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「まだまだ輝いていたい」選んだ乳房再建 がん手術後の“選択肢”を伝える12人の写真集 蜷川実花さんが撮影

2024年10月26日 10:24
「まだまだ輝いていたい」選んだ乳房再建 がん手術後の“選択肢”を伝える12人の写真集 蜷川実花さんが撮影
撮影:蜷川実花 企画:NPO法人エンパワリング ブレストキャンサー/E-BeC 発行:赤々舎

10月は乳がん検診を呼びかける「ピンクリボン月間」です。そんな中、乳房再建について広く伝えるため、乳房再建をした女性たちがモデルとなった写真集が出版されました。乳房再建とは乳がんの治療で失った胸のふくらみ取り戻すために行われる施術です。モデルに挑戦した、齋藤真希さん(40)に話をききました。(news zero 綾井万菜)

■女性の9人に1人が経験する身近ながん

齋藤さんが乳がんを患ったのは2022年で、子どもが母乳を飲まなくなってから、2か月後のことでした。たまたま胸を触ったときに覚えた違和感。すぐに病院に行き検査を受けました。

結果は「乳がん」──。病名を告げられ、「ある程度覚悟をしていたけど、ショックだった」といいます。右胸を全て切除することに決めましたが、「子供たちが小さいから頑張るしかない」と齋藤さんは前を向きました。

乳がんにかかる女性は増加していて、国立がんセンターによると、今では9人に1人が一生のうちに経験する“身近ながん”になっています。

■「前向きに頑張る」 きっかけ間近で見た母の姿

齋藤さんが“前向きに頑張る”と思えたのは、40歳前後で乳がんを患った「母親の存在が大きかった」そうです。「母は本当に元気で、いつも笑顔でおしゃれ。すごく前向きだった」と齋藤さんは話します。

乳がんを患った女性たちが“前向き”になるきっかけにもなるのが「乳房再建」です。

齋藤さんは、母親が乳房再建した姿を間近で見ていました。そして、自身も乳房再建を選択。「母としても女性としてもまだまだ輝いていたいし、おしゃれもしたい」という思いからでした。

乳房再建の選択肢を知っていたことで、全摘への不安はなく摘出手術に挑めたといいます。

■全摘手術のうち“再建”選ぶ人は12.5%

乳房再建は、「自分の体の一部(自家組織)を使って再建する方法」と「人工物を使って再建する方法」があります。

齋藤さんは摘出の際、組織拡張器(エキスパンダー)を入れ、皮膚と大胸筋を伸展させた後、2回目の手術でエキスパンダーをシリコン乳房インプラントに入れ替える「人工物を使用した乳房再建」を選びました。

摘出手術は喪失感が大きく、心理的なダメージが大きいと聞いていた齋藤さん。手術後、エキスパンダーの入った自身の胸を見た時には「喪失感はなく想像したよりきれい」と感じることができたといいます。

乳房再建は、11年前に保険適用の範囲が広がり、通常50万~100万円程度かかっていたところ、自己負担が10万円以内で手術が受けられるようになりました。(※高額療養費制度利用の場合。所得に応じて異なる)

それでも、全摘手術をした患者のうち、乳房を再建した割合は2022年度で12.5%にとどまるといいます(※アッヴィ合同会社アラガン・エステティックスによる)。まだまだ乳房再建に対する社会の認知度は低く、再建を考える人の元に十分な情報が届いていないのが現状です。

齋藤さんも乳房再建を検討した時に、インターネット検索やSNSでリサーチをしたものの、情報が少なく、乳房再建の認知や理解の少なさを実感したといいます。

「乳房再建という選択肢を広く知ってもらいたい」

そんな思いが集まり、写真集が制作されました。写真家の蜷川実花さんが、乳がんの手術後に乳房再建をした12人の女性を撮影。齋藤さんも、この写真集にモデルとして参加しました。

背景のピンク色は、撮影当時、髪の一部をピンク色に染めていた齋藤さんをみて、蜷川さんが選んだそうです。撮影しながらモデル一人ひとりに声をかけ、「和ませてくれて褒めてくれた」といい、安心してモデルをできたといいます。

以前は引っ込み思案だったといいますが、乳房再建によって「人生一度きりだしやりたいことはチャレンジしよう」と考えるようになったという齋藤さん。チャレンジの1つとして、SNSで乳房再建の経験を伝える活動を始めました。今回の写真集は、再建した胸を見てもらえる良い機会だったといいます。

──体を撮られるのに抵抗はなかったですか?

齋藤さん
「私はなかったですね」
「YouTubeとかインスタで全部出すことはないじゃないですか。こういう形で本になって、悩んでいる方とか(患者さんの)ご家族に見ていただけたらうれしいなと」

乳房再建を「する」「しない」は個人の選択です。乳房を摘出する人に乳房再建について知ってもらい、「選択肢の1つとして参考にしてほしい」と齋藤さんは話しています。