×

両陛下「次世代」との交流 若い人たちの“背中を押し励ます”思いとは…【皇室 a Moment】

2025年2月15日 13:15
両陛下「次世代」との交流 若い人たちの“背中を押し励ます”思いとは…【皇室 a Moment】
両陛下「次世代」との交流

天皇皇后両陛下の活動では、訪れる先々で子どもたちや若者など「次世代」と交流し、励まされる姿が見られます。その交流の背景にある両陛下の“思い”や“願い”を日本テレビ客員解説員の井上茂男さんに聞きます。

■子どもたちへの励まし 両陛下が続ける「次世代との交流」

──天皇皇后両陛下が子どもたちに声をかけられていますね。

はい、1月17日の神戸市での一場面です。阪神・淡路大震災から30年となったこの日、両陛下は、神戸市の防災学習施設を訪ね、子どもたちが災害のメカニズムについて学ぶ様子を視察し、子どもたちに声をかけられました。

両陛下に声をかけられた児童:
「(両陛下は)普通に穏やかな感じで話してくださって、笑顔がずっと絶えなかったので、すごく緊張せずに、普通に友達としゃべるような感じでしゃべれました」

これにさきがけ、追悼式典で陛下は犠牲者への哀悼の意を示し、災害を語り継ぐ重要性をお言葉の中で述べられました。

天皇陛下:
「阪神・淡路大震災から30年を経て、震災を経験していない世代の人々が増えています。兵庫県では、震災を風化させてはならないという決意のもと、世代や地域を越えて経験と教訓を『繋ぐ』取組を進めており、中でも、震災を経験していない若い人たちが震災について自主的に学び、考え、自分の言葉で発信し、次世代へ繋いでいこうとする活動に取り組んでいると聞き、心強く思います。これからも、震災の経験と教訓を基に、皆が助け合いながら、安全で安心して暮らせる地域づくりが進められるとともに、そこで得られた知見が国の内外に広がり、次の世代へと引き継がれていくことを期待いたします」 

このお言葉から、防災学習施設での子どもたちとの交流は、「防災」の知見を次世代へ引き継ぐ取り組みを現地で視察し、若い世代の学びを後押ししようとされてのこととわかります。令和の両陛下の活動を見ていて気づくのは、「次世代」との交流が多いことです。子ども、生徒、学生、若者……。そうした人たちと交流し、励まされる姿がいつも目に留まります。

──私も特に被災地で声をかけられた子どもが笑顔になるシーンというのをとてもよく覚えています。きょうは、両陛下の、「次世代との交流」「次世代への励まし」にスポットを当てたいと思います。

■天皇陛下が歌に詠まれた「次世代」への思い

まずこちらをご覧下さい。

「旅先に 出会ひし子らは 語りたる
 目見(まみ)輝かせ 未来の夢を」
(天皇陛下 令和7年 歌会始「夢」)

今年の歌会始に出された天皇陛下の歌です。陛下は記者会見などで国民と触れ合うことの大切さ、喜びをよく語られますが、歌の中で陛下が目を向けられているのは「次世代」の子どもたちです。さらにほかの歌も見てみましょう。

「学舎(まなびや)に ひびかふ子らの 弾む声
 さやけくあれと ひたすら望む」
(天皇陛下 令和2年 歌会始「望」)

「コロナ禍に 友と楽器を 奏でうる
 喜び語る 生徒らの笑み」
(天皇陛下 令和5年 歌会始「友」)

最初の歌が即位後最初の歌会始、もうひとつが2年前の歌会始での陛下の歌です。これまで6回開かれた令和の歌会始の半数の3回において、陛下は「子」「生徒」など「次世代」を詠まれています。

──そうなんですね。子どもたちの日常に光を当てる、そうしたところに心を寄せられる陛下の思いやりや優しさを感じました。

お言葉だけでなくて、歌からも陛下の次世代への思いがうかがえるように思います。

■地方訪問で積極的に「次世代」と交流

こうした次世代との交流は、「4大行幸啓」と呼ばれる地方訪問でよく見られます。両陛下は1泊2日の短い日程の中で、次世代との交流に時間を割かれています。

去年5月、植樹祭で岡山県を訪れた際は、県立岡山工業高校を訪問されました。道路の老朽化を調べる活動や、化学の研究を生かして水質浄化の活動に取り組む生徒らの説明を聞き、「良い取り組みですね」などと声をかけられました。

岡山工業高校の生徒:
「お褒めの言葉をいただいて研究をしてきて良かったなと感じました」
「すごく話を真剣に聞いてくれて優しい方だなと感じました」
「(皇后さまからは)将来どのような仕事に就きたいかなどの話も(あった)」

また去年10月、国民スポーツ大会で佐賀県を訪れた時には、地元の小学生が酒蔵の歴史などについて調べ、観光客に魅力を伝える「子ども街並みガイド」の活動を視察されました。

