「母の日がしんどい」大学生が企画 天国への手紙展
母親を亡くした人たちが、天国の母への思いを手紙でつづるオンライン展示「死んだ母の日展」。企画のきっかけは、自身も母親を亡くした大学生の「母の日がしんどい」という思いでした。
■「最後の買い物は喪服」「今の私、そっくり」「憎まれ口聞きたい」…あふれる“亡き母への思い”
「『ママが死んだあとに困らないように』って言って、最後に一緒にお買い物したのは、私の喪服。最後の最後まで私を残していくこと心配してくれてたよね」
「今の私、本当にお母さんにそっくりなんだよね。並んで写真を撮りたかったな。私のカメラで、お母さんがおばあちゃんになっていくところを、撮りたかった」
「お母さんに聞いて貰いたい話いっぱいあるねん。お母さんにしか話せんこと、いっぱいあるねん。お母さん、逢いたいよ。お母さんの憎まれ口、聞かれへんの寂しいよ」
亡き母に伝えたい、様々なメッセージ。「死んだ母の日展」のWEBサイトでは6日時点で、約100通の手紙が掲載されています。
■SNSで「母の日がしんどい」自分だけじゃなかった
大学生の中澤希公さん(20)が母親を乳がんで亡くしたのは14歳の時。以来、毎年の母の日は「SNSを見るのがしんどい日」だったそうです。
中澤さん「毎年来る母の日に、SNSで『お母さんにプレゼントあげた』とか『手作りの料理作ってあげた』とか、友達があげているのを見ると、私もこう過ごすはずだったのになってうらやましく感じました。それを見るだけでちょっと悲しくなったり、しんどくなったりしていたので、同じ境遇の人たちにとっても良い日であってほしいと、この展示を企画しました」
天国の母を思い出し、手紙を書くことで「母とつながれるような空間を作りたい」との思いからオンラインの展示会を始めると、死別経験者たちから多くの反響があったそうです。
中澤さん「母の日をしんどいな、うらやましいなって感じているのが自分だけかなと思っていて、私が強くなればいい話なのかなと思っていたら、(展示を通じて)『実は私も毎年しんどい』『街中のアナウンスを聞くだけでつらい』というメッセージをたくさんもらいました。自分だけじゃなかったんだ、と救われた気持ちになりました」
■実施したのは「死」などをテーマに大学生が起業したベンチャー
展示会を実施したのは、同じく大学生の前田陽汰さん(21)が2020年起業し、中澤さんもメンバーとして参加するベンチャー「むじょう」。亡くなった人をオンラインで追悼するサービスなどを提供しています。
今回の取り組みのきっかけになったのは、中澤さんが「母の日がしんどい」という思いを前田さんに話したことでした。
前田さん「母の日ってすごく商業化されている。母の日にカーネーションを売るとか、それをきっかけに売れるから合理的なんだけど、それによって傷つく人がいることに改めて気づかされました」
実施の背景には、活動を通して感じた現代社会の「死生観」に対する問題意識があったといいます。
前田さん「現代社会では死が日常から離れている。いつか母親というのは順当に行けば自分より先に死んでいく存在。当たり前のことだけど、それに気づくきっかけになったら嬉しいです」
■いつかは亡くなる母へ 感謝を伝える「母の日」に
中澤さんは、手紙という形で母親を亡くした経験を共有することは、悲しみをケアする「グリーフケア」の視点からも大切だといいます。
中澤さん「まずは他の人の手紙を見て、あなたは一人じゃないよっていうことをまずは感じてもらって、そこから自分はどういう悲しみがあるのかなというのを思い出す。手紙を書けない人も、企画を通してお母さんをちょっとだけでもいいので思い出してほしいです」
母親が存命、という人には。
中澤さん「あなたのお母さんもいつか亡くなっちゃうんだよということを伝えたい。生きているうちに感謝を伝えられたりとか、一緒に過ごしたりできるのであればしてほしいと思います」
母の日当日の8日には、webサイトに掲載された亡き母への手紙を添えて、白いカーネーションを1059本(テンゴク)配るイベントを渋谷で実施予定。オンラインでの手紙の受け付けは、8日で締め切られます。