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【解説】「大人に言われたくない言葉」調査 なぜ叱る?“処罰欲求”と「叱る依存」…「自分で考えて動く力が奪われる」指摘も

2023年5月2日 20:56
【解説】「大人に言われたくない言葉」調査 なぜ叱る?“処罰欲求”と「叱る依存」…「自分で考えて動く力が奪われる」指摘も

5月5日は「日テレ系こどもday」で、今週は子どもに関する企画を実施しています。2日のテーマは「子どもが大人に言われたくない言葉」です。親子関係だけでなく職場や友人など大人同士の場面にも生かせる話があるので、ぜひ参考にしてほしいです。

●上位は定番の…
●大人が「叱る依存」に?
●言われてうれしい言葉も

以上のポイントを中心に詳しく解説します。

■「大人に言われたくない言葉」共同調査…トップ10は

今回、「こどもday」企画ということで、日本テレビ「news every.」はオンラインで高校生の学び場を提供するNPO法人「カタリバ」と共同調査を行いました。全国42人の高校生たちとアンケートを作り、1日は街中での取材にも参加してもらいました。

――大人に言われて嫌だった言葉は?

高校2年生(16)
「『早く勉強しなさい』『携帯を見るのをやめなさい』」
「『こんなこともできないの?』頑張っているのに否定されるのは嫌」

さまざまな意見が聞かれ、インタビュアーの高校生が共感する場面もありました。

アンケートには、全国の小中高校生など854人が回答しました。「大人から言われたくない言葉」10位までは、次のようになっています。

1位 「こんなこともできないの」44.0%
2位 「もう勝手にしなさい」40.2%
3位 「早くしなさい」39.7%
4位 「○○ちゃんはできているのに何でできないの」39.5%
5位 「勉強しなさい」26.7%
6位 ゲーム・スマホ中に「やめなさい」「まだやってるの?」26.2%
7位 宿題・お手伝いの時に「○○はやったの?」25.8%
8位 「私の時は○○だった」大人の自慢・苦労話25.1%
9位 「男(女)なんだから」22.7%
10位 「忙しいから後で」「待って」18.9%

1~5位を見てみると、「一緒にやろうよ」という言葉が入っていません。一方的で、何か突き放されているようで、「私も応援するから」という気持ちが少しでも入っていれば、動き出す言葉なのではないでしょうか。

では、どうしてこれらの言葉を言われたら嫌なのか、子どもたちの声を見ていきます。

1位「こんなこともできないの?」について――

高校3年生
「大人が優位であると押しつけられている気がする。自分が大人になった今、言われてみてほしい」

8位「大人の自慢話」について――

小学6年生
「大人の自慢話はつまんないから」

5位「勉強しなさい」について――

高校1年生
「『今やろうと思ってた』を信じてほしい」

2位「勝手にしなさい」について――

小学6年生
「勝手にしたら怒られるのはおかしい」

街では、大人にもどのような気持ちなのか聞きました。

3人の子を持つ母親(30代)
「『早くしなさい』は本当に毎日、言ってしまっている。もちろんなるべく言いたくなくて、今日もたくさん言っちゃったなと毎日反省しながら寝ています」

13歳の子を持つ母親
「その時に思ったことを言っちゃったけど、ポンッて忘れてて次のことを思っているけど、子どもは意外とそのことを覚えているんだな」

13歳の息子
「言われた方は覚えてるよ」

■なぜ叱る?人が持つ“処罰欲求” 成功体験から「叱る依存」に

なぜ大人は叱ってしまうのか、効果はあるのか、臨床心理士の村中直人さんに聞きました。

そもそも人には、悪いことをした人に対して「処罰したい」という欲求があるということです。この欲求を満たそうとするのが、「叱る」という行為だといいます。

叱られる側の子どもはその場では言うことを聞きますが、これは“とにかく苦痛から逃れたい”という感情からくるものです。納得して行動を変えたわけではないので、また次に同じことを繰り返してしまいます。つまり「叱ることに子どもの学びの効果はない」のです。

ところが、叱る側としては、一時的にですが“言うことを聞いてもらえた”と満足感が得られ、成功体験になります。この成功体験が繰り返されると、「叱る依存」につながってしまうといいます。叱る依存の親から繰り返し叱られた子どもには、「自分で考えて動く力が奪われる」との影響があるそうです。

■叱る状況を避けるには? “従わせる”発想を変える

では具体的にどうしたらいいのか、村中さんが提案しているのは大きく3つです。

(1)前さばき

叱る状況を避けるための準備です。例えば、1日のスケジュールの中で叱ってしまいそうなタイミングを予測して、叱らずに済むように子どもと話し合っておくなど準備をしておきます。

(2)できる・できないを見分ける

やらないではなく、実はできないということもあります。学校の準備が10分で終わらない時は「遅い!」と叱るのではなく、どうすればできるか話し合って「じゃあ15分でやってみようか」と決めてみるといったことです。

(3)冒険モードを邪魔しない

子どもがやる気になるのは「自分で決めた」「自分がしている」という感覚です。周りは、その子が考えて決めるまで邪魔しないことが大切だといいます。

教育学、哲学が専門の熊本大学の苫野一徳准教授も「まず、『大人が子どもを従わせる』という発想はやめて、子どもも対等の人間として尊重する姿勢が大事。子どもの意見を聞くのと同時に、大人側の意見もしっかりと伝えること」と指摘しています。そして「一番根底にあってほしいのは、大人も子どもも『あなたは存在そのものがOKだよ』という気持ちでいること」だと話していました。

子どもたちには「大人に言われてうれしい言葉」も聞きました。

「いいじゃんやってみなよ」
「頑張ったね」
「ありがとう」
「そんなことであなたのことを嫌いになったりしないよ」
「大丈夫」

背中を押したり、安心させたりする言葉が多く聞かれました。

    ◇

今回、調査に参加してくれた高校生たちの多くが、「子どもと大人の対話の機会がもっと必要」だと話していました。一方で、「日常では中々、親子の時間がとれていない」とも話していて、だからこそ大人も子どもも、より意識して対話する機会を作ることが大切だと気づかされました。

(2023年5月2日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)

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