【解説】裁判どう進む…弁護士に聞く 松本人志さん名誉毀損訴訟「第一回口頭弁論」開始
ダウンタウンの松本人志さんが「名誉を傷つけられた」として、週刊文春側を訴えた裁判の第一回口頭弁論が28日に始まりました。松本さんと週刊文春は双方、どのように自身の主張を立証していくのか、元大阪地検検事の亀井正貴弁護士に話を聞きました。
鈴江奈々キャスター
「まずはこれまでの経緯と双方の主張を整理します」
山崎誠キャスター
「週刊文春は去年12月、松本さんと女性との性的行為に関する記事を出しました。2015年に松本さんが参加した食事会に出席した女性2人が、『抵抗したにもかかわらず、松本さんが性的行為に及んだ』との内容を証言したとするものでした」
「これに対して松本人志さんは、名誉を傷つけられたとして週刊文春を発行する『文芸春秋』とその編集長に対し5億5000万円の慰謝料などを求め、今年1月に提訴しました。訴状のなかで松本さんは、『複数の女性に対し性的行為を強要したかのような記事は、客観的証拠は存在しないにもかかわらず一方的な供述だけを取り上げていて、極めてずさんな取材活動に基づくもの』と主張しています」
山崎キャスター
「今回の裁判の最大の争点は、『記事が真実なのか』、または『記事が真実だと信じる相当の理由があったのか』です。この点について28日の裁判で週刊文春側は、『複数の女性が松本さんから受けた同意のない性的行為はいずれも真実』として、記事は真実だと主張しました」
「さらに『被害を訴える女性に対して複数回の取材を重ねた』としたうえで、『証言内容と当時の状況との齟齬(そご)がないか、証言の具体性があるか、関係者による証言の裏付けがあるかなど慎重に検討し、松本さん本人への取材などもへて真実と確信した』と主張。取材は尽くしたとして『取材内容が真実と信じるにつき、相当の理由があったことは明らかだ』としています。『取材の具体的内容については今後、詳細を明らかにしていく』としています」
鈴江キャスター
「ここからは亀井弁護士に詳しく話を聞いていきます。松本さん側は『極めてずさんな取材活動だ』と主張する一方、週刊文春側は『真実だと確信した』『真実と信じるに相当の理由があった』と争う姿勢を見せています。亀井さん、この週刊文春側の主張を見てどのように今、感じているでしょうか?」
元大阪地検検事 亀井正貴弁護士
「これは報道機関の方が行う通常の抗弁ですね。つまり出した内容、報道記事が真実、もしくはそれなりの取材を通じて真実に相当する理由があると立証すればマスコミ側が勝ちますから、通常の抗弁を出しているということですね」
鈴江キャスター
「松本さんの訴えに対して、週刊文春側はどのように真実性を立証していくと考えられますか?」
亀井弁護士
「これは女性2人の供述というのが大事です。信用性を立証すれば真実を立証することができるということですね。ただそれだけではなくて、その2人の供述を支えるようなLINE・メール、他の人との会話であるとか、あるいはもし病院とか行っているのであればそのカルテとかですね、供述を支えるような物証がないかどうか、この人証と物証の両方から立証していくんだろうと思います」
鈴江キャスター
「松本さん側は『記事の女性が誰か特定されないと認否できない』と主張しているんですが、週刊文春側は『個人情報は回答できない』と。これ、報道機関としては理解できる側面はあるんですが、そのあたりはどのようにバランスをとっていくんでしょうか?」
亀井弁護士
「最終的にはですね、例えば名前とかそこまでは公表できないと思うんですが、その人のある一定の属性のところを明らかにしていかざるを得ないと思うんですよね。松本さん側としてはその2人の女性の証言の信ぴょう性を検証するためには、この2人の背景事情であるとか、その他を確認する必要がありますから、松本さん側としては当然開示する必要があるし、だけどマスコミ側としては、取材源の秘匿というのは鉄則ですから、どのへんぐらいまでその辺を妥協できるかというところになっていくだろうと思います」
■「どちらのほうが本当くさいか」で裁判官は判断?
鈴江キャスター
「一方で松本さん側は『客観的な証拠は存在しない』というふうに主張しています。松本さん側に立ったとき、それをどう立証できるんでしょうか?」
亀井弁護士
「松本さん側からすればですね、まずその2人の女性にできれば法廷に出てきてもらってその証言を弾劾する、信用性がないと弾劾していく。それから女性と、例えば、今回出ているんであればスピードワゴンの小沢さんも参加していたというところがありましたから、その人と女性とのLINE・メールであるとかですね、それからその後の、事後の後の松本さんとか女性の状況について、その場にいた芸人たちの証人尋問をしていくとか、そういったような形になると思います」
鈴江キャスター
「状況によっていろいろな証言を積み重ねていくということになるのでしょうか。一方で、民事裁判ですので捜査機関が動いているのではありません。裁判官は何をもとに判断を下すのでしょうか」
亀井弁護士
「結局は証言と物証とを照合をして、整合性を考えながら照合していくということなんですけれども、刑事事件の場合と違って民事事件の場合には、どちらの方が本当くさいかなということでどちらかを選択する話になるんですね。刑事事件の場合には、合理的な疑いを入れない程度に立証する必要がありますから証拠はかなり高めですけれども、民事事件はそこまででなくていいんですね」
鈴江キャスター
「つまり、どちらの言い分がより真実性があるかということをみていくということなんでしょうか?」
亀井弁護士
「そうですね、どちらのほうが本当くさいかというのをみていくということですね」
鈴江キャスター
「気になるのが今後の展開です」
山﨑キャスター
「松本さんの代理人弁護士によると、今後考えられる『証人尋問』については、今後、誰を呼ぶのか話し合いも進められ、記事で関連が指摘された後輩芸人などへの尋問が行われる可能性もあるということです。そして松本さん本人への『本人尋問』についても考えられます。松本さん自身が出廷することに拒否は示していないということで、裁判の終盤で松本さんへの尋問が行われる可能性は高いということです」
森圭介キャスター
「亀井さんご自身は今後、裁判はどのように進んでいくと思いますか?」
亀井弁護士
「まずは主張のやりとりというのをしていきます。これはおそらく10か月とか、長くすれば1年くらいたつかもしれないですけれども、ある程度その主張が見えた段階で和解ができないかというのを裁判所は模索すると思います」
「だけど、これはなかなか難しいと思うので、その後は数か月かけて証人尋問の準備にかけて証人尋問にいたるという話になりますから、1年数か月後くらいに佳境に達するというような感じではないかなと思います」
■決着まで3年ほどかかる可能性も…
鈴江キャスター
「裁判というのは白黒つけるものだとは思うんですけど、こういった裁判でははっきりと白黒つけられるものなんでしょうか?」
亀井弁護士
「勝ち負けだけで考えるんであれば、文春側には信じるに足る相当、つまり取材を尽くしたということを立証すれば勝てるので、そういった意味では真実は明らかにならないんですよね。あと真実性の観点からにつきましては、刑事事件とは違って優劣の程度によって決めるのでそれが真実とまでいえるのか、その点は正直あるのかなとは思います」
鈴江キャスター
「そういった裁判に関して芸能界への影響も大きいわけですけれども、裁判が終わるまでどれぐらいの時間がかかると見通していますか?」
亀井弁護士
「おそらく1審だけで来年の中盤から後半ぐらいいって、もし一方が負けた場合には控訴して、控訴も10か月とかもう1年かかる可能性があって、その後さらに最高裁まで行くということになってくると2年数か月~3年という期間が一応、想定されます」