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「20年以上治療も…」“性犯罪”加害男性が語る不安 「日本版DBS」に必要なことは

2024年5月9日 20:02
「20年以上治療も…」“性犯罪”加害男性が語る不安 「日本版DBS」に必要なことは

9日、衆議院で子どもを性暴力から守るための法案の審議が始まりました。その柱となるのが「日本版DBS」です。子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないか、学校や保育所などに確認を義務づける制度です。「日本版DBS」によって、子どもたちを守ることができるのか。制度に必要なことは何なのでしょうか。

それを考えるため、先週は子どもの頃に性被害を受けた方の声をお伝えしましたが、9日は、加害者の男性の声をお伝えします。男性は過去に子どもへの性犯罪で有罪判決を受け、いまも治療を続けています。男性は実名でカメラの前で取材に答えています。不快な思いやフラッシュバックする恐れがある方は、動画の視聴をお控えください。

   ◇

後悔の言葉を口にしたのは、加藤孝さん(61)。かつて家庭教師をしていた時などに、子どもに性加害をしたといいます。

加藤孝さん(61)
「償いきれない傷、癒やしきれない傷をその人に与えてしまって、その人の人生を破壊してしまって、申し訳なさでいっぱいです」

38歳のとき、警察に自首し、強制わいせつ未遂の罪で懲役2年、保護観察付きの執行猶予4年の有罪判決を受けました。

加藤さんは有罪判決後、性依存症と診断され、これまで20年以上、性加害を起こさないための専門的な治療を続け、性依存症の自助グループに参加しています。

加藤孝さん(61)
「一日一日、再加害しない日々を積み重ねていく。自分のコンディションを維持することによって、日々の執行猶予が与えられているに過ぎない」

そんな加藤さんが、大きな進展だと話すのが、9日に国会での審議が始まった「こども性暴力防止法案」。その柱となるのが「日本版DBS」で、子どもに接する業務に就く人に性犯罪歴がないか、学校や保育所などに確認を義務づける制度です。

加藤孝さん(61)
「子ども性暴力を根絶する意味で、とても大きな進展だと思います」

一方、今回の法案では、性犯罪歴のある人が子どもと接する業務につけなくなるのは10年、または20年と限られた期間だけです。有罪判決から20年以上たち、再犯防止につとめている加藤さんでも、自身にはまだ再加害リスクがあると言います。

加藤孝さん(61)
「僕が最後に加害してしまったのが20数年前。仮にそのときにDBS法があったら、僕は監視のネットワークから外れてしまう。依存症は一生治癒はしない、ただし回復はしていく。だんだん良くなってはいく」

「『自分はもう大丈夫』、繰り返していない、この問題卒業と言い出したら、逆にそれは危険な兆候だと思います。僕は(性加害をしなくなって)20年を超えてますけど、今でも自分に再加害リスクがあると思う。このことについては、期限を設けず対象にすべき」

法案をめぐっては、性犯罪歴がある人の職業を制限するのが、権利の侵害にあたるという声もありますが…

加藤孝さん(61)
「第一に考慮すべきは、子どもの人権だと思うんですね。わざわざ、また子どもに近づく職業を選択するのは、一体どういうことですかと。職業の選択の自由の制限があっても構わないと僕は思います」

「(性加害を)絶対に繰り返したくないと思ってはいます。でも、仮に子どもと一対一になったときに、自分の中にそういう要素があり続けてるわけですね。不用意にそういう機会を許してしまうのは非常に危険なことだと考えています」

課題は他にもあります。法案で、子どもに接する業務に就く人に性犯罪歴がないか、確認が義務付けられているのは、学校や幼稚園、保育所など。塾や習い事などの施設は犯罪歴の確認が任意となっています。

加藤孝さん(61)
「家庭教師はちょっとやったことがあります。男児がいて、その子に加害してしまった。有償のボランティアで介助を頼まれた障害を持つ少年に対して加害してしまった。これも今回の法案では、どちらもチェック対象外になってしまう。枠組みをもっときちんと整備する必要があると思います」

また、これまで3000人以上の性加害者の治療に関わってきた精神保健福祉士の斉藤章佳さんは、再犯防止のため、性加害者を継続的に支援する取り組みが必要だと指摘しています。

精神保健福祉士 斉藤章佳さん
「適切な機関につながることで、これ以上被害者を出さない。(再犯防止)プログラムを受け続ければ、やめ続けることができる」

現在、刑務所では、性犯罪受刑者に対して再犯防止プログラムが実施されています。しかし、出所後などは措置が取られていないことが課題だといいます。

精神保健福祉士 斉藤章佳さん
「誰かが関わり続けること、伴走することで再犯防止をする。非常に長いスパンで関わらないといけない」

今回の法案には、加害者の再犯防止の取り組みは入っていないため、法律施行から3年後の見直しのタイミングで、盛り込むべきだと指摘しています。

   ◇

桐谷美玲キャスター
「再犯の可能性はもちろん人によると思いますが、20年以上たった今でも、自分に再犯のリスクがあると話していたことに驚きました。親としては安心できる制度にするために、しっかり議論してほしいと思いました」

鈴江奈々キャスター
「今回、加害者の男性は、性加害のリスクがある人たちに、治療などを続けていれば『変われる』と思ってほしいという思いから取材を受けたということです。ただ、加害者側が治療を継続することには課題があります」

鈴江キャスター
「刑務所では一部の受刑者に再犯防止プログラムが行われていますが、刑期を終えた後は義務づけられておらず、加害者が自主的にクリニックなどを探し、受けに行かないと継続することができません。出所後にやめてしまう人も多いといいます」

「また、保護観察のない執行猶予の場合は、そもそもプログラムは義務づけられていません。今回の法案は、こうした加害者側の再犯防止につながる治療などについては盛り込まれていません。加害のリスクをより減らす体制作りも求められています」

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