「3.11生まれ」“知らない震災”伝える10歳の少女 有働キャスターが取材
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3月11日。この日を、特別な思いで迎えた少女もいます。小学4年生の佐々木智桜さん。3月11日は、祖母とおばを亡くした日であるとともに、実は智桜さんの誕生日でもあります。震災の3年後に生まれ、この日で10歳となりました。
小学4年生 佐々木智桜さん(10)
「(3月11日は)『楽しい日』と『悲しい日』。ばあちゃんと、おばちゃんに『今年も迎えたよ』とお祈りしました」
3月10日、釜石市にある防潮堤で、智桜さんがお母さんと一緒に出迎えてくれました。
智桜さん(10)
「散歩におすすめのところです」
有働キャスター
「歩いていてどんな気持ちになる場所?」
智桜さん(10)
「海を見られて波の音も聞いて、気持ちいいなって思います」
震災を経験していない智桜さんにとって、普段「きれいでおだやかな海」だといいますが――
智桜さん(10)
「津波はあっちの方にある高速道路の方まで行っちゃって」
有働キャスター
「あそこまで行ったということですか」
津波が押し寄せてきた当時の状況を、身ぶり手ぶりで教えてくれました。
智桜さんは、震災の教訓を伝えようと、釜石市最年少の語り部として活動しています。
有働キャスター
「小学4年生の名刺、生まれて初めてもらいました」
智桜さんは去年3月、語り部としてデビュー。それ以降、多くの人の前で震災のことを伝えてきました。
智桜さん(10)
「地震が起きたときは何も持たなくていいから、とにかく逃げて」
智桜さん(10)
「津波で流されたものがここに展示してあって」
有働キャスター
「どういう気持ちで説明している?」
智桜さん(10)
「黒板が持ち上がるのも、大変だと思うんですけど、それが流されてしまったのがすごいと思いました。津波の威力が」
智桜さんは、資料を見ることなく自分の言葉でしっかりと教えてくれます。
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11日で10歳になった智桜さん。13年前の震災当時を知らない智桜さんは、語り継ぐため、本などから知識を得ているといいます。そして、「てんでんこ」の歌も披露してくれました。
有働キャスター
「すごくわかりやすい。なにをしなくちゃいけないのかが、すぐわかる」
「『てんでんこ』はどういう意味?」
智桜さん(10)
「家族と“てんでバラバラ”で逃げろということです」
智桜さんの母・智恵さん(41)は―
「知らないからこそ伝えられるものってあると思います。何も知らない世代は、こういうことがあったから、私たちはこうしなきゃいけないんだって、新しい考え方が生まれているんだなって」
また智桜さんは、自宅でパンパンに詰まった防災バッグを見せてくれました。
今年1月の能登半島地震のニュースを見て、感じたことがあったといいます。
智桜さん(10)
「断水が続いているというニュースとか見ると、足りないんだなとわかりますね」
そこで、すぐにバッグの中身をチェックし新たに加えたものがあったといいます。
有働キャスター
「これなんですか?」
智桜さん(10)
「これは泡タイプで、すすがず、そのままでもシュってやって虫歯予防できるんですよ」
有働キャスター
「歯磨き? くちゅくちゅぺしなくていいやつ?」
智桜さん(10)
「そうそう」
そのほか、食料や着替え、ライトなど智桜さん自身が必要なものを考えて準備しています。
有働キャスター
「なんとなく準備している防災バッグって多いけど、全部考えられているんですね」
智桜さん(10)
「いつも定位置にいれておくっていうのもポイントですね」
さらに智桜さんは、語り部の活動に役立てようと、防災危機管理者の資格に挑戦し、見事合格。海外の人にも伝えていきたいと英会話教室にも通っているといいます。
有働キャスター
「いま地震がどこで起きてもおかしくないですけど、伝承者としてどういうことを日本の人に伝えたいですか?」
智桜さん(10)
「一番伝えたいことは、命が一番大事だということ。逃げるのが遅くなると命をなくしてしまうかもしれないから、たとえ大切なものがあっても、それはそれでしょうがないから。とにかく高いところへ高いところへ逃げてほしいっていうことなんです」
(3月11日放送『news zero』より)