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インスリン注射器で“1瓶7回接種”可能か

2021年3月9日 19:06
インスリン注射器で“1瓶7回接種”可能か

新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐって興味深い発表がありました。ひとつの瓶から接種できる回数を、今の5回から7回に増やせる可能性があるというのです。それはインスリン用の注射器を使う方法です。しかし、そこには問題もありました。

■宣言継続も“下げ止まり”の東京…感染経路は?

9日、東京では新たに290人の感染が確認されました。下げ止まりが続いていますが、緊急事態宣言が継続している東京では、どこで感染が広がっているのでしょうか。

8日の感染者は116人でしたが、最も多い感染経路が『家庭内』で、28人でした。8日は10歳未満の子供15人の感染が発表されましたが、そのうち13人が家庭内感染でした。

都の担当者は、「家庭内や施設内感染など『リバウンド』の種火があるので、種火を消すための対応が重要だ」と話しています。あらためて、ウイルスを持ち込まないことが大切です。

■インスリン用の注射器で“1瓶7回接種”可能か

新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、気になる発表がありました。京都府宇治市にある宇治徳洲会病院は、ファイザー社製のワクチン1瓶から接種できる回数を、今の5~6回ではなく、7回に増やせる可能性があると発表しました。

接種に使うのはインスリン投与に使われる注射器で、末吉敦院長は「注射器の先端と針の根元のデッドスペースが、インスリンはもともと非常に貴重なものなので無駄にしないようにデッドスペースが極めて少なく設計されている」と言います。

一般的な注射器の場合、中の薬液を押し出しきっても、注射器の先端や針に液体が残ってしまいます。ファイザーは6回分としていますが、政府が確保しているのは1瓶5回分の注射器です。

このため厚労省は、医療従事者の優先接種に、6回接種できる特殊な注射器を使おうとしていますが、供給が足りていません。

そこで、今回、インスリン用の注射器が注目されているのです。デッドスペースがほぼなく、液が無駄になりません。この注射器では1瓶で7回接種することができたと言います。つまり、いま用意されている注射器の場合より、接種できる人を4割増やせることになります。

■針が短い…インスリン注射器には課題も

しかし、問題もあります。ワクチンは「筋肉注射」で、一般的に注射器の針の長さは25ミリ。一方、インスリンは「皮下注射」で、針の長さは12.7ミリと短くなっています。そこで、筋肉まで必要な量のワクチンが届くのか懸念されているのです。

ただ、日本人は、アメリカ人に比べて皮下脂肪が少ないので、短い針でもワクチンが筋肉に届く可能性があります。宇治徳洲会病院では8日、院内の医療従事者を対象にエコー検査をし、皮下脂肪の厚さを測ってから接種しました。すると結果は、259人のうち、インスリン用の注射器で打てた人が222人いました。皮下脂肪が厚く、長い針にしなければならなかった人は37人でした。86%が接種できたことになります。

9日朝、田村厚労相は「筋肉まで届けば効果はあり、対応は決して否定しない」とコメントしました。つまり、「対応できる医療機関はどうぞ」という姿勢です。「ただ、インスリンの注射器は、数が限られている」ともしました。

新型コロナワクチンの接種で使うとなると、在庫がなくなるのではと懸念しているのです。これについて宇治徳洲会病院は、「そもそもこれを高齢者とか集団接種で使おうと呼びかけているのではなく、まずはワクチンが足りない中、医療従事者への接種を進めるために工夫している」とのことでした。

一方、9日、医療機器メーカーのテルモは「7回接種できる注射器を開発した」と発表しました。すでに厚労省から承認を受けていて、今月中に生産を始める予定だとしています。

■米国では『接種済みの人』に行動ガイドライン

ワクチン接種に関連して、アメリカではこんな動きもありました。アメリカCDC(=疾病対策センター)が8日、『ワクチン接種を完了』した人向けの『行動』ガイドラインを発表したのです。

ガイドラインはまず、ワクチンを接種した人同士が会う場合は、屋内で『社会的距離』を取ったり『マスク』をつけたりしなくても会うことができる、としています。

さらに、接種をした人が接種していない人を訪問する場合は、訪問先が同居の一世帯のみで、誰も基礎疾患がない、重症化のリスクが低いなど、こうした条件に当てはまればマスクをしなくても会えるとしています。

次に、接種した人が感染者と接触した場合は、症状がなければ『隔離』や『検査』はしなくてよいとしています。

一方で、公共の場やワクチン未接種の複数の家族と会う場合などは、これまで通り、マスクをつけて社会的距離をとるなどの対策を求めています。ガイドラインを発表したCDCのワレンスキー所長は、接種が完了してもほかの人に感染させるわずかなリスクはあるとしたうえで、こうした感染対策は引き続き行うべきだとしています。



今回は注射器をめぐる工夫をみてきましたが、ワクチン接種を含めコロナ対策の最前線となる医療施設では日々、工夫と試行錯誤が重ねられています。私たちは、医療従事者の方々にあらためて敬意や感謝の気持ちをもって、感染対策をしっかりしたいものです。

(2021年3月9日16時ごろ放送newsevery.「ナゼナニっ?」より