カネのない宇宙人 閉鎖危機に揺れる天文台
日本の宇宙研究は…金がない…
常田佐久国立天文台台長「いまは(日本人が)ノーベル賞がとれてるけど、これからはとれないんじゃないか」「将来への投資が出来なくなっているから」
日本有数の国立天文台・野辺山宇宙電波観測所も財政難で閉鎖の危機に揺れていた。
「観測所の財政難がいよいよリアリティーを増して、それと闘っていかなくちゃいけない」
立松健一・第13代所長。天文学に魅了され、研究の大半をここの望遠鏡とともに過ごしてきた。
立松所長「いま財政難のときに所長をやって、うちの家内とか『そんな大変な所にわざわざいくわけ?』って言うんですけど、私の目の黒いうちには45m(望遠鏡)の観測が止まることはない」
シンボルの45m電波望遠鏡。世界トップクラスの大きさを誇り、数々の功績を残してきた。
2千万光年離れた銀河で、世界で初めて巨大なブラックホールを発見。天の川の精細な地図を作成した。しかし、人件費のカットで、2年以内に37人のスタッフから、半数が観測所を去らなくてはいけない。
立松所長「年8人から9人ペースで職員が縮小していくことになります」「しゃべっていて私も快適ではないんですけど」
財政難に陥ったひとつの原因は、国からの運営費交付金の削減。毎年1%ずつ減っていた。
立松所長「食堂閉鎖を断行した所長がみんなが嫌いで、所長がひとりで食べてるって(笑)。誰も所長には近づかない(笑)」
所長が向かったのは、国立天文台の本部。
「おはようございます」
執行部に現状を報告。
立松所長「電気代燃料費を少なくするため本館をいよいよ閉鎖すると。45m(望遠鏡)は700tあるので、電気代が半端じゃないと。1年間に3500万円かかっていて、電気代をできるだけ減らしたいと思っています」
活動の拠点となる本館を閉鎖。望遠鏡の稼働時間も減らさざるを得ない。カネを集める方法はないか…
立松所長「観光とか教育の面をもっと強化した活動を、これまでにない格好でやる」
役場の村長に、天文台の施設を使った有料の観光ツアーなど、新たな取り組みを提案した。この日、本館の閉鎖を前に野辺山観測所を支えた歴代の所長たちが集まった。そこでも、金の話に…
石黒正人第4代所長「予算要求のときに必ず聞かれることがあるんですよ。『何の役に立つんだ?』って。もっとひどいのはいくらもうかる?」
すぐに金になるもの。すぐに役に立つもの。その追求の果てに残るのは何か…。
八ヶ岳が白い化粧を施すと、観測シーズンが始まる。だが、この冬から研究者は来ない。経費削減のリモート運用。本館も閉鎖され、静かな観測が始まった。その一方で、有料のガイドツアーが始まった。
ガイドの人「残念ながら宇宙人の放送局の電波ではありません」
今後、観測所は年間予算を、さらに半分に減らす。
立松所長「これまで活躍した望遠鏡を、感謝しながら運用していくというのは、難しい仕事かもしれないけど、それなりにやりがいがある仕事だと思ってるし、自分に合ってる仕事だと正直思っています」
まだ知らない星。これからも見続けることができるだろうか。
NNNドキュメント 2020年2月放送 テレビ信州制作
『カネのない宇宙人 ~信州 閉鎖危機に揺れる天文台~』
を再編集しました。