【解説】直接海底で「地震・津波観測」 南海トラフ巨大地震震源域の観測空白域にシステム整備完了
6月17日から23日までの期間、国内では震度1以上の地震が50回ありました。
▼17日午後3時57分ごろ、宮崎市で震度3の地震がありました。震源は日向灘で地震の規模を示すマグニチュードは4.6、震源の深さは21キロでした。日向灘では、午後6時26分にもマグニチュード4.3の地震がおきています。
▼19日午後4時11分ごろ、鹿児島県十島村で震度3の地震がありました。震源はトカラ列島近海、マグニチュードは3.4、震源の深さは11キロでした。トカラ列島近海では、その後も震度1から3の地震が相次いで発生しました。今回は小宝島近海の地震活動です。トカラ列島近海では地震が群発しておきることがあり、島の近くが震源になると強い揺れになることもあるため注意が必要です。
▼20日午後10時23分ごろ、愛知県の豊川市と新城市で震度3の地震がありました。震源は三河湾、マグニチュード4.4、震源の深さは35キロでした。
▼21日午後2時04分ごろ、愛媛県西条市、大洲市で震度3の地震がありました。震源は安芸灘、マグニチュード3.9、震源の深さは44キロでした。
▼21日午後2時23分ごろ、茨城県日立市で震度3の地震がありました。震源は茨城県沖、マグニチュード4.4、震源の深さは48キロでした。
▼23日午後0時12分ごろ、福島県田村市と川内村で震度4の地震がありました。震源は福島県沖、マグニチュードは4.9、震源の深さは50キロでした。(速報値)
文部科学省地震火山防災研究課 郷家康徳課長
「2019年度から防災科学技術研究所におきまして開発・整備してきました南海トラフ海底地震津波観測網、いわゆるN-netと呼ばれているものですがこの沖合システムの整備が完了しました」
文科省と防災科学技術研究所は、将来、巨大地震発生の可能性がある南海トラフ周辺の海域で地震や津波の観測をおこなうための南海トラフ海底地震津波観測網、通称「N-net」の沖合部分が完成して7月1日から試験運用を始めると発表しました。
システムの概要です。今回新たに、高知から日向灘の沖合の海底に海底ケーブルをひき、その所々に観測ノードと呼ばれる機器が設置されます。ノードは長さが2メートルほどで、中には2種類の地震計、さらに海底の水圧の変化によって津波を計測できる津波計が入っています。これを高知県の室戸と宮崎県の串間で陸上にあげて、防災科学技術研究所のほか、気象庁などにもデータを送ります。今後、沿岸に近い部分も整備がおこなわれるということです。
静岡県から宮崎県沖にかけての南海トラフ巨大地震の震源域。すでに静岡県沖のエリアに気象庁の海底観測システムがあります。また三重県沖から高知県東部沖は、DONET1とDONET2と呼ばれる観測装置が展開されています。今回、N-netが高知沖から日向灘にかけて設置されることによって、南海トラフの空白域となっていたエリアでも海底での地震や津波観測がおこなわれることになります。
今後、整備される沿岸に近い部分とあわせて運用することで、南海トラフ沿いで発生する地震を約20秒、津波を最大20分程度早く検知できるようになるということです。
陸地にある地震計で地震のP波の揺れをキャッチするよりも、沖合で観測できれば早く緊急地震速報を出すことができます。気象庁は地震発生後3分以内に津波警報を出しますがこの時間は変わりません。ただ海外など遠くで発生して日本にやってくる津波は、沖合に設置される水圧計によって、早くキャッチできます。沿岸にある津波検潮所での観測よりも早く、津波の高さが分かれば、予想される高さの修正や、津波警報の切り替えなどにも役立てられるようになるということです。