池江選手、東京五輪へ 個人で出場…条件は
2年前に白血病と診断された競泳の池江璃花子選手が4日、日本選手権で優勝し東京五輪代表に内定しました。競技復帰後、「次のパリ五輪を目指す」と公言していた中でつかんだ東京五輪の切符。今回は、この池江選手のスゴさについてお伝えします。
■池江璃花子選手、東京五輪へ
4日に行われた競泳の日本選手権2日目。白血病から競技に復帰した池江璃花子選手(20)が女子100mバタフライで優勝し、東京オリンピックのメドレーリレーの代表に内定しました。優勝した直後、池江選手は取材に対し次のように話しました。
池江璃花子選手「5年前のオリンピック選考会よりも、ずっと自信もなかったし、自分が勝てるのはずっと先のことだと思っていたんですけど、自分がすごくつらくてしんどくても、努力は必ず報われるんだなというふうに思いました」
これまでの思いがこみ上げたのか、インタビューでは涙を見せ、時おり声を詰まらせる場面もありました。
■18歳で白血病…池江選手のこれまで
現在20歳の池江選手は2年前の2019年2月、18歳のときに白血病と診断され、10か月の入院を余儀なくされました。そして19歳、2019年12月に退院。そのとき、次のようなコメントを発表していました。
「私は病気になったからこそ分かること、考えさせられること、学んだことが本当にたくさんありました」
そして、退院後の競技活動については、「2024年のパリ五輪出場、メダル獲得という目標で頑張っていきたいと思います」と、パリ五輪を目指していたのですが、それより3年も早い今年の東京五輪への出場が可能となったのです。
退院後の道のりも平坦ではありませんでした。しかし、そんな中でも泳ぐことができる喜びも語っていました。
去年2月には、大学のジムでトレーニングする様子をSNSで公表し、「自分の筋力の衰えをものすごく感じました」と報告。その翌月には退院後初めてプールに入り、「406日ぶりのプールらしい! 言葉に表せないくらいうれしくて、気持ちが良くて、幸せです」とコメントしていました。
そして、去年8月、1年7か月ぶりに実戦に復帰した池江選手は、50m自由形に出場し5位。その後、4位、4位と続き、今年2月には50m自由形で2位になり、復帰後初の表彰台にのぼりました。
その後、東京都オープンに出場し、100mバタフライで3位。50mバタフライでは復帰後初の優勝を飾りました。こうして実戦を通じて一歩一歩、試合の感覚を取り戻していったのです。
そして4日、復帰後6大会目となる日本選手権で、池江選手は100mバタフライで優勝、東京五輪のメドレーリレーのメンバーに内定しました。100mバタフライは今年2月から出場していますが、4日までの1か月強で『1秒67』タイムを縮めています。
■東京五輪リレーで内定 個人での出場は? 条件はコレ
今回、リレーのメンバーとして東京五輪への出場が内定しましたが、個人での出場は内定していません。
オリンピック選手として内定を得るには日本水泳連盟が定めた『派遣標準記録』というのがあり、種目ごとにこのタイムを突破しなければなりません。4日の池江選手の100mバタフライの記録は『57秒77』でしたが、個人種目の100mバタフライの派遣標準記録は『57秒10』で、これを上回ることはできませんでした。一方、400mメドレーリレーの派遣標準記録は『57秒92』なので、池江選手のタイムが上回っています。このため、メドレーリレーのメンバーとしては内定したということになります。
池江選手は4日、「正直この100mバタフライは一番戻ってくるのに時間がかかると思っていた」「ものすごく自信のついたレースだった」と話していました。
■白血病に詳しい医師「考えられないほどの驚き」
今回の結果について、日本医科大学血液内科の名誉教授・猪口孝一さんは、「治療をしながら、ここまで筋肉を戻したのは本人のよほどの意志と栄養管理があったのだろう。考えられないほどの驚き」と話しました。
■他種目でも東京五輪出場なるか
池江選手は2日間の休養をへて、7日からの50m、100mの自由形と、50mバタフライ、合わせて3種目にエントリーしています。このうち、オリンピック種目である50m自由形と100m自由形の派遣標準記録と、池江選手の最新のタイムを調べてみました。
50m自由形は、今年2月に『24秒91』。これに対して派遣標準記録は『24秒46』。差は『0秒45』です。
100m自由形は、今年1月に『55秒35』。個人種目での派遣標準記録は『53秒31』ですが、400m自由形のリレーでは『54秒42』なので、差は『0秒93』です。
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「努力すれば必ず報われる」という池江さんの言葉に胸を打たれました。努力し続けることによって人間の能力は無限に広がること。自分の可能性を信じて勇気をもって挑戦することが大切だということを教わりました。
(2021年4月5日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)