走る選手と共に…箱根駅伝に情熱ささげる“女性白バイ隊員” 3時間以上にわたり先導…「駅伝ならではの注意点」は
今年も熱戦が繰り広げられた、第99回「箱根駅伝」。駅伝選手と共にレースを走り、情熱をささげた“女性白バイ隊員”がいました。白バイに乗り始めてわずか3年での挑戦、その姿を追いました。
◇
実況「駒澤大学、2年ぶり8回目の総合優勝!」
今年も箱根駅伝で力強い走りを見せた選手たち。その安全を、陰で支えた人たちがいます。その1人が、神奈川県警・第二交通機動隊の坂元昭子巡査(25)です。
坂元昭子巡査「往路・歩道側を担当させていただきます、白バイ中隊第一小隊、坂元昭子と申します」
白バイに乗り始めてわずか3年の坂元さんは、先月、箱根駅伝の先導に抜擢されました。去年10月に開かれた白バイの運転技術を競う全国大会で、総合2位に輝き、その技術を買われたのです。
坂元昭子巡査「箱根駅伝は憧れの舞台だなと、ずっと思っていました」
◇
そんな坂元さんにも、ある不安が…。「駅伝ならではの注意点」があるのです。
坂元昭子巡査「箱根駅伝ですと、周りの方の安全を確保したり…」
選手と白バイとの距離は、15メートルから20メートルほどに保つ必要があります。教官が「自分が思う15メーター先(に立ってみて)」と指示すると、訓練を受ける白バイ隊員たちが一斉に走り出します。坂元さんも思った場所に立ちますが、「うわ! めっちゃ遠いです…」と驚きました。その距離を、バイクのミラーだけで判断します。教官も「これ(ミラー)しか頼りになるもの、ないから」と指導します。
また、本番で後ろを振り返ることは許されません。なぜなら、前方の安全も確保しなければいけないからです。坂元さんは沿道の人が飛び出した想定の訓練で、注意を呼びかけました。
坂元昭子巡査「下がってください! 下がってください!」
しかしその時、選手との距離を意識できていませんでした。
教官「選手と接触する可能性も出てきちゃうから」「選手が安全に走れるように、何か出てきた時の対策がメインになるから」
この日の訓練の出来について尋ねました。
坂元昭子巡査「点数つけるとしたら…30点くらいじゃないですか。本番までに対応できるように、頭の中を整理して」
また、本番のコースも実際に白バイで走って、入念にチェックします。
教官「橋のところと坂のところは、テレビカメラがあるから人が多いから」
坂元昭子巡査「はい!」
先輩から注意するポイントを学びつつ、ミラーを見ながら距離感も確認していました。
◇
そして迎えた当日、1月2日――
実況「スタートしました。第99回箱根駅伝!」
白バイ隊員たちが横浜市にある戸塚中継所近くに集合しました。坂元さんも「選手を安全に引っ張って 行けたらなと思います」と抱負を語りました。坂元さんの担当は「3区の途中から往路のゴールまで」。しかし、その直前では激しい先頭争いが繰り広げられ、緊張感が高まります。
実況「吉居が来た! 吉居がトップに立って、戸塚中継所に飛び込んでくる!」
そして、白バイの交代ポイントで坂元さんらが素早く合流し、先導が始まりました。
実況「神奈川県警第二交通機動隊、坂元昭子巡査」
ミラーにちらりと目線を合わせつつ、後ろの選手との距離を確認。箱根の山を低速でのぼる中でも、時折、ミラーを見ながら選手との距離を一定に保ちます。また、飛び出しそうな観客もしっかり手で静止します。
そして、3時間以上にわたる先導を無事に終えました。坂元さんは「正直なところ、ほっとしました。何事もなくここに着けたことが本当に良かったと思います」と安堵(あんど)の表情を浮かべました。