子どもガイド:
「今から酒蔵通り全体の紹介を始めます。この地域はもともと八本木宿という名前だったのですが地域の方々が酒蔵通りと名付けました」

両陛下は、うなずきながら説明に聞き入り、終了後、「難しい漢字をたくさん使って頑張りましたね」「良い発表でした」などと声をかけられていました。

──子どもたちにとっては真剣に話を聞いてもらって声をかけられたというのは一生の思い出になると思います。こうした交流は昔から大切にされているのでしょうか。

皇太子時代から見られる光景ですが、即位後も変わらず続けられています。2019(令和元)年6月、即位後初めての地方訪問となった愛知県では、七宝焼きの体験教室に足を運び、子どもたちが七宝焼きのキーホルダーを作る様子を視察し、触れ合われました。令和になってからは、コロナ禍で直接の交流が難しい時期もありましたが、両陛下はこうした交流を各地で続けられてきたんです。

■外国訪問の時も“若い世代の可能性”に期待

こうした光景は、外国の訪問先でも見られます。

去年6月、両陛下はイギリスを訪れましたが、ロンドン東部の「ビクトリア・アルバート子ども博物館」を訪問し、子どもたちと触れ合われました。

また、おととしのインドネシア訪問では、私立大学や職業専門高校を訪ねて学生や生徒らに声をかけられました。訪問後の感想で両陛下は、「両国の友好親善と協力関係における若い世代の可能性を感じました」と述べ、若い世代の人々が、両国の相互理解と友好協力に大きな役割を果たすことへの期待を寄せられました。

──こうした国際親善の場でも、必ず若い世代に目を注がれてきたんですね?

はい。

■両陛下プライベートの時も“自然体”で…

またこうした若い人たちへのまなざしは、静養時のプライベートの時も変わりません。

天皇陛下:「何年生ですか?」
親:「1年生です」
陛下:「1年生」
皇后さま:「そちらのお兄ちゃまは?」
兄:「6年生です」
陛下:「6年生。夏休みはどうでした?」
兄:「いやあ、楽しかったです!」
陛下:「楽しかった、まだ続きますね」

──声をかけられた男の子、ちょっとびっくりしているようにも見えましたが、本当に自然なやりとりですね。

はい、愛子さまが入られて、また柔らかさが増しているんだろうなと思います。このように静養に向かわれる際、駅前で若い人たちと会話される場面はいつも見られる光景です。

■「個性の尊重と教育の重要性」・・・陛下の“熱い”まなざし

天皇陛下は記者会見でも、これまで「子ども」や「次世代」への期待について、何度も述べられていますが、1997年の誕生日会見の発言が明快です。

──そのお言葉がこちらです。

「今の日本は、とかく均一化というものを重要視するあまりに、個性であるとか、それから個というものを尊重する気持ちが失われがちではないかと思います。自分の個性というものを大切にしながら、他の個性というものも尊重することが大切ではないかと思っております。そういう意味でも、殊に次の世代を担っていく子供たちの教育が非常に大切なのではないかと思います」

天皇陛下としてはかなりお気持ちがにじんだ、踏み込んだ発言だったと思います。また2000年の会見では、「日本の将来を担っていく若い世代の人たちの活動にも関心を寄せていきたい」とも話されています。子ども、若い世代に注ぐ眼差しは極めて熱いと思います。その後、愛子さまが生まれて、親になって変わられたと思います。

両陛下が訪問された神戸の防災学習施設を、前の日に私も訪ねてみました。そこは、展示や映像、体験者の話などで災害に対する知識を身につけることができる施設です。小・中学生や高校生たちがグループで次々とやってきて防災や減災について学んでいましたので、1月17日の両陛下の訪問は、その取り組みへの“励まし”だと思いました。

■両陛下が「次世代との交流」に込める“願い”

振り返ると、新型コロナが蔓延し、両陛下がコロナについて様々に学んでいた時も、特に子どもに関心を持って話を聞かれていました。そしてこの時期、オンラインを積極的に活用して小・中学校や認定こども園などを訪れ、子どもたちと触れ合われています。

国内外で若い人たちと触れ合われる背景には、若い人たちに可能性を試してほしい、日本の将来を担う若い人たちの背中を押したい──という願いがあってのことと思います。

──未来を大切にする思い、個性を尊重する思いというのは、実際に交流を重ねられてきたからこその実感なのかもしれないと思いました。

そうですね。体験に基づくお気持ちだろうと思います。

【井上茂男(いのうえ・しげお)】
日本テレビ客員解説員。皇室ジャーナリスト。元読売新聞編集委員。1957年生まれ。読売新聞社で宮内庁担当として天皇皇后両陛下のご結婚を取材。警視庁キャップ、社会部デスクなどを経て、編集委員として雅子さまの病気や愛子さまの成長を取材した。著書に『皇室ダイアリー』(中央公論新社)、『番記者が見た新天皇の素顔』(中公新書ラクレ)

最終更新日:2025年2月15日 13:15
24時間ライブ配信中
日テレNEWS24 24時間ライブ配信中
logo

24時間ライブ配信中