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コロナ禍の体操国際大会 開催の意義は

2020年11月4日 16:46
コロナ禍の体操国際大会 開催の意義は

今月8日、新型コロナウイルス感染拡大後、日本国内では初めてとなるオリンピック競技の国際大会が開催される。大会を主催する国際体操連盟の渡辺守成会長に開催の意義を聞いた。


■来夏五輪へ第一歩 コロナ禍の国際大会

今月8日、体操の国際大会が東京・代々木第一体育館で開催される。中国・ロシア・アメリカ・日本の4か国が参加し、国混合、男女混合の2チームによる試合となる。

新型コロナウイルス感染対策を徹底し、オリンピックのテストケースとしても注目されている。大会を前に、主催する国際体操連盟の渡辺守成会長が日本テレビのインタビューに応じた。

「(スポーツの)中止の流れを止めてもう1回挑戦したいというのがあった。IOC(=国際オリンピック委員会)とも話してポジティブな話ができないのかということで、体操が安全に大会を東京で、できるというのと、選手たちの声を世界に発信する機会を作りましょうと開催することになった」

大会は、6月に計画し当初は8月に開催予定だったが、感染状況を考え、8月末、9月末と延期し最終的に11月の開催にいたった。


■隔離生活を送るロシア選手「五輪のためにできることを」

大会開催が決まり、渡辺会長はロシアへ飛んだ。ロシアの選手たちは、隔離生活を送りながら練習に励んでいる。苦しい生活を送る選手たちに渡辺会長は大会の開催を報告した。

「大会をやろうと思うが、感染症だから100%の安全は保証できない。コロナにかかったら後遺症もあるということがいわれている。そういうことも含めてどうだと、大会やったら来るか?と聞いたら、選手たちは『自分たちはオリンピックに出たい。だからできることをする』と。彼らはオリンピックを目指しているし、自分たちが行動することで何か変わるなら喜んでやると。誇りだよね」

渡辺会長は、目に涙を浮かべながら当時を振り返った。


■感染対策を徹底した大会

今回の大会では、あらゆる面で徹底した感染対策を行う。出国前72時間以内のPCR検査を行うことに加え、滞在中は毎日のPCR検査を求める。入国後14日間の待機は求めないが移動は、大会会場、練習場、ホテルに制限される。

宿泊するホテルでは一般客と動線をわけ、エレベーターは専用に。部屋は国別にフロアを貸し切るという。徹底した対策で大会準備をすすめる中、衝撃のニュースが飛び込んできた。


■内村選手「陽性」→「偽陽性」

日本の内村航平選手が先月29日、新型コロナのPCR検査で陽性確認された。

「陽性反応が出た次の日に再検査で、僕が検体をとる容器を内村が隔離されているところにもっていった。そのときの顔がもう申し訳ないっていう。マスクしていて目しか見えないけど、あんなに落ち込んでいるのは初めてみたよね」

内村選手は2週間前から、他の日本選手とともに練習。感染が拡大すればこの大会自体も中止になるかもしれない。渡辺会長はそのときの内村選手の心境についてこう解説した。

「自分のせいで大会中止になる、あるいは自分のせいでオリンピックが中止になるんじゃないかって思うことを彼に思わせたこと自体、僕もすごくつらかった」

内村選手は、検査結果を受け隔離中のベッドの上で宙返りして練習をしていたという。しかし、その後の再検査で「偽陽性」であったことが判明した。

「偽陽性は想定の範囲内でした。偽陽性を認めるかどうかという議論が大会の医師団の中にあって“偽陽性”を認めるということは“偽陰性”を認めることになる。どうしようかという議論のさなかに内村くんの陽性が出てきて、いい機会だということで、再検査やって案の定、偽陽性が出てきた」

PCR検査の2週間前から、隔離された施設で生活し、選手の体温、体調チェックを毎日アプリで行っていて陽性という結果は考えられなかったという。

「各国の選手団が入ってきてからは、毎日検査やりますからそのときに陽性反応が出たら、再チェックで偽陽性あるいは陽性だった。そこのフローは今回の内村くんのケースで出てきましたから迷いがなくなりました。ただちに再チェックで偽陽性というテストケースがでてきて今後にいかされる」

東京オリンピック・パラリンピックに向けて、現在、政府・東京都・大会組織委員会のコロナ対策会議では無症状で陽性が確認された場合や、濃厚接触者になった場合の大会への出場可否を決めるルールの策定が検討されている。

今回のように試合までの期間に猶予があれば、再検査を行えるが、大会直前であれば出場可否の判断は難しくなる。また、検査数を増やせば、医療体制への負担やコスト増に繋がることも懸念される。


■海外にも協力を

今回の大会に出場するのは、80人ほどの選手団だが、オリンピックでは、約1万人をこえる選手を受け入れる。渡辺会長はこれだけの人数に対応するには、国内のドクターだけでは足りないと指摘する。

「今回ひとつのモデルケースができたから、それの拡大バージョンをどうやってやるのか。僕は国内のドクターだけでは足りないんじゃないかと思う。海外にも要請して海外のドクターを使ってやってく。オリンピックのときは自国だけじゃなくて海外からの協力も入ってやっていかないと間に合わないんじゃないかという気がします」


■五輪への扉を開く

渡辺会長は、今回の大会開催を前に選手たちにこう話したという。

「この大会が東京オリンピックの扉を開くみたいな記事があるが悪いけど、僕は開けないと。開けるとしたらおまえたちなんじゃないかと。扉の前まで僕たちは持って行ってあげるし、環境は整えてあげる。でも扉を開くのは君たちが素晴らしい演技をする。人々に感動を与えてスポーツってすばらしい、元気が出るということをすれば扉が開いていくんじゃないかと」

大会開催まで4日。きょうから各国の選手団が来日する。