞にノミネートされた「ラ・ラ・ランド」。
【あらすじ】
女優を目指すミアは、ふと立ち寄ったバーでピアニスト・セブと出会う。セブの夢はいつか自分の店を持ち、大好きなジャズを思う存分演奏すること。
やがて2人は恋に落ち、お互いの夢を応援しあうようになる。しかし、セブが店の資金作りのために入ったバンドが売れたことで、2人の愛はすれ違い始める。
鎌田さん「楽しい音楽がふんだんに盛り込まれたミュージカル映画で、ミア演じるエマ・ストーンの歌声は心にしみ込んできやすい。主演のライアン・ゴズリングは代役を立てずに、未経験だったピアノを3か月間かけて習得した。夢や恋愛の高揚感が、見る人を包み込むような映画だ」
■“愛”守る男の戦い
2本目は、愛する人を守ることに命を懸ける兵士を描いた「マン・ダウン 戦士の約束」。「ラ・ラ・ランド」が「夢」なら、この作品は「悪い夢」のような話だ。
【あらすじ】
アメリカに家族を残し、戦場へ向かった海兵隊員・ガブリエル。過酷な任務の中、心の支えは妻と息子の存在だった。
ようやくアメリカへ帰還となったものの、ふるさとは荒廃し、なぜか家族や住民たちの姿も消えていた。
ガブリエルは必死に愛する妻と息子を探し出そうと奔走するが、最後に待っていたのは驚くべき結末だった。
鎌田さん「戦争がどれほどむごたらしい結果を引き起こすのかがわかる。最後の7分は、衝撃の展開が待っている」
■不器用な“愛”貫く家族
3本目は、愛しているのに傷つけあう家族の姿を描いた「たかが世界の終わり」。
【あらすじ】
34歳の人気作家・ルイは12年ぶりにふるさとへ。それは、自らの死期が迫っていることを伝えるためだった。久しぶりの再会に浮き足立つ母と妹とは逆に、素っ気ない態度の兄。
ギクシャクした会話が続き、兄の激しい言動が頂点に達したとき、家族それぞれが心に閉まっていた感情が一気に噴出する。
鎌田さん「これほど不器用な家族はいないのではないかと思うほど、生きるのが不器用な家族が描かれている。“死期が迫っている”“愛している”と告げたいのに、両者とも語れない。家族が全力でぶつかり合い、爆発するが、怒りも、憎しみも、悲しみも、切なさも、全て愛の一部だと気付かせてくれる」
■人は“愛”でできている
いま、AI(=人工知能)が発達してきているが、AIにはそんな人間の不可解な愛は理解できないように思う。紹介した映画は、様々な「愛のカタチ」に触れられるので、ぜひ見てもらいたい。