社長に直撃 「どこまでバカなんや」…複数社員に日常的パワハラか 机たたき激しく罵倒
企業内のパワーハラスメントが深刻な社会問題となっているなか、厳しい口調で社員を罵倒するなど、社長によるパワハラが日常的に行われている企業があると情報が寄せられました。“パワハラ”との認識があったのか――社長に直接取材しました。
これは、とある企業の社長が、社員に向かって怒鳴る声――。
「どこまで無責任で、どこまでバカなんや一体!」
「何で間違いが起きたか分からんのか、お前は!」
耐えかねた社員の一人が、その音声を録音していました。
現役社員
「パワハラ…パワハラでしょうかね」
「本当に威圧的です。がくがく震えてきてしまうような…」
◇
社長によるパワーハラスメントが日常的に行われているとの告発を受け、私たちはその社長を直接取材しました。
パワハラを告発された 社長
「教えるのがパワハラなの? おとなしく教えていますよ」
記者
「やり方、です」
パワハラを告発された 社長
「やり方、おとなしいよ! 聞いてごらん! 今から行って聞いてごらん! どんな教え方をしているか。うそを言っちゃだめだよ、君!」
高齢になってから、インターネットを活用したビジネスを立ち上げた、この社長。成長が期待される企業が集まる東証「グロース市場」への上場を果たし、“敏腕経営者”としてメディアにも取り上げられていました。
一方、社内では――
事務的なミスをしたという社員Aさんを、“どう喝”する音声が…
社長
「何のために会社から高い給料とるんや、お前! 利益集団じゃ、ここは! ボランティアちゃうんじゃ!」
別の社員Bさんが資料を作成した際、とされる音声では…
社長
「くその役にも立たないものつくったのと違うのか!」
「もう本当に、オツム弱いのか、お前」
「もう本当にね、お前と話していると、バカと話してるみたい」
机をたたきながら、激しく罵倒しました。
さらに、別の社員Cさんを詰問する様子も…。
社長
「なんで、こういう間違いが起こった?」
社員C
「…ちょっと、いま浮かびません。申し訳ありません」
社長
「何で間違いが起きたか分からんのか、お前は!」
社員C「はい…」
社長
「お前が処理せんから起こったん違うのか!」
社員C
「はい…」
社長
「原因はお前やろうが!」
社員C
「はい…」
社長
「どうなんや!」
社員C
「…その通りだと思います」
録音では、何人もの社員に対し、激しい言葉が浴びせられていました。
パワハラ問題に詳しい専門家に、今回の音声を聞いてもらうと――
パワハラに詳しい 早稲田リーガルコモンズ法律事務所 原島有史弁護士
「いまの日本の社会で、こういうやり方、指導の仕方は、基本的には(裁判所に)『パワハラ』と判断される可能性が非常に高いと思います」
いわゆる「パワハラ防止法」では、次の3つすべてを満たすと「パワハラ」と認定されます。
◆「上司と部下など優越的な関係を背景とした言動」
◆「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」
◆「労働者の就業環境が害されるもの」
2022年からは、パワハラ防止のための措置を講じることが、全ての事業主に義務化されました。
厚生労働省によりますと、2022年度のパワハラに関する相談件数は5万840件。パワハラ防止法の対象が全事業主になったこともあり、前年度の2倍以上に増加するなど、深刻な社会問題となっています。
今回、私たちに告発したのは、現役社員と元社員の、あわせて6人。
カメラの前で証言した現役社員は…
社長によるパワハラを訴える 現役社員
「精神的にグサッとくるような…社員は口答え、反論はまるで許されないような状況になりますので。机をたたきながら…本当に“どう喝”です」
その様子について、別の現役社員は…
別の現役社員
「社内はワンフロアなので、まるで“公開処刑”。ほぼ毎日、誰かが怒鳴られているので、『またか』とBGMのようになっている」
◇
こうした環境のなか、精神的に追い詰められて、会社を辞めざるをえなかったという人も。
取材に応じた、元社員の男性は…
パワハラを苦に退職と主張 元社員
「怒鳴られている時は、“人格否定”は、ずっとありました。精神的に参ってきて…もう辞めるというところに至りました」
■パワハラ告発された社長に直撃…「パワハラはない」と主張
こうした告発を受け、私たちは社長本人への取材を再三依頼しましたが……「当該事実が確認できない」との理由で、社長はいずれも取材拒否しました。
事実を確認するため、社長本人の元へ…。
記者
「日本テレビです。社長の言動についていろいろ…」
パワハラを告発された 社長
「全く事実無根だし、弁護士を通して返事してあるはずです」
記者
「ご本人に、きちんとお話を伺いたくて、再三お願いしてまして…」
パワハラを告発された 社長
「事実じゃないことは、話しようがない」
記者
「社員の方が言っているのは、うそですか?」
パワハラを告発された 社長
「うそです!」
記者
「社長ご自身は、『パワハラ』の認識はありますか?」
パワハラを告発された 社長
「ゼロです! ありえません」
社長は、“パワハラはない”と主張しました。
そこで、実際の音声を聞いてもらうと――
パワハラを告発された 社長
「法的に違法な取引を社員がした場合には、経営者として怒って当たり前じゃないですか?」
社長は、“違法行為があった社員を叱責しただけだ“と主張しました。
ただ、日本テレビの取材に対し、怒鳴られていた社員は、「違法行為ではなく、事務的なミスだった」と話しています。
記者
「複数の方が、社長に怒鳴られている証拠がありまして、全員が不正してるんですか? 単純に、営業成績が芳しくなくて、むちゃくちゃ怒られている人も…」
パワハラを告発された 社長
「そんなこと、ありえません! 社員に聞いてください。ありえません! 私はね、不正は怒るけど、営業社員には教えています、やり方を」
「教えるのが、パワハラなの? おとなしく教えていますよ」
記者
「やり方、です」
パワハラを告発された 社長
「やり方おとなしいよ! 聞いてごらん! 今から行って聞いてごらん! どんな教え方をしてるか。うそを言っちゃだめだよ、君!」
記者
「『パワハラ』はないってことで、よろしいですか?」
パワハラを告発された 社長
「ないです!」
“パワハラはない”――社長は最後まで、そう主張しました。
“指導”と「パワハラ」の区別について、専門家は…
パワハラに詳しい 早稲田リーガルコモンズ法律事務所 原島有史弁護士
「業務指導は、業務の改善のために必要な範囲で行うべきであって、それを超えて、ただただ怒りを相手にぶつけたり脅したりするのは、業務を遂行するうえで必要なものとはいえないので、(裁判所で)『パワハラ』だと判断されることが多い」
経営者の中には、パワハラを正しく理解していない人も多くいる、と指摘しました。
パワハラに詳しい 原島弁護士
「職場で働く全ての人たちが、風通しよく議論できる職場というのは、何よりも求められている」
◇
告発した現役社員の一人も、職場環境の改善を望んでいます。
現役社員
「誰かがここで声を上げて、こういう行動に出ないと、おそらくいつになっても、この体制は変わらないでしょうし…“この会社のために頑張ろう”と思えるような会社になればいいのかな」