【藤田アナ鉄道NEWS】特急湘南デビュー
国鉄時代からの車両を使った「ライナー」に代わり、新たに東海道線に誕生した特急「湘南」。従来の利便性を継承し、ラッシュ時のみ走り、横浜駅などは通過。座席指定や静音性、設備や内装の美しさなどについて鉄道ジャーナリストの渡部史絵さんが語ります。
■特急「湘南」の車両とは?
藤田:特急湘南はどのような車両ですか?
渡部:リニューアルされたE257系車両で、特急「踊り子」に新しく導入されている車両を特急「湘南」にも使っています。
藤田:新しく作られた車両ではない?
渡部:昔走っていた中央線や内房線、外房線などで活躍した車両ですが、内装も変わって登場しました。
■新しくなった座席予約
藤田:車内の座席予約システムが変わりましたね。
渡部:はい。大きく変わりました。E257系特急車両にリニューアルされたからです。座席の指定は、これまでの「湘南ライナー」でしたら『座席定員制』のため、日時や号車、区間は指定できましたが、座席の指定はできませんでした。特急「湘南」となり、座席の指定ができるようになったほか、「座席未指定」というのもできました。時間が決まらなくても、日時と列車の区間だけ指定できます。後で乗車時刻がわかった時に座席を指定できる、という使い勝手のいいものです。
藤田:飛行機のオープン券と似ていますね!
■変わりゆく電車の「音」
藤田:「特急湘南」は何が魅力で、何が新しいと考えますか?
渡部:魅力は今までの車両に比べて静かになっていることです。「湘南ライナー」などに使われていた185系は国鉄型の車両なので、音がどうしても気になりました。乗り心地も新型車両に比べると劣ってしまうんです。
藤田:なるほど。
渡部:制御装置について、今はVVVFインバータの制御になりましたが、185系は抵抗制御といって、昔ながらの音が出る制御装置でした。音が大きい上に、「ブロワー」という強制空冷がついていたんです。これは抵抗制御で放出している熱を冷やすために必要なものでしたが、「ブロワー」もものすごい音がしたんです。新型特急車両になってこれからは本当に静かになります。
藤田:自動車の音も変わりましたしね。エンジン音が聞こえなくなり、寂しい気持ちにもなりますが、時代とともに音も変わっていくのですね。
■横浜駅を通過する特急?!
藤田:特急「湘南」は大きな乗換駅である横浜駅や川崎駅を通過しますよね。利用者数も多いからきっと利用したいだろうなと思ってしまいますが、あえて、その方々には?
渡部:はい。(横浜や川崎は)ターミナル駅で並行路線も多いので、別の路線を選んで都心に向かってもらえます。しかし、別の路線を選ぶ手段がない駅を利用される方々には(特急「湘南」に)優先的に乗降していただきたいというのが狙いだと思います。そして、大きなターミナル駅に停車すると、過密ダイヤで走っている他の通勤列車(普通列車)の通常運行に支障が出てしまうため、通過させる運用をしていると思います。
藤田:驚きますよね。特急が横浜を通過するって…!
渡部:考えられないですよね?
そして、今は日本の鉄道のラッシュ時、これは東海道線の数字ではないのですが、最高でもだいたい2分おきに発車しています。例えば、ラッシュ時、1本列車を逃してしまったお客さんがいたとします。この人は2分待てば次の通勤列車に乗ることができますが、もし仮に特急湘南が入ってくると、4分…つまり、倍の時間待たなくてはなりません。さらに特急は乗降口が普通列車に比べて少なく、乗り降りにより多くの時間がかかってしまいます。すると、仮に2分間隔での運行を守ることが難しくなるでしょう。お客さんにとって、どんどん待ち時間が増えていってしまう。このため、横浜や川崎の様に、乗降数が多いところは通過したほうが、通常の列車の運行に影響が少ないだろうと考えられます。
■“貨物線”を利用する特急「湘南」
藤田:一部の特急湘南は、ライナーと同じように横浜駅を通過ではなく、あえて通らない線路で東京方面に向かいますね。
渡部:はい。貨物線を使って都心に向かいます。貨物線を利用すれば通常の旅客に影響はありませんよね。「東海道貨物線」と呼ばれるルートなどを使って、通常の旅客に影響を与えないように、特別なルートを走らせているのです。
■コロナ禍で通勤輸送が変わる?
藤田:特急「湘南」のデビューは、今の時代背景に沿ったものと考えられますか?
渡部:そうですね。近年、着席指定をして快適に移動したいと言うニーズがとても高くなっています。大手私鉄でもほぼ関東圏では座席を指定できる運用をするようになりました。皆さん「お金を追加してでも快適に移動したい」と変わってきたので、今のニーズには合っていると思います。一方で少子高齢化で就労人口も減ってきています。東京といえども人数的には減っています。何年も前から計画してきたはずなんですが、たまたまそこにコロナ禍がタイミング的に合った。前々から予想してきたことが、ちょっと早い段階で来てしまったという形です。今までだと1つの場所から目的地に行くというのが1番の目的でしたが、現在はその行程も快適にしたい人が多くなってきました。その行程にお金を払ってでも、やっぱり座って行きたいというのが、観光だけでなく、ビジネスでも求められる形に変わってきたと言えますね。
■女性利用者としての目線で見たE257系リニューアル車
藤田:特急湘南は、あえて女性利用者としてご覧になられて、車内設備や座り心地、切符の買い方など、どのように感じられますか?
渡部:E257系リニューアル車に関しては、非常に多く色をバラエティ豊かに使っているのが特徴です。車内もドアのデッキ部分は赤色であったり、洗面台は青であったり、また黄色も使われています。デザインが凝っているんです。素敵なデザインだなと感じられます。またお手洗いは、185系時代は一部の車両で和式の便器が残っていましたが、それが今度は全てバリアフリー対応トイレになりますから、快適に移動できるようになると思います。
藤田:席を予約できる安心感はいかがですか?
渡部:ありますね!私の個人的な話になってしまうんですが、私は車窓を眺めたいので、窓側を予約します。ちょっと仕事の後など疲れた時に、景色を眺められますので、座席指定が出来ると非常に嬉しいです。
■未来への期待
藤田:これからの時代どのように変わっていくと期待しますか?
渡部:今の時代に合わせた形で、ちょうどタイミング良く運行される特急「湘南」なので、多くの利用していただいて、広まっていってもらいたいなと思います。
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「藤田大介アナの日テレ鉄道NEWS」は、日本テレビで1番の鉄道好きアナウンサー・藤田大介が、鉄道に関するニュースや話題をマニアックな目線でお届けするオリジナル企画です。
写真提供:JR東日本