感染リスク高 警察はコロナ禍どう向き合う
実は警察官は新型コロナウイルスの感染リスクが極めて高い職種だった・・・。ウィズコロナの時代、警察はどう向き合うべきか。警視庁は全国の警察で初めて「コロナ禍」の具体的な感染防止対策などのガイドラインをまとめました。
■高い感染リスク 業務停止は許されない
警視庁には全国の警察で最多のおよそ4万6000人の職員が勤務しています。言わずもがな警察は事件や事故などを日々扱っています。その多くの職員が、新型コロナウイルスがまん延するエリアでの活動のみならず、容疑者の逮捕や取り調べ、交通の取り締まり、様々な相談など不特定多数の人との身体的な接触が避けられません。
ほかにも警察施設の特徴として102ある警察署のほとんどには留置場や取調べ室があります。これらは容疑者の逃走防止などのため密閉空間となっています。つまり仕事そのものも職場も感染リスクが実は非常に高い職業なのです。
もう一つ、警察は生命、財産の保護や治安維持などの役割を担っています。このため警察業務を停止することは許されません。事件事故などはいつどこで起きるかわからないため24時間対応する必要があり、感染拡大の影響で人員の減少などが発生すれば治安に大きな支障が生じかねません。
■全国で初めてガイドラインを策定
8月20日現在、警視庁で感染が確認された職員は、53人です。多くは正確な感染経路がわかっていませんがなかには、交通事故の対応をした警察官が事故の当事者が感染者であることを知らずに救急車の中で事情聴取を行いその結果感染したと疑われるケースもあったということです。
警視庁では感染者が発生すればその都度、濃厚接触者などを隔離し、応援部隊を投入するなどして業務の継続を行っていますが、その対応に統一された基準はなく半ば手探りで行ってきました。
そのため警視庁は、今回警察官の感染リスクを分析し、独自の感染防止対策などを盛り込んだガイドラインを全国の警察で初めて策定しました。都民・国民から感染防止対策への理解を得るため警視庁のホームページでも21日から公開しています。
ガイドラインでは、まず警察官のマスクの着用基準については原則着用としています。今月15日の終戦記念日には、機動隊によるデモの警備が行われましたがこの際、隊員はプロテクターをつけ整然と警備にあたりました。
こうした現場ではトラブルを制止する際に人と接触することが想定されたためマスク着用で臨んでいます。ただガイドラインには例外として、熱中症の恐れがあり、屋外で2メートル以上の距離がとれる時や、警笛を吹く時、激しい運動を伴う時などはマスクの着用を義務づけないことも示されています。
■新たなカテゴリー「軽度接触者」
警察特有の事件や事故などの現場では必要に応じて例えば、家宅捜索や容疑者の移送の際、窓を開けて換気を行います。また遺体を検視する場合などにはゴーグルやゴム手袋を装着するほか感染者や感染が疑われる人と捜査などで接触する場合にはさらに防護服も装着するとしています。
これまで警視庁では、取り調べをした容疑者や、検視を行った遺体がのちに新型コロナウイルスに感染していたことが発覚するなどして、対応した警察官が自宅待機となるケースも多く発生していました。そうした経緯から今月、新宿警察署が歌舞伎町のホストクラブに家宅捜索に入った際には捜査員は、防護服に身を包み、ゴーグルをしてゴム手袋をはめた厳重な装備で臨みました。
ガイドラインでは職員の感染者が確認された場合についても具体的な対策が盛り込まれ、隔離する職員を速やかに指定するため、「濃厚接触者」のほかに新たに「軽度接触者」というカテゴリーを設けました。
「軽度接触者」は、「濃厚接触者」にはあたらなくても、感染者が発症したおおむね2日前から近距離で接触したり、閉鎖空間で一緒にいたりした職員などと定義しています。該当者は、一定期間の在宅勤務とするとしていて、現在は、5日間程度の在宅勤務とすることで運用しています。感染者が出た現場からは「どこまでの範囲を自宅待機とするか基準を作ってほしい」という切実な声があがっていたことから、今回、「軽度接触者」というカテゴリーを便宜的に設けたということです。
ガイドラインの作成にあたった警視庁の重久真毅警備第一課長は、「リスクの高い環境にあっても、感染予防対策を徹底するとともに警察業務の維持・継続に向けた取り組みをしっかり進めていきたい」としています。警視庁のガイドラインは、今後、全国の警察にも提供され、参考モデルになるとみられています。