【解説】「自転車の交通違反」取り締まり強化へ 「ながらスマホ」に注意
自転車を利用する人の事故が相次いでいることを受けて、警視庁が取り締まりの強化に乗り出しました。
・自転車事故 減らず
・積極的に「赤切符」
・「ながらスマホ」で乗ると…
以上の3つのポイントについて、詳しく解説します。
警視庁によると、東京都内の交通事故で、自転車の事故が占める割合は年々、増加しています。昨年は43.6%と全体の半数近くにのぼっています。また、9月末時点で、死亡者や重傷者が発生した事故の78.7%で自転車側に違反があったということです。
そもそも自転車は自動車と違って、教習所もなく、免許制でもないため、交通ルールをそれほど意識したことがないという人も多いと思います。自転車の主な交通ルールをおさらいしてみましょう。
車道と歩道の区別がある場所では、車道通行が原則です。道路の左側に寄って、通行しなければなりません。
また、歩道を通行する場合、車道寄りを徐行しなければなりません。歩行者の通行を妨げるような場合は、一時停止しなければなりません。
さらに、飲酒運転、2人乗りはもちろん、並んで走ることも禁止されています。
街の人に聞いてみると、「自転車をめぐって、危ない経験をした」という人もかなり多かったのです。
自転車で危険な目に遭った人
「信号無視とかで、接触されそうになったりとかはよくあります。『こっち(歩行者)が気をつけるしかないんだな』と思って、生活しています」
「ぶつかったりはあります。自転車が来て、子供を連れていると、『こっちに来て』って言って。自転車側に自分が立って、やっぱり怖いんで」
日本テレビの取材中にも、危険な行為をしている場面に遭遇しました。14日は雨が降っていたこともあり、傘をさして運転する人、赤信号を渡る信号無視の人も多く見られました。
自転車事故が相次いでいることを受けて、警視庁は10月下旬から取り締まりを強化することを決めました。具体的には「信号無視」、「一時不停止」、「右側通行」、「徐行せずに歩道を走る」の4項目です。こうした危険な行為をした場合、今までは「警告」でとどめていたケースも、今後は積極的に交通切符、いわゆる「赤切符」を交付して、検挙するとしています。
これまでは街頭で警察官が交通違反を見つけた場合、「自転車指導警告カード」を渡して、警告していました。このカードを渡されても、特に罰則はありませんでした。なかでも、特に悪質な行為に対しては、赤切符を交付していました。2021年には、約4300件交付されました。
今後は赤切符を出すハードルを下げて、より一層厳しく取り締まろうということです。赤切符が交付された場合、刑事処分の対象となり、「罰金刑」、「懲役刑」となる可能性があります。3年以内に2回以上交付された場合は、“1回6000円、3時間の講習”の受講が義務となります。受講しなかった場合は、5万円以下の罰金となります。
では、なぜ今、こうした自転車の交通違反に対して、取り締まり強化に乗り出すのでしょうか。警視庁によると、コロナ禍で公共交通機関を使わず、自転車を利用する人が増えたことなどから、自転車が絡む事故が後を絶たないということです。
さらに、都民からも、「自転車のマナーが悪い運転が多いので、取り締まりをしてほしい」という声がたくさん寄せられているからだとしています。
警視庁によると、2021年に発生した携帯電話使用中の人身事故は109件にのぼりました。そのうち、自転車による事故は乗用車やバイクよりも多い52件と約半数を占めました。
実際、どれだけ危ないのでしょうか。KDDI提供のこの実験映像では、「自転車に乗っている人が、どこを見ているのか」を可視化したものです。画面にある点が視線を表しています。適切な運転をしている時は、しっかりと前方の歩行者も見えていることがわかります。
一方、「ながらスマホ」の場合、視線は手元のスマホに集中しています。前を横切る歩行者は、かなり近づくまで認識できていません。自転車に乗りながらスマホの操作などをすることが、いかに危ないかがよくわかります。実際、メールのチェックなどをやりがちですが、気をつけないといけないなと思います。
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自転車はルールを守って、安全に利用すれば、健康にも環境にも良い乗り物です。一歩間違えば、人を傷つける恐ろしい事故にもつながりかねません。そのことを常に頭の片隅に意識しながら、正しく利用したいと思いました。
(2022年10月14日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)