新たな脅威“ローンオフェンダー”警視庁が対策強化【#きっかけ解説】
──「ローンオフェンダー」という言葉、まだまだ日常的には聞きなじみのない言葉ですよね。
ローンオフェンダーの言葉の意味をみていきますと、単独を意味する「lone」と、攻撃者を意味する「offender」、この2つが組み合わさった言葉で、警察庁は「特定のテロ組織などと関わりがないまま、過激化した個人」などと定義しています。
こうしたローンオフェンダーによるものとされる事件が起きていて、警察も警戒を高めています。
──ローンオフェンダーによるものとされる事件、実際どういった事件が起きているのでしょうか
10月19日、早朝に東京・永田町の自民党本部に火炎瓶が投げ込まれた後、総理官邸に向けて車が突っ込む事件が起きました。警視庁は容疑者の男を公務執行妨害の疑いで逮捕し、その後、警察官への殺人未遂などの疑いで再逮捕しています。
警視庁は「ローンオフェンダー性があるとみて捜査している」と警視庁としては初めて、ローンオフェンダーに関して、言及をしました。
また、おととしの安倍元総理が奈良県で銃撃された事件も、ローンオフェンダーによるものとされています。
──個人での犯行となると対策が難しくなりそうですね。
ローンオフェンダーは準備から実行までを1人で行うため、事件の予兆をつかみにくいのが特徴です。この新たな脅威に対応するため、警視庁公安部は来年春、組織改編をすることにしました。
現在、警視庁公安部は国内の事案に関して各部門を分けて対応していて、ローンオフェンダーについては、公安総務課が、カルト団体などへの捜査と兼務する形で担当しています。
ただ、来春からは極左の過激派などを担当する公安一課と二課が統合し、新・公安一課に。右翼対策を担当している公安三課が、新・公安二課になります。そして、新・公安三課がローンオフェンダーの対策課となります。
この新・公安三課は全国で初めてローンオフェンダーに専門的に対応する部署となり、警視庁は組織を改編することで、対策を強化することにしています。
──警視庁が組織を変えてまで力を入れているんですね。この専門の部署は具体的にはどんなことを担っていくのでしょうか?
例えば、インターネット上に頻繁に過激な表現での“不満”を書き込んだり、爆弾などにつながるような原材料を定期的に購入していたりするなど、まさにローンオフェンダーの予兆をつかんでくことになります。
──時代とともにテロの形も変わってきていますね。
はい、かつてはオウム事件などのようにテロは“組織”が行っていました。来年はオウム事件から30年を迎えるわけですけども、今は、社会生活を送る “個人”が引き起こすテロ事件が増えています。
つまり、テロは我々の身近に潜む脅威となっています。
ある警視庁幹部は「火薬類や薬品など、危険物につながるものの大量購入など何か、目立つ兆候があれば警察に相談したり、情報を提供したりしてほしい」と呼びかけています。【#きっかけ解説】