【エイジズム】年齢による差別「いい年だから…」「若者は」 解消への取り組み…“定年なし”アパレル勤務も
日本テレビが「地球にいいこと、人にいいこと」を考える『Good For the Planetウィーク』略してグップラ。今回は、年齢による差別や偏見を意味する「エイジズム」について取り上げます。このエイジズムをなくし「みんなが生きやすい」社会を目指そうとする企業や学校の取り組みを取材しました。
都内にあるアパレルブランド、Gap。
「こんにちは、ようこそ」
子ども服売り場で接客をしているのは、田中満知子さん、74歳です。この日は、子どもの靴下を買いに来たというお父さんに声をかけていました。
Gap新宿フラッグス店 田中満知子さん(74)
「プレゼントですか?」
お客さん(30代)
「子どもの保育園の」
田中満知子さん(74)
「枚数必要ですね」
お客さん(30代)
「そうなんですよ」
田中満知子さん(74)
「靴下はジャストサイズがいいと思います。大きいとぬげちゃう」
18年、この店舗で働いているという田中さん。
田中満知子さん(74)
「子育ても一段落で、年齢制限がないということ。あと私アパレル経験なんか、何にもなかったんですけど」
全国に約120あるギャップの店舗で働くスタッフの年代は、10代から70代。ギャップではすべての人の個性を尊重するということから、定年制度を設けていません。
お客さん(20代)
「おばあちゃん世代の人。逆に話しかけやすいというか」
お客さん(30代)
「お母さんの時期を経てのサイズ感とかも、よく知っているところでのアドバイスを頂きながらできたので」
田中さんは、常に売り場を動き回り、お客さんと向き合っていました。
田中満知子さん(74)
「『おばあちゃん』と呼んでくれるかわいい女の子がいたり、大切なお客様がいっぱいいらっしゃるので。そんなふうに元気でずっと働きたいなと思ってます」
年齢関係なく、誰もが活躍できる環境。
ギャップジャパン・店舗統括シニアディレクター 峰尾大史さん
「ファストファッションのブランドとして、世間からも受け止められていますが、 若いお客様だけに固執している形ではない。年代に固執して採用活動を尽力する必要もないし、多様性っていうのは、今後も重要視していきたい」
近年、70歳以上まで働くことができる企業も増加。働く年代の幅も広がる中で、年齢に基づく固定観念や差別「エイジズム」が問題視されています。
「エイジズム」について街の人に聞いてみると…
──エイジズム知ってますか?
知らない(37)
「初めて聞きました」
知らない(42)
「聞いたことないです」
知らない(80)
「聞いたことはあるけど、よくわからなかった」
多くの人が“知らない”と答えた「エイジズム」。実は、日常にあふれているんです。
年齢というと…
79歳
「席を譲ってくれる方もいますけど、やっぱり中には『年寄りだからってなんだよ』っていう顔でされることもある」
高齢者への「エイジズム」が思い浮かぶかもしれません。しかし、「エイジズム」は年齢問わず、誰にでも関係があることなんです。
「若いもんは、これだから…」
会社などで、年上の人が年下へ発したこの言葉。街で話を聞くと…
22歳
「高齢層の方ほど、ずばずば『若いもんはこれだから』みたいな…」
年齢が若いというだけで、ネガティブな印象をもれたり、年齢だけで判断され、持っている能力などを十分に発揮できなくなったりする可能性があります。
さらに、家庭内で何気なく言った言葉も「エイジズム」になっていることがあるんです。
例えば母親に対して…
「お母さん、もっと若かったらなあ」
このような言葉も「エイジズム」です。
母(58)
「『お母さん、もっと若かったらな』とか言われましたけど」
娘(18)
「考えがたまに古いな、と思っちゃうときがある」
子どもが親の年齢についてネガティブな指摘をすることも「エイジズム」です。逆に、親が子どもへ年齢を理由に結婚や恋愛を否定したり、選択肢をせばめてしまうのも、「エイジズム」のひとつです。
WHOの報告書によると、職場において従業員の心身に悪影響を与えるとしていて、アメリカの1万人規模の企業では、1年間で約5000日分の欠勤と、60万ドル(日本円約9400万円)ほどの損失が生まれているといいます。
埼玉県内の吉川市立吉川中学校で行われていたのは、「エイジズム」に関する授業です。
中学2年生
「数人で集まって、こういうことも実はエイジズムだった、みたいなことを話した」
この中学校で“授業”を行ったのは「LIFULL」という様々な事業を通して社会課題の解決に取り組む企業です。“授業”では「エイジズム」の経験を話し合ったり、映像や絵本を見たりして知識を深めます。
その絵本には…
「歳をとったら引退しなきゃ、なんてない。」
生徒たちは、学校の出来事だけでなく、会社の制度の問題や世の中の既成概念など、多岐にわたるテーマに向き合いました。
中学2年生
「年齢の壁はいい意味で、あった方がいいものもあるし、ない方がいいものもあるから、そういうのをなくしていければいいかなって思います」
中学2年生
「歳とってるからとか、若いからとか、そういうのはないし、もう少しみんなの見方を変えれば、変わっていくんじゃないかなって思います」
ひとりひとりの意識や行動が「みんなが生きやすい社会」の実現につながります。