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「賭け麻雀で辞任」黒川検事長 どんな人?

2020年5月21日 20:48
「賭け麻雀で辞任」黒川検事長 どんな人?

東京高等検察庁の黒川弘務検事長が賭け麻雀をしていたことを認め、辞任の意向を首相官邸に伝えました。 定年延長を巡る法律の改正案で世間を騒がせた渦中の人物に、いったい何があったのでしょうか。そして、黒川検事長とはどのような人物なのでしょうか。

■ツイッター投稿相次ぐ中でも「賭け麻雀」

改めて、黒川検事長をめぐる最近の動きを整理します。

先月16日:緊急事態宣言が全国に拡大
今月 1日:新聞社社員らと賭け麻雀
今月 8日:「検察庁法改正案」が国会審議入り→SNS上で抗議相次ぐ
今月13日:新聞社社員らと賭け麻雀
今月18日:「検察庁法改正案」成立を見送り

黒川検事長は今月1日(金)と、13日(水)、新聞社の社員らと麻雀をしていたことが明らかになりました。どちらも緊急事態宣言が全国に拡大されていた時期で、多くの人がステイホームを頑張っているさなかの出来事でした。検事長という立場のある人が3密となる麻雀をしていたわけです。
さらに、検察幹部の定年を延長する検察庁法改正案が国会審議入りし、抗議するツイッターの投稿が相次いだあとにも、また麻雀をしていたということがわかりました。

関係者によると黒川検事長は、これが「賭け麻雀」だったことを認めているということです。つまり“金銭をかけて麻雀をしていた”ということなんです。

社員が麻雀に同席したとされる新聞社はこうコメントしています。 
朝日新聞「東京本社に勤務する50代の男性社員が黒川氏との麻雀に参加していたことは事実です」
産経新聞「取材過程で不適切な行為が伴うことは許されないと考えています。そうした行為があった場合には適切に対処します」

■黒川検事長の人柄を知る人は・・・

何が問題なのか。元東京地検特捜部副部長・若狭勝弁護士に聞きました。問題は、大きくわけて2つあるといいます。

(1)違法行為である“賭け”麻雀をしていたこと。

金銭を賭けていれば、賭博罪が適用になる可能性もあります。賭け麻雀をしてる人は、実際には民間人も含めてかなりいるということです。すべてを摘発していたらきりがないので、賭けるレート、1回にどれくらいのお金が動くのかによって、悪質性がかわるととらえられているそうです。今回の黒川検事長のケースは、通常では立件は考えられないということです。

(2)緊急事態宣言下で3密行為

麻雀は明らかに不要不急です。みんながステイホームを心がけているときに、検事長という立場の人間が麻雀していたことの道義的・倫理的な問題が問われます。

実は、若狭弁護士は黒川検事長と検察の同期。黒川検事長の人柄について「極めてソフトで人当たりがいい。いろんな人と気軽につきあうことが出来るタイプ」と話しています。若い頃から麻雀をしていたのは確かだそうですが、これほど熱中していたのは知らなかったそうです。 若狭弁護士にとって黒川検事長は最も親しい同期の一人ということですが、最後に賭け麻雀で辞職せざるを得ないのは忸怩たる思いがあるとおっしゃっていました。

■改めて整理:これまでの経緯は?

改めて、定年延長を巡るこれまでの経緯を振り返ります。
黒川検事長は今年2月に定年を迎え退官する予定でしたが、直前に半年間の定年延長が閣議決定されました。法律の解釈を変えてまで延長を決めたことに、野党側は猛反発。
さらに検察幹部の定年を最長で3年延長できるようにする検察庁法改正案が国会に提出されると、黒川検事長の定年延長を後付けで正当化しようとするものだと野党側から批判が噴出しました。 そうしたこともあり、改正案は今週月曜日に今国会での成立が見送られました。

なぜこんなに問題になったか。野党からは 「黒川氏は安倍政権に近いので定年延長は恣意的ではないか」と批判の声が上がっていました。つまり、時の政権に近い幹部だけを重要なポストにとどめることができるのではないか、という懸念が渦巻いていたわけです。 

■黒川検事長とはどんな人物?

黒川検事長は、検察内でどのような人物なのでしょうか?

まず、黒川氏のポストである東京高等検察庁の検事長は、検察庁ナンバー2のポストです。過去には、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件で検察のあり方が厳しい批判にさらされた際、黒川氏は地方に異動したばかりだったのですが、東京に呼び戻され、法務省の事務局のトップとして抜本的な検察改革を行いました。たとえば、取り調べの録音録画などの実現に尽力したといいます。

その後、法務省の官房長や事務次官を歴任し、いわゆる”共謀罪”の法律を成立させたことでもよく知られています。 それだけに検察幹部は「実践力、調整力、成果を残す力は余人を持って代えられない存在」と評価する人もいます。
その一方で、別の検察幹部は、「辞任は重すぎる気もするが、世間を騒がせてしまったから仕方ないだろう」といった声も出ています。

■政治家の受け止めは?

立憲民主党の安住国対委員長は「大変なエネルギーを国会で費やした」「森大臣や安倍総理の任命責任、大きな政治責任がまた発生した」とコメントしています。

さらに与党からも、「もうこの政権はダメだ」「政権に危機管理能力がなくなっている」などと厳しい声が上がっています。

今回、急転直下の展開となったわけですが、この問題は黒川検事長が辞任すれば一件落着という話ではありません。安倍政権は法律の解釈を変えて異例の閣議決定までして黒川氏の定年延長を推し進めたわけですから、その任命責任は徹底的に問われるべきで、安倍政権へのダメージは避けられません。

※2020年5月21日放送 news every.『ナゼナニっ?』より