東京都民向けの観光支援策「都民割」の販売が10日再開され、宿泊施設や観光ツアーを扱う会社には予約が殺到。早々と完売になったり、サイトにアクセスしづらくなったりという人気ぶりでした。一方、訪日観光客の受け入れも2年ぶりに再開されました。
■「都民割」で1泊5000円を助成
10日夕方。東京・銀座の銀座グランドホテルに、父（56）と息子（19）がチェックインしました。カウンターでは（新型コロナウイルス）ワクチン接種証明や陰性証明を示しました。
さらに都民であることを身分証明書で確かめると、ホテルの担当者は「東京都ですね、ありがとうございます」と言いました。父子が利用したのは、10日正午から試験的に再開された都の観光支援策「もっとTokyo」。いわゆる「都民割」です。
ワクチンの3回目接種を終えているか、検査結果が陰性の都民が対象です。1人1泊あたり5000円、日帰りでも1人あたり2500円が助成されます。
父子は普段、離れて暮らしていますが、この日は5か月ぶりの再会となりました。「明日、雨じゃない？」「朝、大丈夫？」などと言葉を交わし、部屋でくつろいでいました。
■開始直後から予約続々…争奪戦に
都民割は7月31日までの期間で全体で25万泊分あり、銀座グランドホテルでは1泊2食付きプランを用意していました。1泊2食付き、平日3人1室（スーペリアツインルーム）の場合、通常は2万8520円からですが、割引後は1万3520円から（税込み）になります。
担当者はパソコン画面上の予約表を示し、「12時1分から予約が入り始めまして、12時2分、3分と入って、最終で12分で完売しました」と言います。割り当てられた分は12分で売り切れました。
担当者
「当日限りで完売ができればと思っていたんですが、12分というのは想定外の早さではありました」
都民割は争奪戦となりました。
■はとバスも…観光ツアーの予約殺到
都内の観光ツアーを扱う、東京・大田区の「はとバス」本社。都民割の予約が始まった10日正午、「『もっとTokyo』のコース、予約受付開始します」「お願いします」の声が上がると、さっそく電話が相次ぎました。
オペレーターは「すみません、大変お待たせしました」「これを機会にご旅行を、という方が多いようでして…。申し訳ございません」と忙しく応対していました。
都民割の対象コースは2つで、販売開始から1時間余りで完売した日程もありました。
■都心から遠い宿も「４時間弱」で完売
都心から離れた東京・青梅市。豊かな自然が魅力の「かんぽの宿 青梅」では正午になる直前、「57、58、59、12時です」とカウントダウンして構えていました。
正午になると予約の電話が次々入り、担当者が「お電話ありがとうございます」と何度も受け、「都民割ということで、限定プランになっておりまして…」などと説明しました。都民割の利用で、1万5300円からの50周年記念会席プランが、1万300円からになります。
予約は次々と埋まっていき、「都民割について残りが、ごめんなさい、1泊のみになってしまいまして」と担当者が話す一幕もありました。
やがて「はい、150泊完売です」と運営会社の部長。4時間弱で、用意した都民割プランは完売しました。一方、旅行会社経由の都民割プランは次週から販売開始予定です。
観光業者にとって、予約の殺到は嬉しい悲鳴になっています。
■「予約サイト」アクセス困難に
一方で、都民割の受け付けが始まって2時間ほどたっても、旅行会社のサイトでは繋がりにくい状況になっていました。一部の予約サイトではアクセスしづらくなるなどのトラブルが起きていました。
10日夜、姉妹で旅行を計画しているという都民に話を聞きました。妹は「12時ちょうどにアクセスしたんですけど、サイトに繋がるのに時間がかかって」、姉は「私は結局繋がらなかった」。予約に苦労していました。
SNSでも話題に上り、ツイッターでは「12時から200回ぐらい電話して全然繋がらなかった」という投稿もありました。
小池都知事は10日午後2時すぎ、「ホテルなど既に売り切れたという情報もございますし、なかなか電話が通じないという声も聞いております」と説明。今後拡充するかどうかは、国の「GoToトラベル」の動きや新型コロナの感染状況をみながら判断するとしています。
■ルール示されず…複数ツアー取り消し
10日からは、2年ぶりとなる外国人観光客の受け入れも再開されました。ただ、始まったのは入国手続きの申請で、国土交通省によると実際の入国は、早くとも翌週以降になる見通しです。
既に日本旅行への期待が高まっているのが、隣国の韓国です。首都ソウルでは「日本に行ったことがないので行ってみたいし、温泉にも行きたい」「日本の食べ物が好きで、ラーメンや寿司をたくさん食べたいです」といった声が聞かれました。
しかし、日本に行けるのは少し先になりそうです。日本向けツアーを販売している旅行会社の社長は「6月は難しそうです。まずはビザが一番重要ですから」と言います。
この旅行会社では、団体観光ビザについて10日の申請開始ギリギリまでルールが示されなかったため、申し込みがあった複数のツアーは取り消さざるを得ませんでした。
■イギリスでは…マスクで慎重論も？
日本から遠く離れたイギリスはどうでしょうか。日本への旅行を専門としている現地の旅行会社は「『日本の受け入れが再開され次第行きたい』という方もいますが、『（新型）コロナ対策の規制が撤廃されるまで待つ』という方もいます」と明かします。
イギリスでは既に、マスクを着けていない人が大多数を占めています。日本へのツアー参加者にマスク着用などの感染対策が求められるため、慎重になっているのではないかという見立てです。
それでも日本への旅行には期待があるといい、旅行会社は「日本への関心が高いのは間違いないので、予約が増えればいいと思います」としています。
（6月10日『news zero』より）
