“統一教会”へ質問権を使った調査解散命令請求めぐる文化庁と教団側の攻防~3つの争点とは~

勧誘や献金、宗教2世などの問題が取り沙汰される中、文化庁はいわゆる統一教会に対し、質問権を行使した調査に乗り出した。争点となるのは教団の行為の「悪質性」「継続性」「組織性」。解散命令請求の判断に向けた動きとポイントを整理する。
(社会部 島津里彩)
■安倍元首相銃撃事件を機に…
安倍元首相の銃撃事件をきっかけに改めて注目されることとなった世界平和統一家庭連合、いわゆる“統一教会”。
高額献金や宗教2世などの問題が浮き彫りになる中、岸田首相は解散命令請求の判断にむけ、永岡文部科学相に、宗教法人法に基づく報告徴収・質問権を行使した調査指示に踏み切った。
■解散命令請求の判断要件は
文化庁や全国霊感商法対策弁護士連絡会=全国弁連などによると“統一教会”やその信者の不法行為を認めた民事判決はこれまでに22件あり、損害賠償額は少なくとも約14億円にのぼる。また、この中には“統一教会”であることを隠して勧誘し、多額の献金をさせた事例もあると指摘されている。
こうした判決などを受けて、一部ではすぐにでも“統一教会”に対し解散命令の請求を出すべきだとする意見もあった。しかし、これに対し文化庁の幹部は「裁判所に納得してもらうためには、どのような違反行為がいつあったのかなど、客観的な事実や証拠を積み上げる必要がある」と話す。
過去に裁判所から解散命令が出されたのはオウム真理教と明覚寺の2件のみで、参考となる事例が少ない。また、この2つの団体はいずれも刑事事件で有罪判決を受けていて、“統一教会”とは状況が異なるとしている。
そうした背景もある中で、文化庁は解散命令の請求に向けた判断のポイントを「質問権を行使した調査などで教団の行為の悪質性、継続性、組織性を判断する客観的資料や具体的な証拠」としている。
■文化庁・宗務課 体制強化
資料や証拠集めなど、調査の実務を担うのは、宗教法人の認証業務などを主な業務として行っている文化庁の宗務課。もともと8人と小規模な課だったが、省庁をあげた調査を行うために法律や会計の専門家などを文部科学省内や他省庁から集め、現在は38人体制で動いている。
それぞれの専門分野に応じ、教団の財務・収支関係書類の分析や、解散の請求に向けた法律関係の書類の整理などを行っているとみられる。また、信者を親にもつ宗教2世や、全国弁連などからもヒアリングを行い“統一教会”の信者をとりまく実態や被害状況などについて幅広く情報を集めているという。